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157 返還請求
しおりを挟む第七十九次聖魔戦線がとりあえず終了。
関係各国各位がその後始末やら今後のことで右往左往しているのを尻目に、のほほんと過ごしていたのは辺境の小国リスターナ。
粛々と国家運営に邁進し、着々と復興を果たし、景気もずいぶんと上向きに。それこそ国ランクにて上の下ぐらいに迫る勢い。かつて限りなく下の下に近い下の中であったことをおもえば、これはまさに奇跡の復活劇! すぐにドラマ化されてもいいぐらいの快挙。
いずれリンネ組で映画も撮影してみようかな。
タイトルはそうだなぁ、「首狩り王がゆく!」とかどうだろう。
映画の中でシルト王の辣腕ぶりを表現しつつ、リリアちゃんの可憐で健気なお姫さま姿をクローズアップすれば、いいプロバガンダになりそうな気がする。これは我ながらいいアイデアである。大ヒット間違いなしにつき、今度ルーシーに相談してみるとしよう。
各種事業も軌道にのって順風満帆。
グランディアたちが魔改造した毒麦からとれる、良質な小麦がじゃんじゃん。
これを使った乾麺などの製造もじゃんじゃん。チョコレートやインスタント食品も好評にて、国内外からの問い合わせが殺到。作ったはしから飛ぶように売れていく。
製造ラインはフル回転にて、現場はうれしい悲鳴をあげている。おかげで人手が立りないから近いうちに、またぞろ他所からかっぱらって……じゃなくって、移民を募らないと。
一方、平和と好景気に浮かれるだけでなく、有事への備えにも余念がない。
表ではゴードン将軍率いる国軍兵士の育成にもようやく目処がついて、先の騒動にてすっかりガタガタだった組織もしっかり形になってきた。
そこに新たに移住してきた魔族の第四氏族ダイアスポアの面々が加わり、リンネ組から提供されるLGブランドの高品質な装備類にて、一層の強化がなされている。
裏では地下やら北のわたしの領地やら亜空間内にて、あいかわらず青い目のお人形さんが中心となって、好き勝手にわちゃわちゃしている。
基本事後報告だ。
知ったときにはほぼ完了しているので、わたしに出来ることは泰然自若としているのみ。
世間一般ではそれを「監督責任の放棄」と言うらしい。
でもそれを元女子高生に過ぎないわたしに求めるのは、いささか酷であろう。
いや、わたしだってこれでも当初はちょびっとがんばったさ。
でもね。その度に「これが計画書です」「こちらが関係資料です」「あとこっちが細かい数値です」なんて言いながら、ルーシーがドドンと膨大な書類を出し並べて、広めの机に山積みにするの。あげくに「明日までにすべての書類に目を通しておいてください」とか言っちゃうの! 書類の文字なんて目を凝らして睨まないと、かすんじゃうぐらいに小っちゃいのっ!
試しに宰相のダイクさんに見せたら「なんじゃこりゃあ?」ですって。
国のえらい人、リスターナでも有数のまともな大人の代表のようなダイクさんですらもが、この反応。
出来る大人がコレである。
ゆえに出来ない小娘であるわたしは、早々に現実から目を背けることにした。
逃避もまた生きる手段なり。だから背後からヒタヒタと追いかけてくる、しつこい責任くんからは全力で逃げ切ってみせようとも。それがわたしの戦いなのだから。
とはいえ、立場上いろいろとやることはあるわけで、そこそこ忙しく過ごしていると、「ちょっと執務室へきてくれ」との連絡をもらった。
ルーシーを伴って執務室へと赴くと、そこにはシルト王と宰相のダイクさんにゴードン将軍の姿があった。
「三人が揃ってるってことは、何か国絡みで問題でも起きたの?」
わたしがたずねると、差し出されたのは一通の親書。
送り主はダロブリンとある。
はて? どこぞで聞いたような……。
「リンネさまが召喚される予定だった国ですよ。ほら、あの賊だらけの」
ルーシーに言われて、わたしもようやく「あー」
異世界に転移してきてファーストコンタクトの現地人が賊。二番目の現地人も賊にて、わたしの心に深く賊への憎しみと嫌悪感を刻みつけてくれた、あの国か。
転移前に聞かされていた情報と、現地の状況があまりにもくいちがっており、どうにも胡散臭いのですたこらと逃げ出したっけ。
そういえば今はゴードン将軍の奥さんになっているユーリスさん。彼女の世界遺産級のおっぱいに目がくらんでちょっかいを出してきた商人も、たしかその国のやつだったな。
他にも人族至上主義とか、勇者を隷属化しているとか、ダロブリンについて思い出されるのはロクでもないことばかり。
「でも、そんなところがリスターナにいったい何の用なの」
首をかしげるわたしに「とりあえず目を通して見てくれ」とシルト王。
うながされるままに親書をひろげて、ルーシーといっしょに仲良くどれどれ。
ひと通り読んでから、主従そろって目が点になった。
書かれてあったのは返還請求について。
ちなみに返還対象はアマノリンネこと、このわたしである。
貴国が保有している勇者は、本来、当国のモノであり、然るべき賠償とともにこれを速やかにうんたらかんたら……。
「えーと、ちょっと何を言ってるのか、よくわからないんですけど」
わたし、たいそう困惑。
だってノットガルドに来てからこっち、生粋のノラ勇者なんですもの。リスターナには居候をしているだけの協力者にて、所属はあいもかわらずノラのまんま。
ダロブリンに関しては何一つ、お世話になった覚えもない。むしろ賊退治をした報酬をもらいたいぐらいである。
「おおかたどこぞよりリスターナの景気がいいのを聞きつけて、よくよく調べてみたら自分たちが賜るはずだった勇者が関わっていると知って、いらぬ欲を出したみたいですね」とはルーシーさんのご意見。「いかにもクソ虫どもが考えそうな、しようもないことです」
勇者召喚の儀において、事前に国が賜る勇者については、ある程度の情報が聖クロア教会側より通達される。
とはいえギフトやスキルなどの詳細なものではなくって、せいぜいが人数や性別とか名前ぐらい。
召喚の際の手違いにより、王都よりずっと離れた森の奥にポツン。
べつに迎えを寄越すでもなし、熱心に探すでもなし。ずーっと放置していたというのに、金のニオイをかぎつけたとたんに、このいちゃもん。
いかに温厚さにて、リリアちゃんやマロンちゃんをはじめとする数多の乙女たちや、愛らしいお子たちから、菩薩のごとく慕われているであろうこのわたしでも、コレにはさすがにカチンときたね。
それはルーシーも同じらしく、なにやらお人形さんの背後にどす黒いオーラがゆらゆら立ち昇っているよ。
シルト王をはじめとする首脳陣とて、わたしが自分の意志でリスターナにいることは重々承知。
だからこんなふざけた返還請求には応じるつもりは毛頭なく、念のためにと報せたにすぎない。もし今後ごちゃごちゃ言ってきても、すべて突っぱねるとシルト王は明言。
不快な親書もルーシーがびりびりに破いて、わたしが右人差し指型火炎放射器によって滅却処分。
そんなことがあったこともすっかり忘れた頃。
招かれざる客人らがリスターナへとやってきた。
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