わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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173 ビスコ家の裏事情

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 事件のあった翌朝、ルーシーをリリアちゃんらの警護に残し、わたしは鬼メイドのアルバのみを伴っていきなり電撃訪問をかましたら、カーラさんがあっさり兜を脱いで「ごめんなさい」
 で、事情を根掘り葉掘りと聞き出せば、おおかたの予想通りにてベタベタな展開。
 どうやらモランくんの死んじゃった実父オリバーさんが、彼女たちの息子でまちがいないみたい。ここ数日、こちらと接触しつつそれとなく当人から事情聴取したところ、ほぼ確証を得ているという。あとは念のために鑑定持ちに判別させようかという話になっており、急遽、国元から信頼のおける能力者を呼び寄せているんだとか。
 へー、熟達した鑑定能力だと、血筋とかまでわかっちゃうんだ。そいつは知らなかった。いわゆる遺伝子検査みたいなものかな。
 でもわたしの予想とちょっとちがった点もあった。
 それは、オリバーさんがビスコ家の跡取りというわけではなくって、彼の上には一人の兄と姉がいたということ。
 あと頑固おやじと反りが合わなかったというよりも、元来の気質が貴族の生活に合わなかったようで、ぶらりと自主的に実家を出て行ったみたい。
 貴族の暮らしを捨てて市井に飛び込むとか、オリバーさんはなかなかアグレッシブな人であったようだ。

「で、自分たちの孫だと判明したとして、どうするつもり? あらかじめ言っておくけど、リスターナはモランくんを手放すつもりはないよ。これはわたし個人の意見じゃなくって、王や宰相、将軍などの総意だから。なにせゆくゆくは国の中枢を担ってもらう人材として、鋭意教育中だもの。もっとも、それを抜きにしたって彼が母親であるユーリスさんを置いて出ていくなんてことは、万が一にもありえないけれどね」

 とりあえずビシッと先に釘をさしておく。
 だって、優秀だとわかったとたんに肉親面して奪われたらたまらないもの。
 けれども、それはどうやらわたしのとりこし苦労であったようだ。

「なんと! あの子はそれほどまでに周囲から期待されておるのか……。あれの父親であったオリバーも能力は高かったのだが、どうにもフラフラした気質であってなぁ」
「そうでしょうとも。この数日、接しただけでわたしにはわかりましたとも。あの子の聡明さや優しさが」

 シビニングとカーラ老夫妻が、ウンウンうなずきあっている。
 亡き息子の面影を孫にみて、たんなる孫バカ化しているだけのようだ。
 単純にデキのいい孫が見つかって、よろこんでいるだけだったみたい。
 頑固ジジイの鬼瓦な顔面は相変わらずだか、アレはアレでご満悦らしい。鼻の穴をぷくぷく膨らませて、フンスカと鼻息が荒い。初会時からの無愛想さはただの照れ隠し。
 なんてわかりづらいジジイなんだろう。うれしいなら素直に歯をみせて笑え。ちったぁ、隣の奥さんを見習えってんだ。
 でも、これで昨夜の襲撃がモランくん絡みの線は消えたかな。
 だって長男長女がいて、それぞれがすでに伴侶を得ており、子も複数いるという。こと跡取りには困っておらず、ビスコ家はとっても安泰だもの。
 まぁ、ジジイらが親族として名乗りでるかどうかは、派遣されてくる鑑定士の結果を待ってからでも遅くはないし、その辺のことはおいおい考えることにして、とりあえずわたしは彼らのもとをお暇した。

 廊下を歩いていると、背後からトトトと控えめな足音が追ってくる。
 立ち止まってふり返れば老執事のモルトさん。その表情から何やら相談したいことがあることを察したわたしは、彼をともない最寄りの空き部屋へ。
 表を鬼メイドのアルバに見張らせての密談。
 そこで「じつはたいへん申し上げにくいのですが」とモルトさんが語り出したのは、ビスコ家の裏事情。
 夫妻は老いてなお二人そろってアルチャージルへとバカンスに出かけるぐらいに仲がいい。息子と娘との家族仲も良好。
 だが、ここに他人が絡んでくると少々話がややこしくなる。
 その他人というのが、息子の嫁と娘の旦那、およびその親族。
 ビスコ家の次期当主はほぼほぼ長男で決まっている。これはよほどのことがないと覆らない。が、問題はその次。ふつうならば長男の息子が後継筆頭となる。しかしこの座を虎視眈々と狙っているのが長女の旦那サイド。「なんとしても自分の子を」と考え、密かに、だけれどもわりと露骨に周囲に働きかけているんだとか。
 こうなると黙っていられないのが長男の嫁サイド。貴族の当主とそれ以下の間では、立場に雲泥の差が生じる。その座を奪われることは、転落を意味している。
 我が子にそんな苦渋を舐めさせるわけにはいかないと母は奮起。
 ここに長男の嫁と長女の旦那による抗争が勃発。
 知らぬはビスコ家直系の者たちばかりなり。
 そこに新たな孫モランが登場! 当人に参入する気がなくとも、その優秀さ、祖父母らのお気に入り度合いなどによってはあるいは……。
 なんて勝手に危惧した相手が何かを仕掛けてくるかもと、老執事はとっても心配していた。

「えっ、そんなに激しいことになってるの?」

 わたしがおどろくと、「当人たちよりも、外野の親族らの一部がすっかり欲に目がくらんでおり、目に余る行動をとることもしばしばでして」と老執事、すっかり弱り顔。

「いっそのことシビニングさんに全部、ぶちまけたら? あのじいさんなら全員ぶん殴って即解決しそうな気がするんだけど」
「そうしたいのは山々なのですが、主人の気性を考えますと、最悪、各々が一家離散なんてことにもなりかねません。そうなればツラい想いをするのはお子さま方でして」
「あー、いがみ合っているのは大人たちばかりで、当の子どもたちは何も知らないわけかぁ。まぁ、子どもたちを巻き込んでいない点に関してだけは、唯一褒められるね」
「……まったくもって、お恥ずかしいかぎりです」

 額の汗をハンカチで拭きながら、ペコペコと頭を下げる老執事。
 ビスコ家を巡る裏事情はよくわかった。
 だから今後はそれとなくモランくんの身辺に気をつけてあげてと、老執事は言いたかったのであろうが、ちょっとばかり遅かった。
 すでに単なる脅しどころか、いきなり命を取りにきたよ。
 敵勢の情報入手速度と行動がとにかく早い。おそらく近くに内通者がいるか、あるいはずっとシビニング、カーラ夫妻が見張られていたか。
 うーむ、前言撤回! こりゃあ昨夜の襲撃に関してはモランくんの線で決まりだね。
 外野の一部が完全に暴走しちゃってるよ。おそらくモランくんを片づけて味をしめたら、今後はお互いの子らにも直接、魔の手を伸ばすかもしれない。
 そうなると頑固ジジイはともかく、カーラさんがかなしむよねえ。ただでさえ線が細いのに、それこそペッキリ折れてそのまま昇天しちゃうよ。
 そして巡り巡ってモランくんやリリアちゃんやマロンちゃんも心を痛めると。
 お姉ちゃんとしては、そいつだけは断じて容認できん!
 というわけで、次回から「お貴族さまお家騒動編」がスタートするぜ。


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