とりあえず逃げる、たまに頑張る、そんな少女のファンタジー。

月芝

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49 工房長

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 厨房チームと共に魔王城に戻った私はその足で、料理長に連れられて工房へとやって来ました。
 異世界ファンタジー、工房といえば、やはりドワーフの登場でしょう……、そんな風に考えていた時期もありました、が実際は違いました。
 工房に詰めていたのは小鬼さんたちでした、ゴブリンっていう奴ですね。
 ゲームなどでは雑魚キャラ扱いされているそうですが、少なくとも魔族領の方は違いますよ。個の力は確かに弱いですが、集団戦では無類の強さを発揮なさいます。あと各種武器の扱いにも長けているので、とにかく戦闘のバリエーションが豊富、ありとあらゆる局面に対応できる多様性も脅威です。それから弱いといっても魔族準拠なので、人間と比べたら、その辺の騎士なんて圧倒しますのであしからず。

 見慣れぬ機械やら道具やらで、ごちゃごちゃとした工房内に一歩足を踏み入れた途端に、熱烈な歓迎を受けました。みなさま作業を放り出して輪となり、花蓮コールです。壁に私の新聞記事の切り抜きが額に入れて飾ってあり、その前にお花まで供えられていました。
 まるでどこぞの教祖に入れあげる信者みたいです。
 料理長の嘘つき、シラフでも酔っ払っていても同じじゃないですか。

「おら、お前ら、その辺にしておけ。花蓮が困っているぞ、それよりも今日は工房長に用事があってきたんだ」

 興奮冷めやらぬ一同に料理長が仲介に入ってくれて、ようやく本題に入れそうです。
 紹介された工房長は赤いスカーフを腕輪に巻いた方でした。はっきり言って、ゴブリンの皆さんは外見に差異が少ないので、私には見分けがつきません。

「気にするな、オレもわからん」

 ガハハと笑う料理長、どうやら彼らは同種族間でもないと、まずわからないのが普通らしいです、ちょっと安心しました。

「それで花蓮様、何をお造りしましょうか? ドラゴンでも打ち落とせる砲台でも、魔王城の城壁をぶっ飛ばせる破城槌でも、なんでもお申しつけ下さい」

 さらりとトンでもないことを口にする工房長、彼の目に盲目的な信仰の危うさを見ました。
 とりあえずそんな物騒な品はいらないので丁重にお断りをし、イラストつきにて卸し金の説明をすると、五分と待たずに品物が出て来ました。やはり魔族の職人は半端ねぇです。
 まるで下僕のように私に傅く工房長が、「もっともっと」と五月蠅いので、とりあえず圧力鍋の開発を依頼しておきます。さすがに五分十分でどうにかなるモノではないので、これでしばらくは時間が稼げることでしょう。

 卸し金を受け取った私は工房のみなに礼を述べて、今度は厨房へと場所を移します。
 そこで採ってきた山芋っぽい何かをズリズリ。
 どろりとした白い粘着性の物質に、とりあえず適当に味を加えて実食、モチモチとしていて野趣溢れる風味が癖になる、わりといい感じ。

「ほう、これは面白いな。色んなモノに使えそうだ」

 料理長も興味を持ちましたので、とりあえず思いつく限りの山芋の利用法を教えると、早速研究してみると仰いました。クククク、これで近いうちにお好み焼きも食べられそうです。
 少し人格に問題はありそうですが、工房長という知り合いも出来たことですし、何気に収穫の多い一日でした。

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