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194 ファクトリー
しおりを挟む誰だ? 今回の赤霧は数は多いけど、対処はそれほど難しくない。星の勇者なしでも余裕余裕~、とか言っていたの。
とんだもない!
やっぱりいたよ、ボスキャラ的な存在が!
いや、より正確には、次々と鬼胡桃を量産している大元が!
各地で繰り広げられている掃討戦、届けられる経過報告はこちらが優勢に推移しており、順当にいけば勝てるだろう。
と、安堵したのも束の間のことである。
斥候部隊から緊急連絡を受け、誰もが意味不明にて目が点になった。
けれども、さらにもたらされる続報により、ようやく倒すべき首魁の全貌を把握する。
鬼胡桃たちを統べる存在……。それは女王や王などではなくて、ひと言でいえばファクトリーである。
ゲンウッド領内の南部の丘陵地帯および、北東部の石渓地帯の二ヶ所にそれは確認された。
自然環境の中に突如として出現するのは、真逆の存在――
一面に広がるのは鬼胡桃の生産工場である。
煙突からは白い煙がモクモク、幾本もの配管が入り組んでおり、タンクがそこかしこに乱立している。ゴォウン、ゴォウン、ガシャン、ガシャン、ウィーンと機械音が鳴り響き、鉄とサビにて埋め尽くされた無骨でスチームパンクな空間。
けれども、夜になるとその表情を一変させる。
全体がライトアップされて、照らし出されるその姿は近未来的で現実離れした、SFの世界に登場するような機械の不夜城と化す。
ファクトリーは休むことなくフル稼働しており、倒された兵力をせっせと補充しては、各地へと送り出している。
どおりで倒しても倒しても、ちっとも鬼胡桃たちが減らないわけである。
だが、みなを驚愕させたのはそれだけではない。
このファクトリー……じつは、基地で言うところの司令部に相当する生産を管理しているとおぼしき建物がどこにも見当たらない。
とどのつまり工場長はいないということ。
かわりに工場内の複数ヶ所にて、落陽水晶体の存在が確認されている。
人や獣に心臓や魔力を司る器官があるように、禍獣には輝石があり、赤霧や星骸にも似たような働きをするものがある。
星骸の場合には星珠(せいじゅ)という七色の珠が、赤霧の場合には落陽水晶体という六角柱の形状をしたものがある。
そしてこの落陽水晶体は、ある程度高位の赤霧の個体のみが持つ。
ファクトリー内に落陽水晶体が分散して配置されていることが示す意味……
それはこのファクトリーそのものが倒すべき赤霧のボスであるということ!
おそらくだが、落陽水晶体のうちの一つを壊したところで、すぐに別の生産ラインが立ちあがり、敵勢の増産を止められないとおもわれる。
モタモタしていたら、修復すらされる可能性が非常に高い。
生半可な火力ではダメだ。やるならばひと息に殲滅する必要がある。
そんな討伐対象が二体もいるというだけでも頭が痛い問題なのに、さらにみんなの気を揉ませているのが「鬼胡桃のもととなる素材がどこから来ているのか?」ということ。
いかに赤霧とて、材料がなければ鬼胡桃を生産できないはず。
なのに延々と生産が続いている。
あまり考えたくないことだが、もしかして地球とギガラニカにて搬入ラインが繋がっており、絶えず産業廃棄物やら汚染物質がこちらに流れてきているのかもしれない。
もしもそうだとすれば、最悪である。
この穴を防ぐ手立ても考えなければならない。
でないと、ゲンウッドがいずれはヒトの住めない中央の荒野のようになってしまう。
近隣諸国にとっても他人事ではない。放置すれば、ゆくゆくは自分たちの方にも被害が波及するのは必定。
対応が遅れるほどに、手がつけられなくなる。
こうなると各国の派遣軍は互いの面子を気にしたり、張り合ったりいがみ合っているどころではない。
ゆえに此度の対赤霧戦線では、各地に分散している敵勢力を駆逐するを作戦の第一フェイズとし、それが完了次第合流してはファクトリーを包囲殲滅するを第二フェイズとすることが急遽決定された。
だがしかし――
第二フェイズは失敗に終わった。
一敗地に塗れ、撤退するを余儀なくされた。
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