星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

文字の大きさ
144 / 242

144 宝物庫

しおりを挟む
 
 帝国が秘匿し続けてきた種を開花させ、見事に聖梅樹を復活させた。
 でも、もうひとつの黒い石碑の方は枝垂の管轄外である。
 なにせ星クズの勇者のチカラは、梅に限定されたものゆえに。
 というわけで、お役御免にてようやく帰国の途につけるかとおもいきや、さにあらず。
 現在、枝垂たちは帝国の宮殿内の宝物庫にいる。

 爆死したカイトリー枢機卿、彼がつけていた碧い数珠の問題があったからだ。
 あれは彼が枢機卿に昇進したさいに、教皇から授けられた品である。
 枢機卿のポストは八つしかない。限られた席についたがゆえに、自分は選ばれた者と勘違いしていたのか、カイトリーはことあるごとにアレを自慢しては周囲に吹聴していたので、そのことは周知の事実であった。

 鉱人に関することを、重大な懸念としてエレン姫はアリエノールに伝えたところ、話はすぐに彼女の母である女帝スフォルツアのところにあげられた。
 ことはラグール聖皇国絡みにて、アリエノールが所属する連合軍の監査部では、いささか手に余ると判断したからだ。

 負けん気と自立心が強く、王族であることを鼻にかけることもなく、めったに母を頼ることのない娘からの要請。めったにないからこそ、けっして対応をおろそかにしてはならない、急を要する。
 そう判断し女帝はすぐに動いた。
 枝垂たちコウケイ国一行の身柄の確保のみならず、それと平行してカイトリー枢機卿の事故調査、現場検証を再度徹底して行うようにとの通達を関係各所に出す。
 特に例の数珠に関しては、入念に調べるようにと申し送り付にて。

 世界を動かす女帝によるツルの一声。
 さすがの効き目にて、枝垂が聖梅樹を復活させたあとすぐに、報告があがってきた。
 が、その内容は『碧い数珠に関しては、ひと欠片すらも残っておらず、すべてが消滅していた』というもの。
 しかし、それはありえない。
 激しい爆発に巻き込まれて粉々に砕けたところで、そうはならない。
 公用車の車内が一時的に超高温となり、煌々と煮えたぎる溶鉱炉の中のようになったとしても、それはそれでなんらかの痕跡が残るもの。
 だが、それすらも見当たらない。
 不自然であった。
 そしてその不自然さによって、鉱人関与説の疑いがさらに濃厚となる。
 でも、こうなると新たな憂慮がふたつばかり生じる。

 ひとつは、カイトリー枢機卿が身につけていた碧い数珠が鉱人絡みの品だとした場合、カイトリーの品だけがそうなのか、それとも残りの枢機卿らの装飾品もそうなのか、ということ。
 前者であれば、「運が悪かったね、ご愁傷さま」で済む。
 でも後者であったならば、最悪、国ごと取り込まれている可能性が浮上してくる。
 相手は中央五ヶ国のうちのひとつにて、ギガラニカ世界の信仰を司る宗教国家だ。中枢に向かうほどに妄信かつ狂信的な人材が増えていくというのが、やっかいなところ。
 昔から外部からの干渉を極度に嫌がる傾向があり、理性や利よりも信仰を優先する。
 そのくせ教義を否定されたら、とたんに感情的になるからめんどうくさい。
 お布施という名の確立された集金システムにて、資金も潤沢だから始末が悪い。
 そこがギガラニカ世界に復讐を目論む鉱人らの、強い影響下にあるとしたら、これはとても怖いことだ。

 いまひとつは、碧い数珠に関して――
 持ち主のカイトリーはもとより、これに携わったであろう商人や職人、鑑定師はもとより、歴戦の星の勇者たちや、各国の要人らの誰一人として、違和感を覚えなかったということ。
 パーティ会場にて見かけたエレン姫やジャニスらも、「なんか趣味悪い。ぜんぜん似合ってないし」「ごつごつして動くのに邪魔そうだな」ぐらいにしか思わなかったというし。
 樹人の系列である飛梅さんや、フセも反応せず。
 ただ枝垂のみが、なんとな~く厭な気分になった。
 それすなわち、ぱっと見には誰にも普通の宝石類と見分けがつかないということ。
 そのくせ身につけている者に悪い影響を及ぼす。
 これまた、とても怖いことであろう。

  ☆

「どれでも好きに触って診てもらってかまわない。少しで違和感を覚えるものがあったら、係の者に言ってくれ。すぐに隔離させるので」

 帝国は歴史ある超大国であるがゆえに、所有する宝飾品もごまんとある。
 日常的に使用しているモノから、特別な儀礼の時にだけ身につけるモノ、保管して飾ってあるだけのシロモノまで。
 鉱人の魔の手がラグール聖皇国の奥にまで及んでいるとしたら、どうしてムクラン帝国で同様の事態がないと言い切れようか。
 自分の周辺にそんな得体の知れない宝石なんぞは、とても置いておけない。
 だから女帝は枝垂に宮殿内にある宝飾類の鑑定と選別を依頼した。

「もちろん報酬ははずむぞ。そうだ、帰りの飛空艇も手配してやろう」
「いや、でも、あくまで何の根拠もない憶測みたいなものだし」

 前のめりの女帝、彼女はトラ獣人にて圧が凄くて、枝垂はタジタジとなる。どうにかして回避できないか。
 しかしながら、この申し出にエレン姫が「ぜひに」と喰いついた。

 なにせアリエノールとラジール王太子の婚礼が控えている。
 島内の方で婚儀を行うにしても、嫁が帝国の姫君ともなれば各国が大使を寄越すだろう。コウケイ国と関係が深いところは、さらに上の身分の者が式に顔を出すかもしれない。イーヤル国なんて、それこそリワルド王が三人の奥方たちを引き連れて、みずから乗り込んできそうだし。
 いっそのこと「ご祝儀だけ贈ってくれ!」と声を大にして叫びたいところだが、外交上そうもいかない。

 また、ことによっては諸国漫遊中の次姉が帝国とコウケイ国とが縁戚関係になったお零れに与って、あわよくば良縁にありつけるかもしれない。
 魔法狂いにてクランコスタの大学に入り浸っている長姉、その留学費用もバカにならない。
 エレン姫の趣味である魔導具弄りの出費もある。
 枝垂のおかげで梅ポーションをはじめとして、新たな特産物が次々と開発されているものの、まだ市場には流していないのですぐに利益は出ない。
 今後のことを考えれば、お金はいくらあっても困らない。
 それにまたぞろ市場に出せないようなマズイ品を手に入れたときには、帝国とのパイプを使ってさばければ、なおけっこう!

 ……というわけで、枝垂は大量の宝石や宝飾品らとにらめっこ中であった。

「うぅ、目がチカチカする。宝石なんて大っ嫌いだ。あっ飛梅さん、その首飾り、ちょっと脇へと避けておいて、なんか厭な感じがするから」


しおりを挟む
感想 138

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

処理中です...