星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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190 中央の縮図

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 現在、ゲンウッド国内各地では識別名称・鬼胡桃(きぐるみ)と名づけられた赤霧が猛威を奮っており、その対応に追われている。
 辺境の小国にもかかわらずどうにか持ちこたえられているのは、救援要請を受けてすぐさま近隣諸国が軍を派遣したから。
 イーヤル国にて赤霧が発生した時よりも、集まりがずっといい。
 その理由はいくつかある。

 租税回避地化を進めたことにより急成長、国内の牧歌的な風景とは裏腹にこと経済において、ゲンウッドは南部域でも屈指の繁栄を実現させつつある。
 ここにもしものことがあれば大打撃を受ける企業や富裕層が多数いて、それらに尻をせっつかれたがゆえの緊急派遣であった。
 まずはこれが主な理由のひとつ。

 いまひとつの理由は北部域と南部域の抱える事情と中央との関係性だ。
 ぶっっちゃけ北部域は独立独歩の気風が強い。いざともなれば隣国らと協力することはやぶさかではないが、必要以上の干渉を嫌う傾向にある。
 比べて南部域では他国といくつも国境を接している場合がほとんどにて、関係がおそろしく入り組んでいる。つねに包囲される危険があり、腹背の動向に目を光らせておかねばならない。そのため国同士の関係改善や結びつき強化のためにおこなわれた婚姻も多く、血縁親族関係も蜘蛛の巣のごとく複雑化している。
 直接国境を接していない国での変事が、バタフライエフェクトとなって、おもわぬ形で自国に災いとなって降りかかることもある。
 これではちっとも安心できない。
 そこで南部域の国々はより強固な国の傘の下に入ることにより、自国を守ろうとした。
 とどのつまり大国を寄り親とすることで、安寧を得ようとしたのである。
 だがしかし、これもまたあらたな火種を生む。

 とある小国がムクラン帝国の寄り子とになると、べつの小国のところには「うちのグループに入らないかい? 面倒みてやるぜ」とラグール聖皇国が声をかけてきた。
 すると他の中央五ヶ国連中も黙っちゃいない、似たような動きをはじめる。
 大国としては辺境の小国がどうなろうと、さして興味はない。
 が、小国とて国際会合の場では貴重な一票を握っている。塵も積もればなんとやらだ。
 それに大国が辺境にて影響力を強めるのを見過ごすのは、いろんな面で危険でもあった。
 結果、南部域は中央の対立をそのまま持ち込んだ縮図のような、いっそうややこしい土地となる。

 ……以上のような話を、長々と教えてくれたのはエレン姫とジャニスであった。
 国政があるのであまり島から動けない王夫妻に代わって、他国の代表となにかと顔を合わせる機会の多いふたりは、南部域の事情にも精通していた。
 枝垂は「なにやらどっかで聞いたような話だなぁ」と欠伸を噛み殺す。地球の紛争地帯みたいだからだ。大国の思惑に翻弄されるのは、いつも小国にて、巻き込まれる民草こそがいい迷惑であろう。
 なんぞということを考えつつ、枝垂は議場内をちらりしては、「はぁ」と嘆息する。

 ここはゲンウッドの首都にある王城内の議場だ。
 現在行われているのは、対赤霧戦の作戦会議である。
 が、会議はずっと紛糾しており、堂々巡りを続けている。
 原因は主導権争いだ。周辺国から多くの援軍を得られたのはよかったのだけれども、その背後にはいろんな思惑も潜んでおり、そこに国同士のいがみ合いやら、個人的な心情なんぞも絡んでいるから、とてもめんどうくさいことになっている。
 ゆえに知りたくもなかった南部域の情報を、枝垂は延々と聞かされるハメとなってしまった。

 ちなみにコウケイ国一行はいちおうこの会議に参加はしているものの、正式な応援ではないのであくまでオブザーバー役――発言権はちょびっとあるけれども議決権を持たない人のこと、傍観者ともいう――にて、用意された隅っこの席にてちょこんと座っているだけである。
 もっとも意見を求められたとて、困るけれども。
 喧々諤々、いまにも取っ組み合いの喧嘩が始まりそう。とんだ鉄火場にて、あんなところに手を突っ込んで火中のクリなんぞは拾いたくない。

(というか、もうあてがわれた部屋に戻りたい)

 なんぞと枝垂がふたたび欠伸を噛み殺したところで、ふと目に入ったのが上座にいるゼニーベバルトの姿であった。
 麗しき蟲人……疑惑の摂政は荒れる作戦会議の様子を、じっと見ているだけでほとんど口を開いていない。
 こうしている間にも被害は出ているはずなのに、いったい何を考えているのやら……


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