わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

文字の大きさ
144 / 298

144 七番目と最凶

しおりを挟む
 
 戦いにのめり込むあまり、すっかり夢中になっているアルバとバァルディア。
 いつになくガチンコなシリアスバトル。
 それを尻目に周囲はどうしていたのかというと……。
 ルーシーとエタンセルがまじめにサクサク、敵兵を平らげつつ囚われていた人たちを救い出している。こちらはおおむね順調。
 けれどもわりと近くにいたローブ姿の男とわたしは「ぎゃあ、ローブに火が!」「うわっ、あぶねー」と逃げ惑うばかり。
 だがこれは無理からぬこと。
 現在地である遺跡の地下の広間にての戦闘配置。
 邪龍が封じられているとおぼしき奇妙な石棺を背にして、対峙しているローブ姿の男とわたし。
 その左側ではアルバたちが、右側ではルーシーたちが戦っていたから。
 すぐとなりで三メートルの鬼女が槍を手にし、五メートルはあろうかという屈強な四本腕の魔王が大剣を四本も手にして「往生せいやーっ!」「死にさらせ!」と激しく殺り合っている。
 その間合いの広さ、攻撃の凄まじさ、あげくに魔法まで駆使しだしたものだから、余波がモロにお隣に。
 おかげでこっちはちっとも集中できやしないよ。
 などとはしゃぎつつ、わたしは対峙している男に言った。

「いつまでそんな格好をしているの? この威容なプレッシャー、おおかたアンタも聖騎士とかいう連中の仲間なんでしょう」

 ローブについた火をあわてて消していた男の動きがぴたりと止まる。

「おや、バレていましたか。こうもあっさりと私の変身を見破ったのは貴女が初めてですよ」

 正体が露見したとたんに男がはらりとローブを脱ぐ。
 中からはごく標準的な体型をした魔族の鬼男がお目見え。頭には魔族の特徴である角がしっかり三本ある。
 わたしが睨みつけていると、鬼男の表面上にじりりとノイズが走る。
 まばたきほどの一瞬後に立っていたのは、先ほどとは似ても似つかぬ人間種の男。
 頭がつるりとハゲており、眉毛もない。それ以外はどこにでもいそうなおっさん。まるで没個性の塊。特徴がないことが特徴みたいな人物。

「おやおや、若い娘さんにそんなに見つめられると少し照れてしまいますね」

 ふざけた言葉を口にする男は、自身を第七の聖騎士ルルハンと名乗った。

「やれやれ、あと少しというところでとんだ邪魔が入ったものです」
「それってさぁ、さっき魔王が言っていた邪龍復活とかのこと?」
「そうですよ。女神イースクロアさまの思し召しにて。だからわざわざ魔族に混じってコツコツと頑張っていたというのに、貴女もヒドイことをする」

 やたらとベラベラおしゃべりに応じてくれるルルハン。
 すぐお隣があんな調子にて、いくらまともに戦えない状況とはいえ、やたらと気前よく答えてくれている。おそらくはわたしを始末する気だからなんだろうけれども、そちらがその気ならばべつにかまわない。むしろこれ幸いとこの現状を利用してできるだけ情報を引き出してやろうとも。

「っていうか、どうして女神さまが邪龍なんて物騒なモノの復活を願うの? 他にも聖騎士たちを使って戦争を誘発するような真似をしたり、平和な国に乱を起こしたり、勇者をバラ撒いたり。どう考えてもおかしいよね」

 世界を救うためにと大勢の若者を召喚したくせに、フタを開けてみれば混乱の火種をまき散らすかのような所業。
 まるで世界に争乱を引き起こし、世界の破壊を助長するかのよう。
 世界を救いたいのか、世界を壊したいのか。
 こちらとしては、そこんところの白黒をはっきりして欲しいわけよ。
 何か深謀遠慮ゆえの行為だというのならば、距離をとり高みの見物としゃれこむ。
 単純に悪意ゆえの行動だというのならば、やはり距離を置いて高みの見物をしつつ、それなりに対処させてもらう所存。
 だというのに、このハゲオヤジはまったくの予想外の解答をのたまいやがった。

「そんなこと知りませんし、知りたいともおもいません。よしんば聞いたところで神の思考を理解できるなどと考えるなんて、おこがましいにもほどがある。それこそ不敬というものでしょう」恍惚とした表情にてルルハンは言った。「女神イースクロアさまが望んだことを、我ら聖騎士が果たす。大事なのはそれだけでして、それ以外はどうでもいいのですよ」

 ……ダメだ、このおっさん。
 どうやら狂信者の類であったらしい。
 たぶん女神さまが「死ね」と言ったら、よろこんで自分の心臓を捧げるタイプだ。完全にイッちまってやがる。
 まともな会話は成立しないと判断したわたしは、左手の人差し指マグナムをかまえて、照準をセット。
 するとおっさんは意外な行動にでる。
 なんと! 両手をあげて降参のポーズをとったのだ。
 呆気にとられるわたしに向かい、ルルハンは「いやはや、個人的に荒事があまり得意な方じゃなくってね」なんて言う。あげくには「いくら変身してカラダが強くなっても、中味がともなわないんじゃねえ」とまで口にした。
 なんらかの発動条件はあるものの、他者に変身できる異能。
 ある程度は質量をムシ出来るのは、先ほど巨躯な魔族種から人間種に変じていたことからもわかる。発言内容からして、おそらくは姿形だけでなくチカラも伴う完全な変身。
 本物に化けられる能力。
 だがそれゆえにどうしても外せない問題がいくつか浮上する。
 それが装備類や経験値の差。
 トリに化けたらいきなりうまく飛べるのかといえば、たぶんムリ。
 トリのカラダにはそれ相応の動かし方があり、感覚があり、使い方がある。それをよく理解しないことには、たぶんろくすっぽ翼をはためかせることもできやしないだろう。
 変身が完璧であればあるほどに本物と対峙したら、明確な差が出る。
 そんな自分自身の能力の弱点をあっさりと吐露するルルハン。
 このおっさん、いったい何を考えているのやら……。
 なんてことを考えはじめていた時点で、すでにわたしは相手にペースを握られていたのであろう。
 ろくに使っていない頭を働かせようとしたのがまちがいであった。
 いつもならば、とりあえず殺ってから考えていたというのに。

 もたもたしているうちに隣のアルバとバァルディアとの勝負が決着!
 鬼女に殴り飛ばされた魔王が吹き飛び、祭壇にある石棺へと派手にぶつかる。
 そのすぐそばにはルルハンの姿が。
 彼は倒れている魔王を見下ろし、にへらと笑った。


しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...