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053 ギガン島大決戦
しおりを挟むわたしが異世界渡りのノラ勇者だとわかると、カネコのルナティは「おねがいにゃ、たすけてにゃ」とすがってきた。
どうしたものかとめんどうくさがっていると、ルーシーが「三ヶ月も経ってるんですから、いまごろお仲間はとっくに全滅してますよ」と、まっこと言いにくいことをズバっと言った。青い目のお人形さんは容赦がない。
なにせトリプル災厄揃いぶみにつき、それもそうか。
しかしこの発言を受けてルナティ、号泣。
すっかりポンポコ状態の腹を丸出しにして仰向けにひっくり返り、盛大に「そんなのウソにゃん。イヤにゃ、吾輩は信じないにゃ」と駄々っ子と化す。
ぱっと見にはネコがじゃれてるみたいに見えて、ちょっとかわいい。
でも、これはノットガルドにて認められているれっきとした住人。そしてわりといい歳をした男。
種族のピンチを救うために外の世界へと送り出された者だと知ったいまでは、むじゃきにかわいいとはとても思えない。
むしろあざとさすら感じて、ちょっとイラつく。あとことあるごとに語尾に「にゃ」がつくのも。
とはいえ、現状、そんなヤバイ災厄級のモンスターたちをどうこう出来そうなのは、わたしたちぐらいか……。
放置していて、忘れた頃にやってこられても迷惑千万。留守中にお邪魔とかされたら目も当てられない。
せっかくチクチク育てているリスターナが蹂躙されたら、わたしの中の破壊衝動が解き放たれるね。そうなればノットガルドはきっと死の星になるよ。そして宇宙戦艦「たまさぶろう」はノアの箱舟としてがんばるのだ。
っと妄想はこのぐらいにして。
しゃあない、とりあえず行くだけ行ってみるか。
垂直上昇にていっきに大気圏外まで離脱。
その後、軌道を微調整して、ノットガルドの重力を利用し、大気圏に再突入。
やってることは、ほぼほぼ大陸弾道ミサイル。
そんな無茶な飛行を難なくこなす宇宙戦艦「たまさぶろう」ってば、超優秀。いい子、いい子。
こんな具合にて、まるでルナティの三ヶ月にも渡る艱難辛苦の旅をあざ笑うかのように、ものの十五分たらずで、やってきましたギガン島。
「吾輩の苦労はなんだったんにゃ? あんな目やこんな目にあった、あの冒険の日々に意味はあったのかにゃ?」
ルナティの嘆きは聞こえない。きっと気のせい。
上空から島をみると、なんだか想像していた以上にひどいあり様。
三分の一がマグマの海。その中をキシャーと吠えながら気持ち良さげに、泳いでいるのは首が二十本もあるキングヒュドラ。
三分の一が草木もない荒地。中央部分にて、まるで某有名彫刻作品のような格好にて、考えるポーズを決め込んでいるのは、いにしえの巨人シロガネ。
三分の一がズタボロにされた瓦礫の山。それらを更に細分化しようと無数の目玉から怪光線を乱射して、ミラーボール状態でフィーバーしているのは黒い球体のドドメッキ。
総面積二万キロ平方ほどもあるギガン島に残る緑はごくわずか。
「これはとっくに全滅してるね」わたしは率直な感想を口にした。
「そうですね。災厄たちも、なんだかんだで三すくみで落ち着いているみたいですし、このまま帰りましょう」ルーシーも同意。
が、ここでまたしてもルナティが泣いてゴネだす。
「イヤにゃん、イヤにゃん、みんなきっと無事にゃ。だから助けるにゃ」
「ええぃ、艦橋内で暴れるな。抜け毛が舞ってうっとうしいから。わかったわかった、助ければいいんだろう。よし、それじゃあ富士丸くんに……」
と言おうとしたところで、たまさぶろうが珍しく「自分がやる」と名乗りをあげてきた。
なになに、ここのところ移動ばっかりで見せ場がなかったから、一発ビシっと決めたい、だと。
ふむふむ、そういうことならば任せてもいいかな。
