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058 予習
しおりを挟むリスターナの国内もようやく安定してきたところで、ずっと休校していた学園が再開されることになり、リリアちゃんも復学することになった。
貴人向けのキラキラした乙女ゲームに登場するような学校らしいので、そのうち見学に行ってみるつもり。
リリアちゃんはしばらくは遅れていた学業に専念するハメになるので、その隙をついてわたしは遠出をすることにした。
で、向かった先は魔王軍と連合軍がバチバチやりあっている最前線方面。
いや、べつに参戦するつもりはないよ。とくに興味もないし。
ただ、ちょっと魔族というのをじかに拝んでおこうかとおもっただけ。
富士丸くんの録画映像でチラっと見ただけだし、みんなゴツイ鎧とかで武装をしていたせいか、いまいちよく容姿がわからなかったんだよね。
よく見えるようになっていたときには、ほぼほぼ原型を留めていなかったし。
いつものように宇宙戦艦「たまさぶろう」の艦橋にある艦長席にてふんぞりかえり、最寄りの場所まで運んでもらう。
到着までの短い間に、ルーシー先生を相手にちょいと予習としゃれこむ。
「そもそもなんで魔族とケンカしてるの?」
「原因は土地ですね」
なんでも魔王の居城があった土地一帯が、聖クロア教会にとっても聖地のような場所らしい。
かつて最古の勇者召喚がなされたのが、そこなのだとか。
あくまで伝承につき、真実を示す証拠はない。
が、女神がともに降臨してうんぬんかんぬんにて、とにかく信仰上では重要な場所。
かといっていきなり「出ていけ」「明け渡せ」なんて無法を教会側はいわない。
そもそも聖クロア教会に、そんな傍若無人な教えはない。だから当初はふつうにお願いして聖地巡礼させてもらっていた。
つまりもとは仲がよかったわけだ。
魔族側とてある種の観光資源とみなし、礼儀正しい来客を営業スマイルでもてなしていた。
その雲行きがおかしくなりだしたのは、とある帝国の台頭。
帝国は多民族国家ゆえに、それをまとめあげるために国策として聖クロア教会の教えを主軸に置き、これを積極的に広めて人心の掌握に努めたまではよかった。
問題はそれが行き過ぎちゃったこと。
なんでもそうだけれども、阿呆みたいにのめり込むヤツがいる。信仰にのめり込み過ぎ狂信化した輩が、次第に魔族の支配する土地にちょっかいを出しはじめた。
「聖地奪還!」「これは聖戦だ!」とかほざきながら。
当然、やられたら魔族側も黙ってはいられない。暴徒にはそれなりに武でもって対処する。
するとこれがチリチリ積もって山となり、やがて互いに国を巻き込んでの騒動に発展。ついには戦争状態に突入と。
かくして第一次聖魔戦線が幕を開ける。
そこに教会関係者やら、周辺国やら、商人やらと、いろんな思惑がからんでからんでからみまくって、気づけば泥沼の三年もの歳月が流れて、しこたま屍を量産のあげくに、双方ともにあまりの損耗率の高さゆえにしぶしぶ停戦。
でもこれはあくまで停戦につき終戦ではない。
以降、不定期にくりかえされる不毛な紛争。
ただいま第七十九次聖魔戦線の真っ最中につき、その余波で世界大戦が勃発中。
「すごいな、そこまでいくと百の大台を目指して欲しいところだよ」
「大台にのるでしょう、まちがいなく」
ほんの小粋なブラックジョークのつもりが、あっさりルーシーに肯定されてしまったよ。
ノットガルドの未来は真っ暗だ。
だが世界の命運なんぞ、小娘一人が悩んだところでどうにもならぬ。考えるのやめた。そしてわからないことをグジグジ考えているふりをしたところで、しようがないので、スルっと話題を変える。
「ところで魔族ってどんな人たち?」
「そうですねえ……、リンネさまのもとの世界の伝承にある鬼がいちばん近いでしょうか」
鬼か、鬼といえば桃太郎にボコられたり、一寸法師にボコられたり、坂田金時にボコられたりと散々なエピソードが満載。
泣いた赤鬼……は児童文学か。アレは名作。こっちで広めたら、たちまち魔族のイメージがよくなるかもしれない。
ちなみにノットガルドの鬼さんこと魔族たち。
特徴的なのはその立派な体躯と頭の角。一本だったり三本だったり、長かったり短かったりと、数や形などじつに多彩なんだそう。あと魔力にも優れており、ハイボ・ロードたちには及ばないものの、まぁ、準優良種と言えなくもない。
ルーシー先生の授業はなおも続く。
「魔族は主に十二の氏族からなる連合体にて、魔王はその中から自他薦された候補者より代々選ばれての襲名制をとっています」
「へー、世襲じゃないんだ」
「はい、ノットガルドでは珍しい体制ですね。なんでも時代に即した支配者を掲げることをモットーとしているようで。だからいちがいに魔王といっても過去にはいろんなタイプがいたそうですよ」
内政がガタガタなときには、知性を。
外敵の脅威があるときには、武力を。
そうやって時々に合わせた指導者を仰ぐことで、世界を相手にしても生き残ってきた魔族。勇者を多数有する連合軍を相手にしても一歩も引かないとか、いやはや、たいしたもんだね。
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