わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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016 救出

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 リスターナの主都の西の隅っこに位置する大きな屋敷。
 周囲を高いトゲトゲの鉄格子に囲まれており、屈強な兵士の見張りの姿が多数。
 中庭にはオオカミっぽいのが放たれておりウロウロ。
 その向こうに三階建ての白亜の建築物。
 ぱっと見は豪華。いまにも悪役令嬢の高笑いが聞えてきそうな雰囲気。
 が、すべての窓枠に鉄格子がガッチリ標準装備にて、とってもプリズン。
 それもそのはず、ここは貴人用の収容施設。
 悪さをした貴族とか、ハメを外し過ぎた王族とかが放り込まれる場所。
 長期幽閉ののちに、しれっと毒酒というのがお約束の流れらしい。
 そして現在収容されているのは、リスターナの宰相であるダイク・スポートさん。
 出来るおじいちゃんにて良識派のトップであり、バリバリの反戦派。ゆえにカーク王子からうとまれて、こんなところに放り込まれての軟禁状態。
 このままでは国がにっちもさっちもいかないと判断したリリアちゃん。父王はあてにならないし、なんとかおじいちゃんと渡りをつけようと城を抜け出したというわけ。

「ここまでの一連の流れをリリアさんからうかがった限りでは、カズヒコとかいうクソ勇者が主犯なのは間違いないでしょう。と、なると王さまの病気もなにやらキナ臭いですね」
「ってことは、宰相さん同様に軟禁されちゃってる?」
「おそらく。いまのところ国内の反戦派を隔離幽閉しているだけで、首まではちょん切ってないところをみると、バカ王子もまだそこまでは堕ちてないようですが、この調子では時間の問題ですね」
「なるほどなるほど」

 屋敷の正門のまえで、不審な女と青い目をしたお人形が堂々と立ち話。
 当然のごとく門番の衛兵に見咎められて「おいっ、そこのおまえ」と彼が不用意に近寄ってきたところを、わたしがやさしくソフトタッチ。
 ビリリと電流がはしって、手のひら式スタンガン効果発動。衛兵、即悶絶。
 ただし殺してはいない。全身が痺れて気を失っているだけ。
 だって下っ端は上司の命令に従っているだけだしね。それに先の敗戦にて大幅に軍事力が低下しているリスターナにとって、五体満足な若い兵士というのはそれだけで貴重。
 のちのちのことを考えたら無闇に浪費するわけにはいくまい。
 わたしと衛兵たち。
 レベル差がとんでもないので、シュツと近寄って、サッと触れるのなんて朝飯前。若いムチムチの肉体にお触りし放題。さすがにみんな鍛えているだけあって、ケツ筋の締まりが半端ないぜ。
 パンパン叩いて、瞬く間に警備の連中を全員黙らせてから敷地内へ。
 とたんに番犬がわりのオオカミっぽいのが、バウバウと駆け寄ってきたが、「ワンっ!」って吠えてやったら、みんな回れ右して逃げて行った。
 人間よりも獣のほうが物分かりがいいとか、なんだか悲しいね。
 すっかり静かになったところで、チョイチョイと後方に手招き。
 すると向こうの物陰から、リリアちゃんがひょっこりと姿をあらわし、タタタと駆けよって来る。ちょこまか走る姿がすこぶる愛らしい。

「すごいです、リンネお姉さま。こんなにあっさりとやっつけちゃうなんて」

 美少女から向けられる羨望の眼差し。吸い込まれそうな琥珀色の瞳がキラキラでまぶしい。
 これを穢そうとする勇者カズヒコよ。
 いま、この瞬間におまえの地獄行きは確定した。覚悟するがよい。

「ほら、リンネさま。あんまりのんびりしていたら、外部に屋敷の異変を気づかれてしまいますから。とっとと宰相さんを連れ出してしまいましょう」

 リリアちゃんに褒められて、ちょっと鼻の下をのばしてデレっとしていたら、ルーシーさんにせかされた。
 ひょっとして、これは焼きもちの類であろうか? とりあえずフォローのつもりで人形の頭をわしゃわしゃしたら、ペシッとハタかれた。
 ふむ、どうやらちがったらしい。

 建物内部には警備らしい警備はほとんどおらず、使用人の方々は、むしろ救出にあらわれたわたしやリリアちゃんを大歓迎。このことからもわかる宰相さんの人望の厚さよ。
 建物三階を丸々使って幽閉されていた宰相ダイク・スポート。
 白いあごひげがフサフサの好々爺。なのに天辺はざんねんな不毛地帯。苦労すると頭皮にくるとの噂はどうやらほんとうのようだな。わたしも気をつけないと。いや、健康スキルがあるからだいじょうぶか。

「ダイクさま」
「おお、リリア姫。よくぞご無事で」

 姫と宰相の感動の再会にて、ヒシと抱き合う二人。
 まるでほんとうの祖父と孫娘のような彼らの姿に、ぐすんと涙ぐむわたし。
 が、せっかくの感動に水を差すお邪魔虫が登場。

「リンネさま、門のところに先日の襲撃者同様のゴロツキ風の輩どもの姿が、十匹ばかり」
「ちっ、せっかくのいいシーンが台無しだよ。で、連中の装備は?」
「えーと、どれどれ。あー、かなりしょぼいですね。野盗以下です。だから気にず殺っちゃってください」

 窓から外の様子を眺めていたルーシーの報告を受けて、わたしは窓辺に立つとガラスをガシャンとヒジで叩き割る。
 そして左腕をにょきっと鉄格子の外へ突き出す。
 パカンと手首がエビ反りになって、腕の中からズドンと発射されたのはロケットランチャー。
 一撃粉砕、ドカンとファイヤー!
 木っ端みじんの爆風にて屋敷中の窓がビリビリ震え、建物もちょっと揺れた。
 そして門のところには大きなクレーターが出現。
 あちこちに飛び散った肉片は、きっとお庭にいたワンちゃんたちが美味しく処理してくれるだろう。

「さてと、じゃあ次行ってみよう」

 呆気にとられるリリアちゃんとダイクさんを促し、屋敷をあとにするわたしたち。
 次は宰相さんと同じように別の場所にて隔離幽閉されている、将軍さんを助けにいくのだ。


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