わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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095 ときには実の無い話を

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 ずんぐりむっくりとした中途半端な塔みたいなラグマタイトの主都。
 正門から内部へと通じる長いトンネル。
 そこを抜けた先に広がっていたのは、屋内にもかかわらず明るい空間。
 なにやら人工太陽的な照明設備が天井に備え付けられており、外の日の出や日暮れと連動して明るくなったり、暗くなったりしているそうな。
 主都は三階層プラス地下にて構成されており、王宮や役所などの公的機関は上の階層にまとまっており、一階がまるまる居住スペース、地下には水回りなどの施設が収まっており都民の生活を支えている。
 居住フロアには木もいっぱい生えてるし、自然公園みたいな場所もあり、なにより空気もきれい。
 まるでなんちゃらニュータウンオープン! とかいう不動産屋のパンレットの表紙のような整った街並み。
 ケンカ用のおらおら魔導研究ばっかりしている国って聞いていたから、もっと、こう退廃的かつ工業的な、産業廃棄物垂れ流しにてナゾのガスがふよふよして、ノドや目が痛くなるような、腐った文明社会の末路っぽい世紀末な街角を想像していたのに……。

「えっ! オレたちのところって他所からそんな風にみられているの?」

 わたしの口元より滴り落ちる妄想を耳にして、声をあげたのはラグマタイトの勇者の一人であるランカさん。
 このオレっ娘、以前に競泳をしていたとかで、背が高めで肩幅もがっちりしている。茶色の短髪にてボーイッシュ、とっても健康美な人。

「まぁ、外からだと内部のコレはちょっと想像できないもの。ボクもはじめはふしぎだったし」

 このボクっ娘も勇者の一人、名をユリさんという。
 小柄な黒のセミロングにて、地味な顔立ち。総じて慎ましやかな印象を受けるも、なにやら妙にエロスな魅力を感じる。
 隣の人妻とか向かいの大学生のお姉さんとか、こう、グッと劣情をかき立てる日常に潜む甘美な存在とでもいおうか。それを連想させる何かを秘めた人。
 彼氏とかにはちょっと紹介したくないタイプだ。
 もっとも、そんな素敵アイテムを装備したことのないわたしには関係ないけどね。

 トラブルで席を外したジャニス女王の命によって、リスターナの使節団を宿泊先の屋敷まで案内警護してくれているラグマタイトの勇者八人。
 女子二人を案内係に回して、残り六名の野郎どもは周囲をマジメに警戒中。
 さて、この気安げな態度から、もうお分かりであろう。
 初顔合わせの際の、当方との不幸なすれ違いはすでに解消されている。
 誤解をといたのは、誤解をふりまいた張本人である青い目をしたお人形さん。
 自ら事件を起こし、しゃしゃり出て解決をする悪辣迷探偵、登場!
 ルーシーは小さな体にて身振り手振りをまじえながら、聞くも涙の物語を切々と語る。
 お話の主人公は、もちろんわたしことアマノリンネ。
 異世界転移にまつわる騒動から、賊たちとの出会いと別れ、こっちにきてからの破廉恥かつ奇天烈な出来事を一部脚色を交えながら、大筋はそのままにて聞かされた女勇者二人。
 ときに目に涙を浮かべ、ときに憤り、ときに笑い、最後には鼻をクスンとさせながら、「リンネ、おまえ、たいへんだったんだな」「リンネちゃん、よくがんばったね。えらいわ」
 同情はときに人を寛容にする。「だったら漁るのもしようがないよね」という、よくわからない納得のされ方にて、気がついたらわたしは新たに二人の知己を得ていた。
 同世代ということもあり、一度打ち解けるとあとは早い。
 ひさしぶりのガールズトークに華を咲かせているうちに、じきに目的地へと到着。
 主都の中でもえらい人たちの区画にある立派な貴賓館。
 どれくらい立派かというと、玄関ポーチが落ちてきたらぺちゃんこにされて、ちょっと助からないかなぁ、というぐらいの不安を感じる立派さだ。

 リスターナの一行が屋敷に到着すると、ラグマタイトの勇者たちはランカとユリの女性陣と男二人だけを警護に残し、他はジャニス女王のところへと向かう。
 シルト王たちは休む間もなく、随行員らとすぐに協議に入るために別室へ。
 大人たちの会話に興味のないわたしは、警護は野郎どもに丸投げして女性陣を誘い、ほどよく装飾された豪華な客間にて、ソファーにふんぞり返りくつろぐことにする。

