とりあえず逃げる、たまに頑張る、そんな少女のファンタジー。

月芝

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11 スキル授与

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 ゴリマッチョなオジ神様に案内された会場内には大勢の神様がいて、何故か「花蓮ちゃん」コールで大歓迎されました。
 何でも皆様、のびたままの女神さまが私に色々と仕掛けている姿を、ずっと観覧していたらしいです。
 だったら誰か止めろよ! と思わなくもありませんが、今更なのでぐっと堪えます。怒りは己を見失い、せっかくの機会をも失う。これもまた母の教えです。

「それでは、ただいまより、花蓮ちゃんのスキル授与式を行う」

 オジ神様の宣言にパチパチと盛大な拍手が起こります。まるでちょっとしたイベント事です。
 すぐ隣にいる侍従の男性に「いつもこんな感じなんですか」と訊ねたら、「まさか」と言われてしまいました。どうやら女神さま相手に、五十連勝という偉業を成し遂げた私に対する敬意らしいです。
 設営された大画面に、私が光る魔法陣から躱し続ける姿が、ダイジェストで上映されています。
 うーん、普通ならば足元に怪しい光の輪が出てきたら、すぐに逃げると思うのですが、もしかして世間一般では逃げないものなのでしょうか?
 勝手に盛り上がる面々をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えていたら、オジ神様から声をかけられました。

「それで花蓮ちゃんは、どんな能力が欲しいんだ? 大抵の奴ならここに居る連中の誰かが叶えられると思うぞ」
「えーと、それじゃあ、転移を下さい」
「すまん。それは無理だ」

 舌の根も乾かぬうちに拒否された。あわよくば元の世界にこっそりと戻ってやろうという、私の目論見は崩れた。どうやら転移ってのは神様の特権みたいなチカラらしい。一般開放するにはヤバ過ぎるんですって。次元やら時間軸やらが絡んでくるらしく、下手にあちこちに跳んで、世界の改変を引き起こしまくったら、まとめてドカンとか……、それを考えると女神さま、とんでもないな。ちょっとでも同情した私が甘かった。しかし駄目なものは仕方がありません。そこで前もって考えていた別の候補を挙げることにしました。

「それでは最強の逃げ足が欲しいです」
「逃げ足? それは回避能力ってことでいいのかな。それなら簡単だ、最高レベルにしておこう。他には何かないか、あと四つはいけるぞ」
「そんなに頂けるんですか? だったら、そうですねぇ……」

 私が望んだのは、速さ、動体視力、危機察知、そして運の四つ。
 速さは逃げに直結する、どれほど早く動けても視力が追い付かないのでは意味がないし、危険を事前に察知できれば、そもそも危ない目に合わなくて済む。あと運は良いに越したことはない。

「また随分と偏ったものを好む。一つぐらい攻撃手段を持ったほうがいいんじゃないのか、必殺の魔眼なんかどうだ? 睨むだけで相手が即死するぞ。魔王もいちころだ」
「そんな物騒なモノはいりません。逃げ足さえあれば大抵のピンチは乗り越えらえる。これはお母さんの教えです。私もそう信じていますので」
「そうか……、母上殿の教えでは横やりを入れるのも野暮というもの。わかった、希望通りにしておこう。あとついでに能力が周囲にバレないように細工もしておく、体も少し丈夫にしておくから、これで心置きなく面倒事から逃げまくるがいい。おっと、それからチートなんだが、それはこれを渡すように頼まれている」
「頼まれている?」
「うむ。ちょっと用事があって立ち会えない者たちがいてな、その二人がコレをと」

 そう言ってオジ神様から付与されたチート能力は「創成魔法」というものでした。
 名前からして凄そうですが、なんてことはありません。出せるのはせいぜい消しゴムとか鉛筆ぐらいです。ノートも出せるが、三冊百円とかで売っている薄いのになる。まぁ、消費魔力は低いみたいだし、出した品を売れば、とりあえず喰いっぱぐれはなさそうなので、ありがたく戴いておくことにしました。

「さて、ではそろそろあちらに送ろう」
「いろいろとお世話になりました」
「なんの。もとはと言えばこちらの監督不行き届き、花蓮ちゃんにはなんの咎もない。だからあちらでも気負うことなく、どうか自由に好きに生きてくれ」

 オジ神様が空中に何かを指で描くと、前方の空間に光る門が出現する、異世界へと続く門だ。
 こうして私は大勢の神々に見送られながら、その門を潜った。



 花蓮が異世界へと旅立った直後、一組の男女がゴリマッチョな偉い人の側に出現する。
 黒髪のポニーテールの女性と、すらりとした立ち姿の優男。

「本当によかったのか? 顔ぐらい見せてもよかったんだぞ。君の残した功績を考えれば……」
「いいえ。顔を見せたら別れが辛くなりますから。あの子が天寿をまっとうしたら会えますし、その時までは女神修行に専念しようかと。どうせなら立派な女神になって、あの子を迎えてやりたいですし」

 少女が消えた門をじっと見つめたままのポニーテールの女性。その双眸には固い決意の火が宿っている。隣に立つ男性がそっと彼女の手を握ると、彼女もまた指を強く絡める。

「あの子なら大丈夫、だって僕と君の子供なんだから」
「ええ、きっとそうね」


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