170 / 298
170 新装、真相、神槍
しおりを挟む神殺しテュルファングは、神鋼造りの名刀。
腕に覚えありの武芸者ならば、誰もがおもわず手を伸ばしたくなる大業物。
もっとも、わたしは剣なんてろくすっぽ扱えやしない。
だからもっぱら芝を刈ったり、爪を切ったり、ペーパーナイフ代わりに使ったり、ケーキを切り分けたり、あとはカップ焼きそばのフタの重しにしたり、布団叩きとしてバンバン、肩をポンポン……。
リリアちゃんらとお出かけした際に、生肉にぶっ刺してバーベキューの串がわりに使おうとしたら、「それはかんにんして」とテュルファング。どうやら彼の中でどうしても譲れない一線に抵触したらしい。
そんな漆黒の神呪の剣だが、リンネ組の研究班からは大人気。
なにせ神鋼なんていうステキに無敵な激レア素材で造られてあるものだから。
はじめはアレコレと実験に付き合わされるのを嫌がっていたテュルファング。しかし女主人のあまりの扱いの悪さと比べて、白衣を着た連中はみんなちやほやしてくれるものだから、今では自分から率先して研究に協力している。
しかしその構造解析は、ルーシーズやグランディアたちであっても難航を極め中。
が、それなりに成果も出始めてはいる。
まだまだ研究開発途上ではあるが、その技術を応用して、この度、一本の槍が作られた。
鬼メイドのアルバの新装備。前のは魔王バァルディアとの一戦にて砕けてダメになってしまったので。
穂先をこれまで使用していたシンプルな直槍ではなくて、片鎌槍に変更。
これにより鋭い刺突をかわしても、横へとひょっこり伸びた刃がざっくり。
十文字型と最後まで悩んだというが、いろいろ試してみた結果、こっちのほうが色々応用が利くとアルバが判断する。
彼女は派手な装飾を好まないので槍身の表面には、したたる血が手元に伝わって握りが甘くならないためのかぶら巻きがあるぐらい。お尻の石突き部分がひし形をしているのが唯一のオシャレポイント?
槍身の中身はくり抜かれており鉄パイプ状態。中空菅とかいう構造らしい。
専門知識に乏しいわたしなんかは、「パイプよりも中身の詰まった棒のほうが強いんでないの?」とか思うのだが、一概にはそうとも言い切れないとのこと。
アルバの好みや技量に合わせて強度と重量、しなりなんかを調整。あと一見するとただの空洞なのだが、中にはなにやら得体の知れない特殊な物質が満ち充ちているらしい。
素材も限りなく神鋼に近いモノを惜し気もなく投入したので、とっても頑強。
とにもかくにも前の武器よりも格段に優れた逸品であることは間違いあるまい。
ルーシーも「なかなかの自信作です」と太鼓判。
こうして目出度くアルバの新装備が披露されることになったのだけれども……。
「どうして、わたしがその自信作とお見合いをするハメに?」
ただいま富士丸くんの亜空間内部。
多くのギャラリーがやんやと見守る中で、向かい合っているわたしとアルバ。
彼女はばっちり白光の鎧を着込み、穂先が宇宙の深淵のごとく真っ黒な槍を手に、すでに準備万端。
「新作披露だから顔を出してください」とお人形さんに呼ばれて足を運んだら、そのままここに立たされた。わけがわからん。
だから説明を求めたら「他の子たちだとちょっと危ないかもしれないから」ですって! いくら健康スキルで突こうが薙ごうが殴ろうがへっちゃらだからって、お人形さんがヒドすぎるっ!
