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35 銀のガラシャ
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夢のタワーマンション暮らしを始めて早や三日が過ぎました。
犬耳青年が言っていたお世話役は来ません。来るのは宅配でお弁当を届けにくる給仕の方だけです。それも毎回、違う方です。どうやら下界はいま、とんでもなく忙しい状況のようで、とても拾ってきた異世界人の小娘に構っている暇はないようですね。
お弁当はとっても美味しいですよ。どれも美味しかったのですが、私は焼肉弁当が特にお気に入りです。薄い一枚肉をタレに漬け込んでから焼き上げたモノを、炒めたお米の上に敷き詰めただけなのですが、一切野菜類が付属していない潔さに感服しました。色どりだとか栄養がどうとかいうお題目は無視して、米と肉のみという構成に作り手の美学を感じました。
私が滞在している部屋には一通りの設備が揃っているので、何の不自由もありません。それどころか最上階丸ごと貸し切り状態なので、併設されてあった図書室やらプールやらフィットネス等の施設も使い放題。おかげ様で規則正しく、喰う寝る遊ぶの生活をしております。
そんな風にご機嫌で過ごしていたときのことです。台所にてパンケーキを焼いてからリビングに戻ると見知らぬ女性がソファーに腰かけていました。銀の長髪をした背の高い凛々しい感じの美人さんです。
「おっ、なんだかいい匂いがすると思ったら、美味そうだねぇ」
口調がどこかアルティナさんに似ています。きっとこの方も姉御な人なのでしょう。
「よろしければ召し上がりますか?」と勧めると、早速、もきゅもきゅとパンケーキを食べ始めました。トッピングはたっぷりの生クリームです。材料が揃っていたので頑張って作りました。おかげで腕がパンパンです。私も彼女の向かい側に座って一緒に頬を膨らませます。二度ほどおかわりをして満足したのか、彼女は礼を述べると、さっさと行ってしまいました。
「いったいどこのどなただったのでしょうか?」
何にしても逆らうという選択肢は私にはありません。だってドラゴンさんとは比べものにならない圧を感じたのですから。かなり巧妙に隠して抑えてくれていたようですが、それでも私の危機察知能力がビリビリと反応していました。ここまでの反応は、こっちの世界にきてから初めてですね。
いやはや、魔族は本当に底が知れませんねぇ。とそんなことを思っていたのですが、よほどパンケーキが気に入ったのか、これ以降、ちょくちょく顔を見せるようになりました。いつもふらりと現れてはふらりと消えてしまいます。
そうそう、お名前は教えてもらいました。ガラシャさんって言うんだそうで、エルフとのことです。
「そういや花蓮はこんな所で何をしているんだい?」
今更な質問をガラシャさんが口にしました。だから今更ながら砦から送られた虜囚の身であると説明すると、怪訝そうな顔をされてしまいました。それもそうでしょうね、だって虜囚は虜囚でも、この待遇はどちらかと言えば囚われのお姫様のような扱いですから。ですが彼女が引っかかったのは、そこではなかったようです。だってガラシャさんはこんな事を言い出したんですもの。
「うん? フリージアからの推薦状? そんなもの私は見てないぞ。どこの野郎だ、お使い程度もロクにこなせない馬鹿は……、ちょっと調べてくるから待ってな」
彼女はさっさと行ってしまいました。いつもどこから出入しているのかと思っていたら、どうやらテラスから直接出入していたようです。塔の上から躊躇うことなく空中に身を躍らせて、遥か下界へと落ちていきました。きっと飛べるのでしょうけれども、見ていてあまり心臓にいいシーンではありません。まだ胸がドキドキしています。
犬耳青年が言っていたお世話役は来ません。来るのは宅配でお弁当を届けにくる給仕の方だけです。それも毎回、違う方です。どうやら下界はいま、とんでもなく忙しい状況のようで、とても拾ってきた異世界人の小娘に構っている暇はないようですね。
お弁当はとっても美味しいですよ。どれも美味しかったのですが、私は焼肉弁当が特にお気に入りです。薄い一枚肉をタレに漬け込んでから焼き上げたモノを、炒めたお米の上に敷き詰めただけなのですが、一切野菜類が付属していない潔さに感服しました。色どりだとか栄養がどうとかいうお題目は無視して、米と肉のみという構成に作り手の美学を感じました。
私が滞在している部屋には一通りの設備が揃っているので、何の不自由もありません。それどころか最上階丸ごと貸し切り状態なので、併設されてあった図書室やらプールやらフィットネス等の施設も使い放題。おかげ様で規則正しく、喰う寝る遊ぶの生活をしております。
そんな風にご機嫌で過ごしていたときのことです。台所にてパンケーキを焼いてからリビングに戻ると見知らぬ女性がソファーに腰かけていました。銀の長髪をした背の高い凛々しい感じの美人さんです。
「おっ、なんだかいい匂いがすると思ったら、美味そうだねぇ」
口調がどこかアルティナさんに似ています。きっとこの方も姉御な人なのでしょう。
「よろしければ召し上がりますか?」と勧めると、早速、もきゅもきゅとパンケーキを食べ始めました。トッピングはたっぷりの生クリームです。材料が揃っていたので頑張って作りました。おかげで腕がパンパンです。私も彼女の向かい側に座って一緒に頬を膨らませます。二度ほどおかわりをして満足したのか、彼女は礼を述べると、さっさと行ってしまいました。
「いったいどこのどなただったのでしょうか?」
何にしても逆らうという選択肢は私にはありません。だってドラゴンさんとは比べものにならない圧を感じたのですから。かなり巧妙に隠して抑えてくれていたようですが、それでも私の危機察知能力がビリビリと反応していました。ここまでの反応は、こっちの世界にきてから初めてですね。
いやはや、魔族は本当に底が知れませんねぇ。とそんなことを思っていたのですが、よほどパンケーキが気に入ったのか、これ以降、ちょくちょく顔を見せるようになりました。いつもふらりと現れてはふらりと消えてしまいます。
そうそう、お名前は教えてもらいました。ガラシャさんって言うんだそうで、エルフとのことです。
「そういや花蓮はこんな所で何をしているんだい?」
今更な質問をガラシャさんが口にしました。だから今更ながら砦から送られた虜囚の身であると説明すると、怪訝そうな顔をされてしまいました。それもそうでしょうね、だって虜囚は虜囚でも、この待遇はどちらかと言えば囚われのお姫様のような扱いですから。ですが彼女が引っかかったのは、そこではなかったようです。だってガラシャさんはこんな事を言い出したんですもの。
「うん? フリージアからの推薦状? そんなもの私は見てないぞ。どこの野郎だ、お使い程度もロクにこなせない馬鹿は……、ちょっと調べてくるから待ってな」
彼女はさっさと行ってしまいました。いつもどこから出入しているのかと思っていたら、どうやらテラスから直接出入していたようです。塔の上から躊躇うことなく空中に身を躍らせて、遥か下界へと落ちていきました。きっと飛べるのでしょうけれども、見ていてあまり心臓にいいシーンではありません。まだ胸がドキドキしています。
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