「ルーシー、みんなでお茶をしたいからアルバを呼んで」

 わたしの要請でお人形さんが亜空間経由にて、たまさぶろうに乗艦していた鬼メイドを召喚。
 多元群体化したルーシーたちは、全員が亜空間を自由に出入りができる。
 つまりあっちとこっちに双方一体ずついれば、このようにパイプ役を果たす便利な使い方も可能。
 幼き頃に誰もが一度は夢見て欲したであろう、あの憧れのアイテムに準ずるモノをわたしは手に入れたのだ。

 アルバが淹れてくれた香り高い紅茶を優雅に飲み、銀のお盆に山盛りにされたひと口サイズのチョコレートに手をのばす。
 うむ、ろくすっぽ使用されていない脳細胞が、甘いものを与えらえて池の鯉のごとく、ピチピチよろこんでおるわ。愛い愛い、ほぉれ、たんとお食べ。
 そうだ! あとで一生懸命に頭をつかっているシルト王たちのところにも差し入れしてあげるとしよう。わたしは頑張る人はそこそこ応援する女なのだ。
 そんな感じでまったりしていたら、ランカさんがおずおず言った。

「なぁ、リンネのところのメイド……、その、なんか、ちょっとデカくない? あとなんでチョコがあるの?」
「大きいのは魔族だからだね。あそこの連中ってば、だいたいこんな感じだし。それからチョコはガガガガの実で作った。美味しいよ」

 正直に答えたら、ランカさんはアルバを見上げたまま、お口をあんぐり。
 どうやら魔族という単語に引っかかったようだ。すごく驚いている。
 おそらくはこれが世間一般の反応なのだろう。リスターナの連中の反応が薄すぎるのだ。
 そんなランカさんを尻目に今度はユリさんが食い気味で会話に混ざる。

「魔族ってば世界の敵っぽい話だったけど、みんなこんなにステキなの? ボク、モロにストライクなんだけど」

 ユリさんはひと目で、うちの色白鬼女がお気に召したらしい。瞳にありありとハートマークが浮かんでいる。
 発覚するユリさん、ガチ百合乙女な事実。
 もともと女子高育ちにて、そこで才能に開花したそうな。
 なんら臆することなく、自身の恋愛観を堂々と熱く語るユリさん。

「女同士でイチャコラして何がわるい? 最高にして至高じゃないか! 愛犬家や愛猫家どもがペットにベロベロくんかくんかと変態ちっくな行為を強要しているよりも、よっぽど健全だよ。少なくともこっちはちゃんと互いの意志の疎通があってのことだからね。えっ、世間の目がうるさい? そんなつまらん目には、こうだ」

 ピースサインで目つぶし動作をシュッシュと決める彼女は、とってもクールでカッコウいい。でもさすがに偏見が過ぎるので、とりあえずペット愛好家たちにはあやまったほうがいいと思う。
 そんなユリさんの好みは、たくましくて凛々しいタイプ。
 だからランカさんやジャニス女王も立派なお姉さま候補。そこにあらたにアルバも加わった。

「どうしよう、ボクは魔族領を目指すべきなのだろうか。それともリスタ―ナに亡命……」

 真剣に悩みだしたところ恐縮なのだが、魔族も玉石混合にて、みんながみんなステキなわけではないことを告げて、とりあえず早まった行動は控えるようにと釘をさしておく。
 話しついでにランカさんの恋愛観なんかも聞き出すことにする。
 なんといっても女子会といえばコイバナだからね。

「オレか? うーん、いまのところ男は眺めているだけでいいかなぁ」

 一見するといかにも「まだ恋愛に興味がない」ともとれる発言だが、よくよく話を聞いてみればちがった。
 オレっ娘ランカさん、実はけっこうな腐女子であることが判明。
 なにせずっと競泳をしていたもので、身近にはムキムキの若い男が選りどり見どり状態。
 でもプールでの練習ってば、たいていは男女に別れるよね。
 つまり男は男同士で固まって、女は女同士で固まる機会が多い。
 すると互いの視線の先にあるのは、モホモホしたウホウホな姿か、白百合たちが集う麗しい姿となるわけ。
 幼少期より水泳に励んでいたランカさん。その視線の先には、いっつもそんなパラダイスが広がっていた。心身が成長していくとともに投入される知識にて、そちら方面の見識を深めていった彼女は、男の集団とはそういうモノとの誤った認識を身に着ける。
 もちろん、それもまた成長とともに修正されてはいったのだが、こと性の目覚めに関しては、ファーストインパクトの影響がモロにでる。
 好み、フェチ、マニア、性癖……、言い方はいろいろとあるけれど。
 きっかけは、過去に経験した些細なことである場合が極めて多いという。
 よってランカさんの現状もまた、なんらおかしなことではない。なるべくして腐女子になっただけのこと。

 こんな阿呆な会話をわりと真顔でしていたら、青い目をしたお人形さんがタメ息まじりに言いました。

「なんという実のない話」


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