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012 野盗と死体漁り
しおりを挟むわたしはノットガルドの世界に来てから、すぐに俗世からトンズラをしたので、人間の都にはまだ足を踏み入れてない。
そのことを思い出し、興味本位にて出かけてみることにした。
たまさぶろうに比較的マシな人間らの国の近くまで送ってもらい、そこからはルーシーのみを連れて歩く。
わりと主都に近いはずなのに街道に人影はない。
「そういえばこっちの文明ってば、どんな感じなの?」
道すがらルーシーにたずねる。
「ピンキリですね。人間種でも魔導研究にチカラを入れているところや、勇者たちをうまく活用しているところでは、わりと近代化がすすんでいますので、リンネさまの元の世界に近しい生活環境かと。でもそれ以外の種族となると、それこそ千差万別。身体能力に優れていればエレベーターどころか階段もいりませんし、食べ物がちがえば生活様式もガラリと変わります。なにを基準に優劣や順位をつけるのかで評価がわかれますので、一概には」
結論としては、とにかく雑多のごちゃまぜ状態。
わたしが元いた世界よりもノットガルドはずんと広く、国家も多く、種族も多い。
それだけ文明文化があるということ。
個体性能が高いハイボ・ロードたちならば軍備や武装はあまり必要ないけれども、それ以外の種族ではそうもいかない。
必然的にさかれる国力の割合が増え、これに比例してその分野の発展が目覚ましくなる。とくにいまは戦時下だし、どうしたって軍備拡張が声高に叫ばれがち。
で、その他がおざなり。
世相がくたびれ、荒れて、しわ寄せは民へと押し寄せ、ついには人心も乱れて腐る。
やれやれ、わたしは呆れがちにタメ息をこぼさずにはいられない。
この国の都を目指して歩いていたら、またもや野盗どもにかこまれた。
ここは人間たちの国内ゆえに、当たり前なのかもしれないが、出没する賊も人間。
そして同じ種族だからこそ、うら若き乙女を前にして野郎どもの股間がイキリ立つ。
ノットガルドに来てから出会った人間の男たち、みんながみんなこんな調子につき、健康スキルにて神鋼精神の持ち主であるわたしでなかったら、とっくに男性不信に陥ってるぞ。
ぱっと見、賊の中に上等そうな装備は見当たらない。
わたしは連中に向けて、左右の中指を立ててダブル・ファック・ユー。
とたんに火を噴く中指マシンガン。パラリラパラリラと乾いた連射音が鳴り響く。
目標どもはすぐに沈黙した。
魔法とかある世界なんだから、ちっとは飛び道具に警戒しろよな。
まぁ、こちらを人形連れの女ひとりと侮ってくれているので、不意打ち上等にて処理が楽だけど。
戦闘後はお待ちかね。
ガサゴソ、ルーシーさんといっしょにすっかり手慣れた死体漁り。
だってモノには罪はないもの。
で、使えそうな品だけを、ちゃっちゃと回収。限りある資源、とっても大事。人命はがんばって腰をふれば増やせるけれども、資源はそうはいかないからね。節約節約。
「……にしても、いいかげんに男性どころか人間不信になりそうだよ。あとこっちにきてから、わたし、野盗としか戦ってない」
「しかたありませんよ。あっ! そのボタンは再利用可能ですので回収して下さい。それで強くて賢い種族ほど、いまのリンネさまを見たら回れ右をして逃げだすか、平伏するのがオチです。モンスターだってまず姿をあらわしませんね」
「つまり寄って来るのはバカばかりってことか……、それはそれでつらすぎる。こんな灰色のモテ期はいらない」
あげくの果てに話し相手は、もっぱら青い目をしたお人形さん。
目下のところ当初の予定通りに、ボッチ街道驀進中だよ。
「そいういえば、すっかり忘れてたけど同じ世界からやってきた子たちって、今頃どうしてるのかなぁ」
「あー、おそらくですが、とっくに洗脳済みにて前線送りでしょうね。なにせ記録によるとあそこの国ってば、ゴリゴリの人間種族至上主義だったみたいですから」
自分たちが一番! と考えるのが至上主義。
どこにでも大なり小なりこの手のやつはいるものだけれども、劣等感満載な人間種にはその傾向が強めなのがノットガルド名物。
なんてイヤな名物なのだろう。早々に逃げ出して正解だった。
えっ、同郷のみんなを助けないのかって?
そんなの知らん。
わたしは正義の味方じゃないし、赤の他人のために命を張る気も毛頭ない。
そりゃあ仲のいい子の一人でもいれば話は別だったけれども、ほぼほぼ面識ないからね。
それにここは異世界だ。元の世界の常識や倫理を持ち出したところで、どうしようもあるまい。
どうするかは自分で決めるしかないのだ。
もしくはわたしのように頼れるしもべにおんぶに抱っこ。
まぁ、逃げ出してきたのを見つけたら、手を差し伸べるぐらいはしてあげてもいいかな。
もらうモノをもらってから、再び歩きはじめることしばし。
ついに見えてきました人間たちの都。
高い壁にぐるりとかこまれている。いわゆる城塞都市というやつだな。
はてさて、ここではいったい何が待ち受けていることやら。
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