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241 逆襲の黄
しおりを挟む「唯我独尊、ゆいがどくそん。このかんちがいぼっちやろー」
「十人十色、じゅうにんといろ。だからってとくべつとかじゃないからなー」
「共存共栄、きょうぞんきょうえい。じぶんだけでいきてるとかおもうなよー」
「滅私奉公、めっしぼうこう。それがしゃかいのしゅくずー」
「反面教師、はんめんきょうし。おまえもなー」
ただいまリスターナ主都内において、小型の黄色いオッサンが大量発生中!
四字熟語っぽいのに余計なひと言を付け足した、ナゾのフレーズを連呼。モロ出しにてあちこちに出没しては、キャッキャッと駆け回るので、主都大混乱。
「疑心暗鬼、ぎしんあんき。しょうじきものがバカをみるー」
「呉越同舟、ごえつどうしゅう。そしてみなしずむー」
「阿鼻叫喚、あびきょうかん。そこにあいはあるのかー」
「泰然自若、たいぜんじじゃく。いつまでもぼんやりしてんじゃねー」
「和気藹々、わきあいあい。うらではかげぐちぼっこぼこー」
住人やカネコらをも巻き込み、警邏隊や軍の隊員らと鬼ごっこをくり広げている小型の黄色いオッサンで、街はごった返していた。
帰国直後にこの光景を目の当たりしたわたしたちは、しばし呆然。
「どうしてこんなことに……」
乱痴気騒ぎを前にして、わたしはつぶやかずにはいられない。
「えらく縮んでいますけど、あの黄色い姿にちんぷんかんぷん具合は、たしかにあのスーラの変異体ですね」とはルーシーさん。
「あいかわらず丸だしですが、サイズがカラダにあわせてかわいくなっています」
局部を見つめて、冷静な分析をする鬼メイドのアルバ。
わたしたちはとりあえず事情をきくべく、その辺にて鬼ごっこに参加していたアルバのお母さんのエタンセルさんに声をかけた。
「あら、みんな、おかえりなさい。えっ、この状況ですか? じつは……」
さる夜更け過ぎ、主都内を巡回していたのは警邏隊に所属するエタンセルさんと部下たち。
治安維持は日々のたゆまぬ努力の積み重ねこそが大切。
どんなに小さな悪の芽も見逃さぬとの意気込みにて職務遂行中。
街中にて黄色い不審人物を発見!
声をかけたら「一期一会、いちごいちえ。であいはきせきさー」とわめきながら、いきなり抱きつこうとしたもので、つい抜刀して一刀両断。
すると黄色いオッサンが二つにポンっと分かれた。
若干縮んだ感のある黄色いオッサン。
あまりのことに驚いていたら、その隙に各々がちがう方向へと走り出し、まんまと闇の中へと紛れて消えてしまったという。
じつはこれと似たようなケースが多発していたことがのちに発覚。
ケースその一。
将軍夫人であるユーリスさん。彼女が自宅のお庭で洗濯物を干して居たら、敷地内にてぼんやりと立っていた見知らぬ黄色いオッサンを見かける。「どなた?」と声をかければ、「出処進退、しゅっしょしんたい。いいひとからさきにぬけていくー」と言いながら、丸出しでずんずん向かってくるもので、たまらずユーリスさんが「きゃあ」と悲鳴をあげた。
愛妻の悲鳴を聞きつけて、二階の窓から躍り出たのは夫のゴードン将軍。愛用の巨剣の横面にて不埒者を問答無用でズバンと天誅。
すると黄色いオッサンが三つに分裂して、わきゃわきゃいいながらどこぞに逃げていってしまったという。
ケースその二。
とある娘さんが鼻歌まじりにてご機嫌でお風呂に入っていたら、なにやら窓の方から視線を感じた。
てっきり、またスケベなカネコがのぞいているのかと思って見てみれば、そこにいたのは黄色いオッサン。「栄枯盛衰、えいこせいすい。ぴちぴちぎゃるもいずれしわしわー」
乙女の悲鳴に、ご近所の男衆が駆けつけ「ふてえやろうだ」と、かこんでボコボコ。
すると大人から子どもサイズにて、六つに分裂した黄色いオッサン。「ケケケ」と不気味な笑い声をあげながら、散り散りに逃げていったという。
ケースその三。
共働きのご家庭にて、夕暮れ時のこと。
なかなか帰ってこない両親を待ちわびていた女の子。家の前で一人、地面に絵をかいて遊んでいたら、いつのまにやら自分を見下ろしている黄色いオッサンがいた。
「いっしょにあそぶ?」と声をかけるも黄色いオッサンは無言。だったらと「コレ、食べる?」と幼女が差し出したのは一枚のクッキー。本日のオヤツの残りをとっておいたモノ。
黄色いオッサンはこれを受け取り、ごっくん丸呑み。そして「天真爛漫、てんしんらんまん。いっぱいたべておおきくなれよー」と言い残し、いずこかへと消えていったという。
と、まぁ、このようなケースが主都内に続発し、報告書が山と積まれることになる。
実害があるようで、ないようで、やっぱりあるのか? 首をかしげつつ、とりあえず取り締まるべきであろうと上が決めた時には、すでに手遅れ。
街はご覧のありさまとなっていた。
「捕まえても、捕まえても、キリがないんです。ようやく捕まえて閉じ込めても、いつの間にか、見張りの目を盗んで逃げ出してるし。かといってヘタに刺激をしたら余計に増えるし」
タメ息まじりにぼやくエタンセルさん。警邏隊の隊員らは対応に追われて、ろくすっぽ睡眠や食事をとる暇もないほど大忙し。「それじゃあ、自分は職務に戻りますから」とふたたび鬼ごっこへと帰っていった。
「慇懃無礼、いんぎんぶれい。どげざはさいきょうなりー」
「切磋琢磨、せっさたくま。ものになるのはかたっぽだけー」
「満身創痍、まんしんそうい。けがあぴーるちょううぜー」
「捲土重来、けんどじゅうらい。いうだけはただー」
「厚顔無恥、こうがんむち。よのなかいったもんがちー」
いつの間にやら、わたしたちの周囲にて小さな黄色いオッサンがぐるぐる、元気よく駆けている。
背丈は子ども、顔と中身がオッサン。その組み合わせが絶妙にて、こちらの琴線を刺激してくる。もちろん悪い意味で。
「なぜに四字熟語? あと地味にイラっとくる」
おもわずブン殴りたい衝動にかられそうになるも、そんなわたしの腕を抑えたのは小さなお人形さんの手。
「いけません、リンネさま。ここはガマンのしどころです」
ルーシーに諭され、ぐぬぬとわたしはこらえる。
一度、深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、命じる。
「しようがない。ここはわたしたちも鬼ごっこに参加しよう。まずは一匹残らず捕まえる。処置に関しては、あとで考えよう」
かくして手の空いているリンネ組の面々が加わり、リスターナの主都を舞台に、おそらくノットガルド史上初にして最大規模の鬼ごっこ大会が幕を開けたのである。
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