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069 法廷人形劇
しおりを挟む一連の試練の塔騒動のために、ベリドート王城内に設けられた特別法廷の場。
被告人、タワーマスターのノラ勇者リュウジ。
弁護人、アマノリンネおよび助手のルーシー。
検察、国の役人たち。
裁判官、ベリドートの王さまその他のえらい人たち。
厳かな雰囲気の中で、王さまの開会宣言により幕を開けた法廷劇。
検察役の係の者より、ずらずらと犯した罪がならんだ起訴状が読み上げられていく。
「……以上により国内に混乱と多大な被害をもたらした被告人には、厳粛なる処罰が妥当かと」
罪状の中には塔が倒壊したことによる、被害もばっちり計上されてあった。
ちなみに倒壊で死者は出ていない。爆風やら飛んだ瓦礫にて負傷者が数えきれないほど出ただけですんだのは、まさに奇跡。
とはいえ、千にも及ぶ塔を形成していた質量が国内を横断するかのようにして、バタンといったものだから、川やため池の堤はぶっ壊すわ、畑や牧場はぶっ壊すわ、貴重な薬草がとれる森をぶっ壊すわ、街道をぶっ壊すわ、街は無事だったけどとなりの墓地をぶっ壊すわ。被害金額がひど過ぎてちょっとわかんない状態。
広域無差別テロ扱いされても文句のいえない事件にて、問答無用で死刑にされてもおかしくない。
けれどもベリドートは良識の国。
だからいかなる非道な行いに対しても、厳正なる裁きの場が用意される。
「異議あり」
そう言って、すくっと立ち上がったのは青い瞳のビスクドール。
でも小っちゃいから主人のわたしが肩車をして立ち上がる。
あまりにもマヌケな姿に軽く失笑が起こるも、コホンと王さまが咳払いにてこれを黙らせた。
「たしかに被告人リュウジは未曾有の大災害を引き起こしました。ですがそもそも試練の塔を人喰いの塔なんぞと言わしめたのは誰か? それは欲に駆られた愚か者たちです。その者たちが自制心を失って塔の内部で命を失ったとしても、これは自己責任にほかなりません」
「だが国軍の兵士たちも犠牲になっているのだぞ。これはとても看過できる問題ではない」
ルーシーの発言に検察役がすかさず反論。
だがお人形さんは、これにも冷静に対処する。
「それこそおかしなことをおっしゃる。彼らは王の命令によって、その任務を果たそうとして死んだのですよ。いわば王命に殉じ、国に殉じたのです。そんな誇り高き兵士たちの死を、あなたは愚弄なされるおつもりですか」
国軍に所属する以上は、国のために生き国のために死すのが当たり前。
多数の勇士たちが失われたことはかなしいことだけれども、だからとて彼らの死と欲深な連中の死とを同列に並べるのかと言われては、検察側の役人も黙るしかない。
「とはいえ彼らにも身内がいます。親しくしていた者たちもおりましょう。そんな者たちからすれば、『任務に殉じた』のひと言でとても納得できるわけがない。そこで、まずはお手元の資料をご覧ください」
法廷がはじまるまえにわたしとルーシーがせっせと配布して回ったパンフレット。
そこにはリュウジのギフトとスキルの有効活用と運営方法。今後、国にもたらされるであろう莫大なる利益の概算が、サクサクっとわかりやすいグラフ表示なんぞで掲載されてあった。
わたしでも「へー」と感心するわかりやすい内容にて、法廷にいた多くの人たちのハートをがっちりキャッチ。
だがルーシーさんはまだ攻勢の手をゆるめない。
「資料をご覧いただければおわかりのとおり収益は充分。そこから犠牲になった兵士たちの家族への見舞金と遺族年金を払い、各地の復旧費用も賄えます。そればかりか今回の一件をコントロールすることで、ベリドートは同時にインフラ整備、つまり各種生活基盤や公共整備が行えて、未曾有の好景気と発展を遂げることでしょう」
各地の瓦礫の長城を崩せば建築資材もまかなえるし、なにより掘れば塔内部にあったお宝がザクザクでてくるから、肉体労働者諸君の気合も入ろうというもの。しかも後片付けにもなって、一石三鳥。
そこまで言っても、なおも渋るえらい人には「国営化にともなう美味しい新ポスト設立」をエサにちらつかせて、うなづかせるルーシー。
リュウジのスキルの宝物錬成の乱発による、市場経済の混乱を危惧する良識ある方には、その辺の生産量や種類のリスト管理化をご提案。何をどれくらい作るのか国がきちんと把握しコントロールすれば問題なかろうと納得させる。
気づけば試練の塔騒動の法廷の場は、ビスクドールの独壇場となっていた。
ついには王さまも丸め込まれて、「以後、勇者リュウジの身柄はベリドート預かりとし、節度あるタワーダンジョン運営にて、贖罪に努めることとする」
かくしてベリドートはかつてないほどの繁栄を国にもたらすであろう、新事業を国営にて立ち上げることとなる。
そしてわたしの罪もどさくさに紛れて完璧に隠蔽された。
めでたし、めでたし。
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