「へっちゃらならテュルファングでもいいじゃない」
イヤな仕事を部下に丸投げしようとする、最低な上司の最低な発言による最低な代替え案は「ある程度、マトに弾力がないとせっかくの新しい槍の穂先が欠けたらタイヘン」というお人形さんの最低な言葉で即封殺。
そして始まる新作披露会。
まずは通常通りの突きを繰り出すアルバ。
「うひゃぁ」と切っ先を咄嗟にかわす。が、戻りの片刃にて肩口を引っかけられて、そのまま前倒しに引き倒される。
鼻先を地面にぶつけそうになって、危うく手をついて防いだ。でも四つん這いになっているところに迫る次の手。ゴルフのスイングのように弧を描いて飛来した石突き部分。
額にガツン。かちあげの一撃がクリーンヒット!
倒されたと思ったらすぐにムリヤリ立ち上がらされる。
で、棒立ちのところにズドンと強烈な突きを鳩尾に喰らって、「ぐえっ」とひと鳴き、盛大に吹っ飛ばされた。
なんてことのないように言ってるけど、ふつうだったらこの時点で何度も死んでるからね。あと風穴どころか、たぶんカラダが千切れて二つに分離しているから。
ついでにこれまであえて触れなかったが、いい機会だから言わせてもらう。
当たり前のように槍ヤリ言ってるけれども、身長が三メートルにも及ぶ鬼女の得物だからね。小娘目線だとまるで信号機をふり回しているようにしか見えないから!
それからカラダは無事でも服はもげる。おかげですでにけっこう「いやんばかん」なセクシー状態。
なのにウチの青い目をしたお人形さんが容赦ない。
「ウォーミングアップはそのへんにして、ではアルバ、次は魔力と気合と闘魂をモリモリ注入してお願いします」
「了解です、ルーシー先輩。あとリンネさま、つき合わせてなんか申し訳ありません」
女主人をボコボコにしている鬼メイドがペコリ。
リンネ組に加入してから成長著しいアルバ。いかに急造魔王とはいえ拳で撃破しているのだからたいしたもの。その分、メイドとしての成長が疎かになっているような気が若干しないでもない。
まず白光の鎧に仕込まれているクリスタルたちが色味を増し、全体がかがやきだすのはいつものこと。
と、今度が槍自身がなにやら異様な気配を発しはじめる。
白い槍身の表面に浮かび上がったのは黒と赤の二重らせん。まるで二匹の竜が絡み合いながら天へと昇るかのごとく、穂先へと向かいおおきくうねる。
そしてじょじょに変容していく漆黒の穂先。
根元の部分より黒から白へと。
やがて穂先の全てがまばゆいばかりの白い光に包まれた。
やや腰を落とし、基本的な構えをとったアルバ。
そこからなんの変哲もない突きの一撃を放つ。
対するわたしはコレを全力横っ飛びにてかわした。
わんぱく全開、渾身のヘッドスライディングをぶちかます。
直後についさっきまで自分が立っていた辺りにて、何かがズドン!
音も、風も、余波もなし。それらすべてをも巻き込み呑み込んで、ただズドンと何かが駆け抜けていった。
顔中をドロだらけにしながら、無言にてむくりと起き上がる。
後ろを見れば地面が大きく抉れており、ずーっと向こうにまで深い溝が線となって続いていた。途中の岩山も型でくり抜いたかのように、ぽっかり穴が開いている。ここからでは終着点がまるで見えない。
これには放ったアルバ当人もギャラリーたちもおもわず黙り込む。
あまりの威力に静まり返っている現場に、ひゅるりと風が吹く。
「おかしいな。たしか新型の槍のお披露目と、わたしは聞いていたんだけど……」
なのに実際に披露されたのは極太レーザーの一撃のごとき破壊光線。
どうして槍を造って、個人用の携帯型主砲が完成する?
これに青い目をしたお人形さん旗下の開発チームの面々、「ついつい性能を追求するあまり、うっかり神槍を造っちゃったみたい。テヘペロ」だってさ。
テヘペロでそんな攻撃を向けられたわたしは、もはや開いた口がふさがらない。
あとルーシーはともかくセミ人間のグランディアたちのテヘペロは、なんか腹立つからやめろ。
3
あなたにおすすめの小説
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる