星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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206 第三の聖梅樹?

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 第三の聖梅樹の種とおぼしき存在が発見されたのは、ゲンウッドの領内は西南地方にある湖だ。
 静かな湖畔にて、名もなき湖の中央には小島がある。
 景勝地……と呼ぶには、いささか物足りぬ。でもいい所。
 ゆえにこれまではさして注目されることがなかったのだけれども、ここに目をつけたのが誰あろうゼニーゲバルトである。
 やり手の摂政さまいわく。

「さして土地に利用価値がない? だったら付加価値をつけて価値を創造すればいいだけのことじゃない」

 というわけで、ここを金持ち相手のリゾート地に開発してしまおうと計画し、その下準備のために調査をさせていたのだけれども……

 調査も順調に進んでいたある日の夜のことである。
 北の空の彼方から飛来するモノあり!
 キラリと光って、流星のごとく夜空を横切ったかとおもったら、そのまま湖の小島にズドンと落ちた。
 瞬間、もの凄い音がして、湖面も盛大に波立ち、住んでいる魚たちもビックリして、一斉にビチビチ飛び跳ねたという。
 騒ぎは明け方近くまで続いた。

 この異様な光景に、現地に居合わせた者たちはみな戦々恐々となる。
 ビクビクしながら過ごした恐怖の一夜が明け、波もおさまったところで意を決して小舟をだしてみれば、小島にクレーターができており、その底にでっかい種とおぼしき物体がなかば埋まっていたという。

 植物の種とおもわれるが、どうにも得体が知れない。
 うかつに触れるのは危険だと判断した現地の責任者は、とりあえず小島を封鎖し、すぐに都にいる上役に連絡した。
 日頃から報連相を徹底しており、効率を重視しているゲンウッドの役所は、すみやかにこの案件を奏上する。
 その報告を受けたゼニーゲバルトは持ち前の勘の良さと計算高さから、「こいつはなにやらやっかいごとのニオイがぷんぷんしやがるぜ」と判断し、すぐさま寄り親であるムクラン帝国の女帝スフォルツア・ウル・ムクランに「へい、パス!」と丸投げした。

 結果的に、その判断は正しかったのだろう。
 おかげで女帝からの信は厚くなり、中央とのパイプは太くなり、なおかつコウケイ国一行の助力を得られて、対赤霧戦を乗り越えることができたのだから。

  ☆

 飛空艇ヒノハカマはゆっくりと湖に着水した。
 日頃から国内の海や湖で離着陸を繰り返しているので、操舵はお手のものである。
 さっそく下船して、小島へと渡るコウケイ国一行。

 小島内にはこんもりした森がドーナツ型に広がっており、北の空から降ってきたという大きな種は、ちょうどその真ん中に落ちたらしく、被害は最小限で済んだという。
 森を抜けた先に白い屋根が見えた。
 大型のテントが設置されてある。どうやらクレーター全体をこれで覆って、現状保存をしてあるらしい。

 いよいよ第三の聖梅樹の種とご対面にて。枝垂はちょっとドキドキしつつ、エレン姫たちに続いてテントの垂れ幕を潜った。
 が――あれ? すぐに首をひねる。
 理由は、何も感じなかったからだ。
 これまでならば聖梅樹の種を見るなり、同じ空間に立ち入るなりすると、何がしかの違和感を覚えたものである。
 でも、ここにはそれがまったくない。
 ゆえに枝垂ははやくも「あ~、今回はハズレかも」とガッカリする。
 だがしかし、実物を目にしてギョッとなった。

 予想通り、ゲンウッドに飛来した種はハズレであった。
 けれども、枝垂にまったく無関係というわけではなかったからである。
 なぜならこの種の正体は……

「あっちゃあ~、これってばたぶん、イーヤル国で僕がぶっ放したヤツだ」

 イーヤル国での対赤霧戦における最終局面にて。
 スカイツリーほどもある超大な残土穢の女王の頭部にあった、これまた立派な落陽水晶体を撃ち抜いたときに放った特大の梅干しの種。
 あの時、ありったけの星のチカラを注ぎ込み、放った一撃により勝利するも、代償として枝垂の虚弱な肉体は半壊し生死の境を彷徨うことになった。
 まぁ、なんやかやあって無事に復活できたけど……

 とにかくあの時はわちゃわちゃしていた。
 それもあって誰もあの時に放ったの種の行方なんて、ちっとも気にしていなかった。
 撃った当人すらもすっかり忘れていた。
 よもやその種が、北部域を突っ切り、氷絶――正式名称をアイントホルン山脈――をも越えて、南部域はゲンウッドのこの地にまできていただなんて……
 しかも角度的に、きっと天の活動限界領域を通過する軌道を描いて飛来したはず。
 とどのつまり、この種は我らが新造艦である飛空艇ヒノハカマよりも先んじて、あの領域を走破していたということ!
 ばかりか、そのせいもあってあそこにいたUMAが怒っていたのかもしれない。

 もしも種が都などのヒトが住む地域や、重要な施設やインフラ設備などがある場所に落ちていたら、大惨事となっていたかもしれない。
 強いチカラの行使には、相応の結果がともなう。
 いまさらながらに、そのことに気がついた枝垂は「なんてこったい!」と頭を抱えた。


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