だがここで富士丸も「自分もやる」と名乗り出る。
おまえばかりに良い格好はさせぬと張り合うしもべたち。
どちらも御主人さまにいいところを見せて、褒めてもらいたいとか、なんてかわいいボクちゃんたちなんでしょう。
善きかな、善きかな。
許す。存分にやったらいいよ。
上空からもの凄いスピードで降下した宇宙戦艦「たまさぶろう」が、勢いのままにバクンと口にくわえたのはシロガネ。
お忘れかもしれないが、たまさぶろうのベースはサメのぬいぐるみ。だから凶悪な口が標準装備にて、一気にくわえてそのまま大空どころか大気圏を突き抜けて宙へ。
ガッチリとサメにくわえられた、いにしえの巨人。
抵抗する間もなく、そのまま惑星外へと身柄を持っていかれる。
宇宙という世界は、それはもう過酷な場所。
微小重力にて天地はまるで定まらず、高真空にて地表のようにはとてもいられない。マイナス二百七十オーバーにて魂さえも凍える絶対零度。かとおもえば、直射日光にて一転して灼熱地獄になったりと、とにかくたいへんなところ。
そんな未知の場所にいきなり放り出されたシロガネ。
ジタバタあがいているところに、巨大ジョーズの尾っぽの一撃を貰って、粉砕。
夜空のお星さまになりました。
いにしえの巨人が巨大ジョーズに拉致されたのと引き換えに、ギガン島へと降り立ったのは富士丸。
「ウンガー」と叫ぶなり、猛烈な速度で大地をガシャコンと疾走。やぼったい見た目に反してスプリンターのごとき勇姿。出撃前にゼンマイをたっぷり巻いてもらったので動きがいつもよりもはげしい。
怪光線の嵐をものともせずに、ドドメッキへと接近すると、これをむんずと掴みとるなり剛腕にまかせての大遠投。
その飛んでいく先には、火の海を悠然と泳ぐキングヒュドラの姿が。
見事なコントロールにて直撃。盛大な火柱があがる。
焔の災厄と漆黒の地獄が揃いぶみとなったところに、飛び蹴りで乱入する富士丸。
ここに三巨頭によるバトルロイヤルが開幕。
ホームグラウンドゆえにキングヒュドラがやや有利かとおもわれたが、最初の衝突の際に首のいくつかがヘンな方向に曲がって機能せず、それらが足枷となって残りの動きもいまいち。
ドドメッキにいたっては、いきなり火の海に放り込まれて、どうやら目に染みたらしく、体全体にある無数の目の大半がまともに開けられない状況にて、自慢の怪光線もろくに放てやしない。
対して一人元気なのが富士丸。
ここぞとばかりに殴る蹴るの連打、連打、連打。
そして火の海の中でバシャバシャと三体が暴れ狂っているので、マグマが津波となって周囲をドンブラコと席巻。
星砕きの拳が容赦なくふるわれるので、キングヒュドラとドドメッキだけじゃなく、大地までもが悲鳴をあげる。
その結果、ギガン島全体がまるで巨大地震におそわれたかのような状況にて、それはもう見るも無残な阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されることに。
これらの光景を宇宙戦艦「たまさぶろう」の艦橋のモニターで眺めるわたしたち。
「だから言わんこっちゃんない」ルーシーさんが肩をすくめる。どうやら彼女はうすうすこんなことになるんじゃなかろうかと予想していたようだ。だったら言えよ。
そしてかわいそうに、ルナティはシッポをへにょんとさせて呆然自失。
救うハズの島が、御覧のあり様にて、ますます仲間たちの生存率がダダ下がりなもんで、すっかりしょげてしまっている。
勝敗はそれからすぐに決した。
富士丸の必殺ロケットパンチが炸裂!
女神さまが封じた伝説のモンスター二頭をまとめて貫通して、終局となる。
こうして世界は復活した災厄から救われた。
そしてひさしぶりにわたしの脳裏に鳴り響くは、レベルアップのキンコン。
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