それいけ!クダンちゃん

月芝

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037 ヒマワリの鉢植え

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 季節は梅雨のさなか。
 クダンちゃんがつばくろ高校に通うようになってから、かれこれ三ヶ月半ほどが過ぎました。
 当初の不安をよそに、クラスにもすっかり馴染み、仲のいいお友だちもできました。
 ときおりたいへんなこともありますが、おおむね問題なし。
 毎日、学業に部活動にと、はりきっています。

 そうそう部活といえば、いまの時期は園芸部で育てている紫陽花がとっても元気です。
 紫陽花は土壌のpHによって花の色を変えます。
 酸性ならば青系が強くなり、アルカリ性ならば赤系が濃くなる。

 だったら土に与える肥料を調整すれば、好きな色を咲かせられるのでは?

 と考えた、そこのアナタ。
 甘いです。むぎチョコばりに甘々です。
 たしかに肥料で調整は可能ですが、イメージ通りの色に仕上げるのはとても難易度が高いのです。
 なぜなら雨が降り続けば土壌のpHがたちまち変化してしまうから。
 地植えの紫陽花の色を調整するのは特に難しいとされています。
 では屋内や鉢植えならば簡単なのかとえいば、さにあらず。
 ほんの少しの気温や水やりの量が上下するだけでも、土の成分は変化するもので、完璧にコントロールするのは、ほぼ不可能とされていますもので。
 加えて紫陽花の種類によっては、発色具合も異なってきます。

 調整するタイミングは4~5月がベスト。
 青系にしたいのならば、硫酸アルミニウムを与える。千倍ほどに薄めたものを、二十日おきに水の代わりに与えます。
 赤系にしたいのならば、苦土石灰などを用意し、紫陽花の株元にすき込みます。

 あとは管理する場所にもこだわりたいところ。
 紫陽花の葉は直射日光にあてすぎると、日焼けしてしまうので注意が必要です。
 鉢植えの場合はこまめに配置換えをしてあげましょう。
 屋外の花壇とかならば、遮光ネットやよしずなどで日除けを作ってあげるといいかも。

 ……とまぁ、けっこう手間がかかるのですが、その分、狙い通りの色が出たときの喜びはまた格別にて。
 そんな紫陽花ですが、かつては『美しい花には毒がある』のひとつに数えられていたことをご存知でしょうか。

 アジサイ、トリカブト、ジギタリス、スイセン、すずらん、福寿草、クリスマスローズ、シクラメン、アネモネ、レンゲツツジ、ハナミヅキ、フジ、アサガオ、ヨウシュヤマゴボウ、キョウチクトウ、ギンナン、トマト、モロヘイヤ、インゲンマメ……

 おや? おもいつくままに、つらつら指折数えてみましたら、両手では足りなくなってしまいました。
 意外と身近に溢れている毒々植物たち。
 とはいえ、これもまた立派な生存戦略なので。
 もっとも現在では品種改良が進んで、すっかり毒っ気は抜けてしまっていますけどね。

 園芸部の紫陽花は繚乱の盛り。
 ですが、それとは裏腹に元気がないのが、部で飼育しているヒマワリの鉢植えです。連日の雨にちょっとげんなりしている様子。
 無理もありません。もともとヒマワリは夏の花なので、長雨はあまり得意ではないのですから。
 ちなみにこのヒマワリの鉢植え、もとはバイオ生物部がこっそり園芸部の温室に混ぜて居候させていたモノです。

 そう。クダンちゃんたちが部活見学へとやってきた時に、部員らと派手に追いかけっこを演じていたあの子です。
 鉢からはみ出した根や、枝葉を使ってはまるで人間みたいに、すたこら動き回るヒマワリ。
 クダンちゃんらも手伝って捕縛したのですが、バイオ生物部に引き取りを拒否されてしまいました。
 ばかりか「引っこ抜くなり、花をむしるなり、そちらの好きにしてもらってかまわない」とまで。

 ぷるぷる怯えるヒマワリの鉢植え。
 縮こまり小刻みに震えるその姿は、見る者にとてつもない罪悪感を抱かせます。
 ましてや植物をこよなく愛する園芸部の者ならばなおのこと。
 それを見越してのバイオ生物部のやり口に、大谷部長はこめかみに青筋を浮かべながらも「はぁ」と嘆息にて「しょうがないわね。うちで飼いましょう」
 かくしてヒマワリの鉢植えは部の一員となり、いまではマスコットキャラクター扱いです。
 部員たちのあとをちょこまか付いて回る姿は、けっこう可愛いかも。


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