星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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162 甲板での戦い

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 暴走するアナゴサーンは飛梅さんをくわえたまま外へと飛び出したばかりか、勢いのままに押して押して押しまくっては、そのまま――

 ズズゥウゥゥゥゥゥゥン!

 ものすごい衝突音が海原に響き渡る。
 アナゴサーンが広い甲板上を船首から船尾部分へといっきに突っ切り、頭から艦橋へと激突したのだ。
 衝撃にてタンカー全体がぐわんと揺れた。
 後続のジャニスや枝垂たちもおもわず走っていた足を止めた。とっさに手近なものに掴まってどうにかしのぐ。

 照りつける太陽や嵐をものともせずに、大切な荷を守りながら外洋を渡る長い航海を耐えるためにと設計された、頑強な鉄鋼の建屋が悲鳴をあげてはへこんだ。ブリッジの強化ガラスにも大小のヒビが走る。
 だが、これで終わりではなかった。
 怒れる海の狂母は止まらない。

 艦橋に突進したアナゴサーンは七両編成の電車ほどもある長尺の身をくねらせては、ビタン! ビタン! 長尾を打ち振っては、なおも押し進もうとする。
 結果、艦橋の前部の壁沿いに上へ上へと這いのぼり、天を目指すことになった。
 もちろん獲物――飛梅さんをしっかりくわえて放さない。
 アナゴサーンが艦橋表面をゴリゴリ擦り、抉りながら昇っていく。
 その姿はさながら昇り竜のごとし。

 枝垂たちが甲板へと到着した時に目撃したのは、アナゴサーンが飛梅さんもろとも艦橋をジャンプ台にして、空高くへと舞い上がったところであった。
 だがしかし、アナゴサーンは海の生き物にて、当然ながら空を飛ぶことなんて出来るわけがない。

「なっ?! 総員、衝撃に備えろーっ!」

 ジャニスが叫び、みなが慌てて伏せた次の瞬間――
 空から降ってきたアナゴサーンが派手に甲板に落下した。
 先ほどとは違う種類の揺れが生じる。
 視界が激しく上下した。
 船体がぎちりと軋み、甲板が大きくたわんで波打つ。
 圧力にてタンカーそのものが海へとグンっと押しつけられて沈んだ。
 が、積み荷がないので船倉は空(から)だ。すぐに浮力が働き、圧力に抗う。
 上からのチカラと下からのチカラがせめぎ合い、船の周囲で波がうねり暴れ、飛沫が盛大にあがった。
 タンカーの近くにいた漁船らは、先に一報を受けていたので、距離をとっていたので被害をまぬがれたものの、船の上はそうはいかない。

 行き場のない質量とチカラが荒れ狂う。

 渦中に巻き込まれた調査隊の者らに出来たことは、ただ必死になった床に這いつくばっては、懸命に飛ばされないようにしがみついていることぐらいであった。

  ☆

「――っう。頭がくらくらする」

 気がついた枝垂は、甲板の床とジャニスに挟まれていた。
 屈強な隊員たちや、海で揉まれた船員とは違って星クズの勇者は虚弱体質である。
 努力のかいあって、いろいろと出来ることは増えているが、枝垂自身はほとんど強化されていない。あいかわらずクラスメイトの女子たちと駆けっこをすれば、ぶっちぎられるし、腕相撲でも連敗記録を更新中だ。
 もしもジャニスが身を呈して庇ってくれなかったら、先の揺れでどうなっていたことか……

「気づいたか枝垂、ケガはないか?」

 とのジャニスに、枝垂は内心ドギマギ。

「は、はい。ちょっと舌を噛んだぐらいです。ありがとう、助かりました」

 う~ん、黒ヒョウ女剣士が漢前すぎる。
 おっと、いかんいかん。いまはそれどころではなかった。
 枝垂は立ち上がり、前方に顔を向けた。

 視線の先には大穴が開いてる。
 アナゴサーンが甲板をぶち抜いて、第二船倉へと落ちたのだ。
 それすなわちみずから穴の底に落ちたようなもの。
 もう海の中へは逃げられない。
 それは枝垂たちにとっては好条件といえよう。
 しかし、位置が微妙だ。どうせ落ちるのならば船首寄りの第三か第四船倉にしてくれたら良かったのに。
 第二では機関部および艦橋に近すぎるし、なにより長いタンカーのほぼ中央に位置している。はずみで船体がふたつにポキリと折れたりしたら、目も当てられない。

 ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 どうすべきかジャニスが対応に苦慮しているうちにも、第二船倉からは激しい戦闘音が聞こえていた。
 アナゴサーンの口から脱した飛梅さんが反撃へと転じ、殺り合っているのだ。
 さすがは飛梅さん、とっても頼もしい。
 でも、そんな彼女の拳こそが、じつは懸念材料なのだ。
 ぶっちゃけ、船底に穴を開けちゃいそう……

 長引かせるのは危険と判断したジャニスはついに決断した。

「風と火属性の者らは穴を囲むように配置につけ。それ以外の者たちは彼らの支援を。複合魔法を仕掛けるぞ。いっきに殲滅する」


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