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29 執事の羊
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朝食に温泉卵を出したら、アルティナさんがえらく気にいって、一人でニ十個も平らげてしまいました。ドラゴンはとってもパワフルです。おかげで見ているだけで、こっちはお腹一杯になれました。
午前中は宿でゴロゴロ過ごします。すぐには出発しません。ですがサボっているわけではないようで、「先方との兼ね合いがあるから、時間調整だ」そうです。
ここは彼女の言葉を信じるとしましょう。
お昼は収納鞄に入っていたパンに、焼いた味付け肉を挟んで食べました。
私の持っている鞄が、時間停止機能の付いた鞄だと知って、アルティナさんが驚いていました。買うととんでもなく高いんだそうです。大層、羨ましがられましたが生憎とコレは私専用なのでと謝ると、更に驚かれてしまいました。挙句に、えいっと放り投げたら、あら不思議、勝手に手の中に戻って来るというかくし芸を披露したら、更に更に驚かれてしまいました。
「手元に戻って来るだなんて、伝説級の剣とか槍みたいじゃないか。そういやぁ、魔王様の剣が、たしかそんなのだって聞いたことはあるけど。なんでも意志があるらしくて、自分が認めた主以外が触れると、途端に消し炭に変えられるんだとか」
「それはおっかないです」
「花蓮の鞄もそうなのかな?」
「どうでしょう。さすがにそこまで酷い仕様だとは思えません。王城でお世話になっていたときに、お婆ちゃんメイドが掃除の際に、わりと邪険に扱っているのを見ましたので。触れた程度では大丈夫かと。たぶん鞄に手が入らないとか、開けられないとかだと思いますが、なんなら試してみますか?」
私がそう聞くと、しばらく考え込んだ後に「やっぱり遠慮しておく」とアルティナさんは言った。
温泉街を立ったのは結局、オヤツを摘まんでからでした。オヤツはリースさんが持たせてくれたパウンドケーキです。ドライフルーツたっぷりでとっても美味しかったです。
三時間ほどゆるゆる飛んで、空が茜色に染まる頃に到着したのは、竹っぽい植物に囲まれた閑静な山里でした。こじんまりとした三角屋根のお宅が点在されている中に、一つだけ大きなお屋敷があり、その前へと紅いドラゴンは降りて行きます。
周囲の雰囲気的に、熊猫の獣人さんが姿を現すのかとドキドキしていたら、さにあらず……現れたのは羊っぽい獣人さんたちでした。男女を問わずみなさん、パリッとしたスーツを着用なさっています。
「お待ちしておりました。アルティナさま」
「あぁ、こっちは花蓮、彼女ともども今夜は世話になるよ」
「はっ、誠心誠意、おもてなしさせて頂きます」
代表の方の挨拶に横柄に答える姉御、もしかして姉御って実は偉い人?
まじまじとアルティナさんの顔を眺めていると、勘違いした彼女がこの里の人たちについて説明を始めました。その話によれば、どうやらこちらは幾人もの優れた執事を輩出している名門の一族が住む里らしくて、里の者たちは日夜スーツに身を包んで、厳しい修練を積んでいるんだそうです。人里離れた山奥で執事修行ですか、凄いですね。
でもヒツジなのにシツジ……、ちょっとややこしいです。
午前中は宿でゴロゴロ過ごします。すぐには出発しません。ですがサボっているわけではないようで、「先方との兼ね合いがあるから、時間調整だ」そうです。
ここは彼女の言葉を信じるとしましょう。
お昼は収納鞄に入っていたパンに、焼いた味付け肉を挟んで食べました。
私の持っている鞄が、時間停止機能の付いた鞄だと知って、アルティナさんが驚いていました。買うととんでもなく高いんだそうです。大層、羨ましがられましたが生憎とコレは私専用なのでと謝ると、更に驚かれてしまいました。挙句に、えいっと放り投げたら、あら不思議、勝手に手の中に戻って来るというかくし芸を披露したら、更に更に驚かれてしまいました。
「手元に戻って来るだなんて、伝説級の剣とか槍みたいじゃないか。そういやぁ、魔王様の剣が、たしかそんなのだって聞いたことはあるけど。なんでも意志があるらしくて、自分が認めた主以外が触れると、途端に消し炭に変えられるんだとか」
「それはおっかないです」
「花蓮の鞄もそうなのかな?」
「どうでしょう。さすがにそこまで酷い仕様だとは思えません。王城でお世話になっていたときに、お婆ちゃんメイドが掃除の際に、わりと邪険に扱っているのを見ましたので。触れた程度では大丈夫かと。たぶん鞄に手が入らないとか、開けられないとかだと思いますが、なんなら試してみますか?」
私がそう聞くと、しばらく考え込んだ後に「やっぱり遠慮しておく」とアルティナさんは言った。
温泉街を立ったのは結局、オヤツを摘まんでからでした。オヤツはリースさんが持たせてくれたパウンドケーキです。ドライフルーツたっぷりでとっても美味しかったです。
三時間ほどゆるゆる飛んで、空が茜色に染まる頃に到着したのは、竹っぽい植物に囲まれた閑静な山里でした。こじんまりとした三角屋根のお宅が点在されている中に、一つだけ大きなお屋敷があり、その前へと紅いドラゴンは降りて行きます。
周囲の雰囲気的に、熊猫の獣人さんが姿を現すのかとドキドキしていたら、さにあらず……現れたのは羊っぽい獣人さんたちでした。男女を問わずみなさん、パリッとしたスーツを着用なさっています。
「お待ちしておりました。アルティナさま」
「あぁ、こっちは花蓮、彼女ともども今夜は世話になるよ」
「はっ、誠心誠意、おもてなしさせて頂きます」
代表の方の挨拶に横柄に答える姉御、もしかして姉御って実は偉い人?
まじまじとアルティナさんの顔を眺めていると、勘違いした彼女がこの里の人たちについて説明を始めました。その話によれば、どうやらこちらは幾人もの優れた執事を輩出している名門の一族が住む里らしくて、里の者たちは日夜スーツに身を包んで、厳しい修練を積んでいるんだそうです。人里離れた山奥で執事修行ですか、凄いですね。
でもヒツジなのにシツジ……、ちょっとややこしいです。
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