わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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170 新装、真相、神槍

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 神殺しテュルファングは、神鋼造りの名刀。
 腕に覚えありの武芸者ならば、誰もがおもわず手を伸ばしたくなる大業物。
 もっとも、わたしは剣なんてろくすっぽ扱えやしない。
 だからもっぱら芝を刈ったり、爪を切ったり、ペーパーナイフ代わりに使ったり、ケーキを切り分けたり、あとはカップ焼きそばのフタの重しにしたり、布団叩きとしてバンバン、肩をポンポン……。
 リリアちゃんらとお出かけした際に、生肉にぶっ刺してバーベキューの串がわりに使おうとしたら、「それはかんにんして」とテュルファング。どうやら彼の中でどうしても譲れない一線に抵触したらしい。
 そんな漆黒の神呪の剣だが、リンネ組の研究班からは大人気。
 なにせ神鋼なんていうステキに無敵な激レア素材で造られてあるものだから。
 はじめはアレコレと実験に付き合わされるのを嫌がっていたテュルファング。しかし女主人のあまりの扱いの悪さと比べて、白衣を着た連中はみんなちやほやしてくれるものだから、今では自分から率先して研究に協力している。
 しかしその構造解析は、ルーシーズやグランディアたちであっても難航を極め中。
 が、それなりに成果も出始めてはいる。
 まだまだ研究開発途上ではあるが、その技術を応用して、この度、一本の槍が作られた。
 鬼メイドのアルバの新装備。前のは魔王バァルディアとの一戦にて砕けてダメになってしまったので。
 穂先をこれまで使用していたシンプルな直槍ではなくて、片鎌槍に変更。
 これにより鋭い刺突をかわしても、横へとひょっこり伸びた刃がざっくり。
 十文字型と最後まで悩んだというが、いろいろ試してみた結果、こっちのほうが色々応用が利くとアルバが判断する。
 彼女は派手な装飾を好まないので槍身の表面には、したたる血が手元に伝わって握りが甘くならないためのかぶら巻きがあるぐらい。お尻の石突き部分がひし形をしているのが唯一のオシャレポイント?
 槍身の中身はくり抜かれており鉄パイプ状態。中空菅とかいう構造らしい。
 専門知識に乏しいわたしなんかは、「パイプよりも中身の詰まった棒のほうが強いんでないの?」とか思うのだが、一概にはそうとも言い切れないとのこと。
 アルバの好みや技量に合わせて強度と重量、しなりなんかを調整。あと一見するとただの空洞なのだが、中にはなにやら得体の知れない特殊な物質が満ち充ちているらしい。
 素材も限りなく神鋼に近いモノを惜し気もなく投入したので、とっても頑強。
 とにもかくにも前の武器よりも格段に優れた逸品であることは間違いあるまい。
 ルーシーも「なかなかの自信作です」と太鼓判。
 こうして目出度くアルバの新装備が披露されることになったのだけれども……。

「どうして、わたしがその自信作とお見合いをするハメに?」

 ただいま富士丸くんの亜空間内部。
 多くのギャラリーがやんやと見守る中で、向かい合っているわたしとアルバ。
 彼女はばっちり白光の鎧を着込み、穂先が宇宙の深淵のごとく真っ黒な槍を手に、すでに準備万端。
「新作披露だから顔を出してください」とお人形さんに呼ばれて足を運んだら、そのままここに立たされた。わけがわからん。
 だから説明を求めたら「他の子たちだとちょっと危ないかもしれないから」ですって! いくら健康スキルで突こうが薙ごうが殴ろうがへっちゃらだからって、お人形さんがヒドすぎるっ!

