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052 二正面作戦
しおりを挟む落陽水晶体を破壊して女王を倒す。
それしか残土穢たちを止める手立てはない。
この情報をコウケイ国軍の伝令より聞いたリワルド王は、ただちに戦線を建て直し残存兵力を結集した。
あえてひと塊となり派手に動くことで、敵の注意を自分たちに引きつける。
命運を託された飛梅さんを援護するために。
☆
城塞都市の東側にある丘の上に新たな陣地を構築し、本隊が徹底抗戦の構えをとった。
するとぞろりと大地が動くようにして、一斉に残土穢たちが陣地目がけて殺到した。
先には塹壕の罠により分断され苦戦をしいられていた討伐隊だが、今度はその塹壕を堀に見立てて防衛戦を展開し、迎撃態勢を整える。
地魔法により即席の防壁を整え、魔法および魔銃の一斉掃射により敵勢を薙ぎ払う。
仲間たちの屍を越えてやってきた連中を迎え討つのは、ゴーレムと地竜たち。手にした鉄製の棍棒をぶん回し、強靭かつ頑強な尻尾での重たいひと撫でにて、まとめて粉砕する。
それすらも掻い潜った敵は、すかさず兵士らが取り囲み、すみやかに狩る。
騎馬や騎竜たちの部隊は状況に応じ遊軍として動き、激戦を支える。
ジャニス率いるコウケイ国軍も前線に立ち、存分に敵を蹴散らす。
エレン姫は友軍らの中でも特に魔法の扱いに長けた者らを集めては、集団による大規模魔法を行使すべく準備に入っている。
岡本英二、浩然、ヴィクターら戦える星の勇者たちは、各々の星のチカラを使って味方を鼓舞しつつ、みずからも武器を手に果敢に敵へと立ち向かう。
ろくに戦えない黒岩保と枝垂は戦いの邪魔にならないように裏方に徹し、回復ポーション片手に怪我人の手当てなどに奔走していた。
これまではバラバラに戦っていた五国の部隊が連携し一丸となることで、格段に厚みを増した陣営は、大量に押し寄せる敵勢にもびくともせず。
激闘続く一方で、マヌカの闇魔法の転移によりひそかに城塞都市の西側へと移動していたのは飛梅さんである。
専用装備で身を包み、事前に枝垂にたっぷり抱き着いて燃料チャージも完了しており、準備万端整っている。
あとは合図を待って飛び出し、ひと息に空を駆け、おそらくは本陣の方にばかり気を取られてよそ見をしているであろう女王に一撃を見舞い、角のごとく生えている落陽水晶体をへし折るのみ。
ついに合図がかかった。
東側の戦場にてひときわ大きな爆発が起き、多数の残土穢らを巻き込み、地面が深く抉れて巨大なクレーターが出現する。エレン姫主導による大規模魔法だ。
そんなものが立て続けに三つも起きた!
ひとつでもコントロールが難しい大規模魔法を、連続で放てたのはエレン姫の精密な魔力制御があったればこそ。
これにより大地が震えた。暴風が吹き荒れ、大量の粉塵がもうもうと舞い上がり、城塞都市一帯の上空が覆われて、世界に薄闇の帳(とばり)が下りる。
「ご武運を」
とマヌカより送り出されて、このタイミングで飛梅さんが空へといっきに駆けあがった。
☆
残土穢により埋め尽くされた大地。
それらを眼下に望みながら、飛梅さんはひたすら空をシュタタタと駆ける。
一路向かうのは錆色の塔と見紛う超大な女王の頭頂部である。
遮るものとてない空の上のこと。
道行きは順調にて、はや半分ほども進んだであろうか。
突如として、飛梅さんが進路を曲げた。
原因は前方に漂う赤い霞の奥からあらわれた敵影のせい。
ブブブと羽音を鳴らし近づいてくるのは、飛行タイプの残土穢である。
地上を這いつくばっている連中よりも、やや小ぶりにて形状はスズメバチに似ている。
さながら女王の御前を守る親衛隊といったところか。それらが大挙して向かってきた。
まさかの迎撃に、飛梅さんは進路変更を余儀なくされる。
だが羽根を持つ敵の方が動きが速い! たちまち追いつかれて囲まれてしまった。
カチカチ口元の牙を打ち鳴らし、尻から生やしたランスのような針にて串刺しにせんとする多勢を前にして、飛梅さんも拳を握った。
不測の事態により、ここに天と地、二正面作戦が勃発する。
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