星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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172 宝探し

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 ヒゲトゥスの腹の中は生温かくて、とくに臭いも気にならず、意外にも快適だ。
 だが暗い。
 オウランや飛梅さんは暗所でも平気みたいだが、枝垂はそうはいかず足下がおぼつかない。
 脛のあたりにまで水があるし、地面がちょっとムニュっとしているし、所々深くなっている箇所もある。ヌメリもあるし、丸呑みされたいろんなモノがそこかしこに散在しているので、つっかけて転びかけたりもする。
 もしも転んだ先に尖った何かがあれば、虚弱体質の枝垂はイチコロだ。
 そのため星クズの勇者はへっぴり腰にてオロオロするはめになる。
 すると、この情けない姿を見かねてオウランが「やれやれ、しょうがないのぉ。だったらこれでどうだ?」とやったのは、自分の身を光らせること。

 金色の瞳の色みが増し、三本の尾がゆらりふわり。
 白い毛に覆われた天狼のカラダが光りだす。
 煌々とした強い明かりではなくて、暗闇の中でもまぶしくない目に優しい月光にも似た柔らかな光り。
 天狼ランタンが周囲をほんのり照らす。
 ばかりか天狼の双眸が爛々としては、自動車のヘッドライトのようにペカーっと前方を照射する。

 おかげで枝垂の視界は確保されたものの、そんなオウランの姿を見て「なんだかロボットっぽい」とおもったのは秘密だ。

 オウランのおかげであらわとなったヒゲトゥスの腹の中――
 これが地球の映画とかならば、お宝を積んだ海賊船のひとつやふたつありそうなのだけれども、あいにくとギガラニカの海には海賊はいれども、そんなに景気のいい奴はいない。
 せいぜい陸地が見える範囲にて沿岸航法をしては、浜に点在する漁村なんぞを襲っては、食い扶持を細々と稼ぐ程度だ。
 どうせ悪党に身をやつすのならば、陸で山賊になったほうがよほど実入りが期待できる。
 ギガラニカの世界では海に来る奴は、陸での競争に負けた連中である。言い方は悪いがド底辺の負け犬どもである。実力は言わずもがなにて、漁師たちの反撃にあって魚のエサにされることも珍しくはない。

 だからヒゲトゥスの腹の中には、その手のお宝は期待できない。
 あるのは捕食された者たちの残骸ばかり。
 だがしかし――

「この骨とか、あっちにある牙とか、いろいろ使い道がありそう。もって帰ったらエレン姫が喜びそう。もしかしたら飛空艇の建造にも使えるかもしれない」

 枝垂はあらかた肉が消化されている、大きな骨格をしげしげ眺める。
 海洋生物は食用に適したものと、そうでないものとがいるが、総じて資源としての価値を持つ。
 肉は食べ、骨や皮からは油がとれる。ヒゲや角、骨などは魔導具造りの素材になる。工芸品にも使用できる。食べれないところも加工次第では優れた肥料になる。海の栄養とミネラルがたっぷり染み込んだカラダは、陸に住む者たちのっては希少かつ貴重なのだ。
 よって枝垂の考えは当たっていた。
 事実、ここにあるだけ全部を持ち帰れば、エレン姫だけでなくロバイス王たちや漁協のみんなも狂喜乱舞することであろう。

「でも、そうなると問題は持ち出す方法なんだよねえ」

 枝垂は腕組みにて考え込む。
 亜空間収納の「梅蔵」を使えば、ある程度は持ち帰れる。
 とはいえ枝垂のこの能力には制約がある。

 ――梅壺に入れたモノしか収納できない。

 現在の梅壺のサイズは特大にて、容量は五十リットルだ。「梅蔵」に収納できる壺の数は百となっている。もはや蔵ではなくて倉庫だ。
 特大の梅壺は大きい。
 が、しょせんは壺である。形状からして粒や液体などをしまうのには適しているが、幅があるモノや長いモノをしまうのには向いていない。
 だからせっかくの立派な骨格標本もバラバラにして、砕く必要がある。

「……ぶっちゃけ、めんどうくさい」

 ついに口から本音が漏れた。
 するとつぶやきを小耳に挟んだオウランが言った。

「だったらワシの亜空間を使うか?」

 伝説の神獣、獣人たちのアイドル、黄金級の禍獣であるオウランは、別空間に広大な秘密の花園をこしらえたり、辺境から中央をひょいと転移したり、空間系の闇魔法を自在に使いこなす。
 だからいったんオウランの庭に回収して、王城に戻ってからあらためて取り出せばいいとのこと。
 だったらいっそのこと、直接、島の王城に転移すれば良さげだが、いきなりそんなことをされたら向こうに迷惑がかかる。

 枝垂はこのありがたい提案を受け入れた。
 かくして回収の目途もついたことだし、いざ、お宝探しを開始する!


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