「へっちゃらならテュルファングでもいいじゃない」

 イヤな仕事を部下に丸投げしようとする、最低な上司の最低な発言による最低な代替え案は「ある程度、マトに弾力がないとせっかくの新しい槍の穂先が欠けたらタイヘン」というお人形さんの最低な言葉で即封殺。
 そして始まる新作披露会。
 まずは通常通りの突きを繰り出すアルバ。
「うひゃぁ」と切っ先を咄嗟にかわす。が、戻りの片刃にて肩口を引っかけられて、そのまま前倒しに引き倒される。
 鼻先を地面にぶつけそうになって、危うく手をついて防いだ。でも四つん這いになっているところに迫る次の手。ゴルフのスイングのように弧を描いて飛来した石突き部分。
 額にガツン。かちあげの一撃がクリーンヒット!
 倒されたと思ったらすぐにムリヤリ立ち上がらされる。
 で、棒立ちのところにズドンと強烈な突きを鳩尾に喰らって、「ぐえっ」とひと鳴き、盛大に吹っ飛ばされた。
 なんてことのないように言ってるけど、ふつうだったらこの時点で何度も死んでるからね。あと風穴どころか、たぶんカラダが千切れて二つに分離しているから。
 ついでにこれまであえて触れなかったが、いい機会だから言わせてもらう。
 当たり前のように槍ヤリ言ってるけれども、身長が三メートルにも及ぶ鬼女の得物だからね。小娘目線だとまるで信号機をふり回しているようにしか見えないから!
 それからカラダは無事でも服はもげる。おかげですでにけっこう「いやんばかん」なセクシー状態。
 なのにウチの青い目をしたお人形さんが容赦ない。

「ウォーミングアップはそのへんにして、ではアルバ、次は魔力と気合と闘魂をモリモリ注入してお願いします」
「了解です、ルーシー先輩。あとリンネさま、つき合わせてなんか申し訳ありません」

 女主人をボコボコにしている鬼メイドがペコリ。
 リンネ組に加入してから成長著しいアルバ。いかに急造魔王とはいえ拳で撃破しているのだからたいしたもの。その分、メイドとしての成長が疎かになっているような気が若干しないでもない。
 まず白光の鎧に仕込まれているクリスタルたちが色味を増し、全体がかがやきだすのはいつものこと。
 と、今度が槍自身がなにやら異様な気配を発しはじめる。
 白い槍身の表面に浮かび上がったのは黒と赤の二重らせん。まるで二匹の竜が絡み合いながら天へと昇るかのごとく、穂先へと向かいおおきくうねる。
 そしてじょじょに変容していく漆黒の穂先。
 根元の部分より黒から白へと。
 やがて穂先の全てがまばゆいばかりの白い光に包まれた。

 やや腰を落とし、基本的な構えをとったアルバ。
 そこからなんの変哲もない突きの一撃を放つ。
 対するわたしはコレを全力横っ飛びにてかわした。
 わんぱく全開、渾身のヘッドスライディングをぶちかます。
 直後についさっきまで自分が立っていた辺りにて、何かがズドン!
 音も、風も、余波もなし。それらすべてをも巻き込み呑み込んで、ただズドンと何かが駆け抜けていった。
 顔中をドロだらけにしながら、無言にてむくりと起き上がる。
 後ろを見れば地面が大きく抉れており、ずーっと向こうにまで深い溝が線となって続いていた。途中の岩山も型でくり抜いたかのように、ぽっかり穴が開いている。ここからでは終着点がまるで見えない。
 これには放ったアルバ当人もギャラリーたちもおもわず黙り込む。
 あまりの威力に静まり返っている現場に、ひゅるりと風が吹く。

「おかしいな。たしか新型の槍のお披露目と、わたしは聞いていたんだけど……」

 なのに実際に披露されたのは極太レーザーの一撃のごとき破壊光線。
 どうして槍を造って、個人用の携帯型主砲が完成する?
 これに青い目をしたお人形さん旗下の開発チームの面々、「ついつい性能を追求するあまり、うっかり神槍を造っちゃったみたい。テヘペロ」だってさ。
 テヘペロでそんな攻撃を向けられたわたしは、もはや開いた口がふさがらない。
 あとルーシーはともかくセミ人間のグランディアたちのテヘペロは、なんか腹立つからやめろ。


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