わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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097 国際会議開幕

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 王弟暗殺未遂事件の詳細は伏せられ、表向きはただの事故として処理される。
 各国の代表が来訪している時節柄、騒ぎを大きくするわけにはいかなかったのだ。
 もちろん内容が内容なだけに、裏では密かに調査が継続されている。
 各国もある程度の情報は掴んでいるけれども、あえて触れずに見てみぬふりをする。
 だってヘタにつついて火の粉がかかったらたいへんだもの。

 なにやら得たいの知れない緊張感を漂わせつつ、予定通りに国際会議は開幕。
 議長国からはジャニス・ル・ラグマタイトが出席。
 リスターナ国からはシルト・ル・リスターナ。
 トカード国からはエンダー・ロウ宰相。
 ヤムニム国からは半魚人なザラメ族のガルガン王子。
 ベスプ商連合からは代表としてポストーン族のエイブラ参事官。
 以上の五名が会議の主な参加者たち。あとはこれに各国が官僚などを多数引き連れている。
 少しばかり捕捉説明を加える。
 ヤムニム国はザラメの王族が支配する多民族国家にて、山岳部および平原や海岸部などをまたいで統治。ザラメたちは半魚人っぽい見た目に反して、ラホースを華麗に乗りこなす騎馬戦を得意とする戦士の一族。もちろん泳ぎも達者にて水中戦もおてのもの。
 ベスプ商連合は商人たちの集合体。経済的発展を第一に掲げており、わりとあちこちの勢力と節操なく付き合っているものの、それゆえに顔も広くたいがいの国際会議には首を突っ込んでいる。ノットガルドではめずらしい議会制をとっており、いろんな種族が参加している。なおポストーン族は肌が紫色をして小柄ながらも、数字や計算にめっぽう強く、各国で重宝がられて仕官先にて活躍している種族。

 と、そんなえらい人たちの表舞台とは裏腹に、ちょっと剣呑な空気なのが会議が行われている会場に隣接した控室。
 そこには各国が連れてきた勇者たちの姿があった。
 事前の取り決めにより連れてきたのはどこも一人だけ。
 そして一人であるがゆえの緊張と緊迫感が漂う。
 本来であればホスト側のラグマタイトの勇者くんが、率先して場の空気を和ませ、仲をとりもち、盛り上げるべきなのだろうけれども、生憎と彼はそんなキャラではないらしい。終始、むっつり顔にてウデを組んでいる愛想のなさ。それどころか先の事件のこともあるから、どこかピリピリしてる。
 そのせいか他も似たり寄ったりな態度にて、微妙に距離をとっている。
 そんな中でヘラヘラしていたのはわたしとアイさん。
 あいかわらずポニーテルがゆらゆら、柳眉にて端正な顔立ち。彼女はトカードの五人の勇者のうちの一人。創剣ギフトと瞬足のスキルをもつ剣道少女にて、粋でいなせな姉御って感じの美人さん。今回はあみだくじに負けての参加とのこと。

「ギャバナでの話、聞いたよ。あのアキラを泣かしたって」

 交流試合の話はけっこう方々に広がっているらしく、リリアちゃんの活躍ともどもトカードにも届いているそうな。
 あらためて褒められると、なんか照れるね。
 と、そのとき懐の通信端末がぷるぷる。スマートフォンっぽいのを取り出して「もしもし」すれば相手はルーシーさん。彼女とはただいま別行動中。
 青い目のお人形さんが現在いるのは、例の王弟さんが爆破に巻き込まれた執務室。
 ではどうして彼女がそんな事件現場にいるのかというと、わたしがちょいと調べてと頼んだから。
 犯人の目的がわからない以上、ひょっとしたらこちらにも飛び火する可能性もあるわけで。
 もしもシルト王さまに何かあったら、リリアちゃんがめっちゃ泣く。
 それは断じて容認できん。
 あとはその場のノリだ。
 ランカさんやユリさんの手前、ちょっと見栄をはってデキる司令官ぶってみた。
 そのノリにルーシーも乗っかった。「ちょうどいいです。まえに作った現場検証用の解析キットが役に立ちます」
 指紋とかゲソコンとかDNAを採取したり、ブラックライトで血痕を確認したり、素人でも気軽に探偵気分が味わえるそう。ちょっと楽しそうだな、わたしもやりたい。
 それから会議の間中、ぶっちゃけやることがない。
 ムズカシイ話はかしこい大人たちの領分。高校で進級ギリギリとまではいかないけれども、そこそこ瀬戸際を走り続けてきたわたしに、何を期待するというのか。
 そんなわけでの調査活動。
 自由に動いていいとの許可はジャニス女王からもらっている。
 王弟を助けたお礼に何がいい? ときかれたので「自由を」とこれまたその場のノリで答えたら、「わかった」とメスライオンがあっさり了承。
 ラグマタイト国内にて、ある程度の軽犯罪ぐらいまでなら許すとの認可状をもらってしまった。
 いや、やらないけどね。……たぶん。

「どうしたの? ルーシー」
「じつは少々お耳にいれておきたいことがありまして」

 なんでもあちこちポンポンポポンと粉を吹きまくって、指紋をベタベタ採集した結果、気になる指紋が検出されたとのこと。
 いろんな種族が住んでいるノットガルドにて、はたして指紋が個人特定において、有益な証拠となりえるのかどうかは、はなはだ疑問だが、ヘタなことを口にするとルーシーのうんちく話が長くなりそうなので、あえて言わない。
 それで気になる指紋というのが、じつはリスターナに関係する人物のものだという。
 っていうか、いつのまにかみんなの指紋が採取済み!
 はははは、お人形さんが人権を蹂躙しまくっているぜ。
 だがここはノットガルド、だから問題なし。

「はて、でもうちからは誰も前乗りなんてしてないでしょ?」
「はい。使節団一行ではありません。検出されたのはバカ王子、じゃなかったカーク元王子の関係者のものです。ほら、リンネさまは覚えていませんか。カーク元王子が宰相のダイクさまらにとっ捕まったときに、女としけこんでいたことを」

 ルーシーの話で、「あー、そういえば」とわたし。
 外道勇者カズヒコの奸計にまんまと操られて、調子にのって周辺国を相手にして侵略戦争をしかけたものの、ズタボロに負けて逃げ帰ったあとは、ずっと宮殿の奥で酒色におぼれていたカークくん。
 そのかたわらにはお気に入りの女がいて、最後の最後までよろしくやっていたとかなんとか。引っ立てられたときにはパンツ一丁だったし。
 その女もあの騒動の折りに、どさくさに紛れて消えたというから、てっきりもらうモノだけもらって、さっさと逃げ出したのかと思っていたけれども……。
 そんな女の指紋が事件現場に残っているとなると、何やら話がキナ臭くなってくるかも。


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