265 / 298
265 お茶会問答
しおりを挟む質問その一。どうしてわざわざわたしをお茶に誘ったの?
答え。リンネという女勇者に興味があったから。
質問その二。もしかして溢れんばかりの知性と美貌にクラクラして、異性として意識しちゃった?
答え。ちがう。たんにそのチカラ、生き方、在り様が興味深かったから。
質問その三。それはどういう意味?
答え。聖騎士を退けるほどのチカラを持ちながら、増長も暴走もせず、ふつうに暮らしている。異物が日常に埋没する。それはとても奇異なこと。じつに不可解であり、愉快でもあり、憐れでもあり、滑稽でもある。
質問その四。……ふーん。ところでなぜ貴方たちは、世界に死と混乱を招くようなことを繰り返すのか?
答え。すべては女神イースクロアの御心のままに。
質問その五。女神イースクロアの真意とは?
答え。世界を浄化し、歪みを正すこと。
質問その六。浄化?
答え。不浄なるものを破壊し、いったんノットガルドを更地にしてから、新たに作り直すこと。
質問その七。歪み?
答え。無軌道な発展の末に世界はおかしくなった。このままではノットガルドに未来はない。ゆえに世界をあるべき元の流れに戻す。
質問その八。女神の御心と破壊活動には、どのような関係が?
答え。死は解放。解き放たれた魂は天へと還り、肉体は地へと還り、内包されていた魔力と生命力はノットガルドに還る。多くの死は世界をより濃密な状態へと押し上げる。
質問その九。押し上げることが、浄化と歪みの矯正?
答え。ちがう。世界の状態を一時的にだが押し上げることで、ある条件が満たされる。
質問その十。ある条件とは?
答え。神が降臨するための条件のこと。遥か高みより、崇高なる存在が降りてくるのには、下界はあまりにも粗末すぎる。貴賓を迎えるには、それ相応の準備が必要になるのと同じこと。
質問その十一。神とは、女神イースクロア?
答え。ちがう。ノットガルド最古の神である。
質問その十二。ひょっとして前神である女神フォークロアだったりするの?
答え。ちがう。降臨なされるのはラーダクロアである。
質問その十三。誰だソレ?
答え。…………。
こちらの問いかけに、ペラペラと答え続けていたゼニス。
あんまりにもスラスラ答えるものだから、せっかくグリューネが用意してくれたお茶を飲むヒマもありゃしない。
なのに十三番目の話題になったとたんに、饒舌だったゼニスが急に黙りこみ、彼は目を閉じて何ごとかを思案し始める。
その隙にカップへとすばやく手をのばし、わたしはゴクリとひと口。
お茶はすっかり冷めていた。しかもちょっと渋味が舌に残る。香りはそこそこ。茶葉は上等らしいのだが淹れる者の腕がいまいち。「ふふん、勝った。お茶に関してはうちの鬼メイドの圧勝だね」とわたしはひとりほくそ笑む。
考え中のゼニスを尻目に、わたしとルーシーはヒソヒソ内緒話。
「ヤバイぞ、ルーシー。世界の浄化とか神の降臨とか、中二病全開だよ。こいつら完全にイッちまってるよ」
「みたいですね。性質の悪いカルト教団の終末思想丸出しです。ですが彼の話を聞いているうちに、おぼろげながらも女神が直接こちらに手を出せない理由がわかったような気がします」
高い山に登れば登るほどに空気が薄くなって、苦しくなり、動けなくなる。
深い海の底に住む生き物は、うっかり水深の浅いところに浮上したらえらいことになる。
おそらく神にとっては下界がコレに相当するのだろう。
高次元生命体は、卓越した存在であるがゆえに、低次元下にての活動がままならない。
だから自分では手を下さずに、手駒を操って、活動条件を整えていた。
三千人の勇者召喚もその一環。勇者らは生きて世に混乱をもたらし、死して世界の糧となる。女神の魂を削って造られたギフトもまた肉体に内包されていた魔力らと共に、ノットガルドへと還ることで、計画の一翼を担う。
ルーシーの話に、わたしもウンウン頷いて同意。
そうとわかれば話は簡単!
聖騎士どもをやっつけて、ラーダなんちゃらとかいう神の降臨を阻止しちゃえば、当面の間は安泰。なにせ女神さまはこっちにちょっかいを出せないからね。
またぞろ新しい駒を用意するかもしれないけれども、それはその都度モグラ叩きの要領にてポコポコ潰していけばいい。
というわけで早速、と行動を起こそうとしたら、そのタイミングでゼニスが目を開けた。
ゼニスの赤い瞳が静かにこちらを見つめてくる。
澄んでおり、とってもキレイ。一切の淀みがなくわずかな迷いも浮かんではいない。その点は公園ではしゃぐ子どもたちと同じ。なのにゼニスのそれは、向けられたこちらの心をどうにもざわつかせる。
「ふむ。やはりいい機会だからキミたちにも聞かせてあげよう。この世界のことや、かつて起こった悲劇について。このことを知るのはノットガルドでもごく限られた者だけだ。おそらくは十指にも満たないだろう」とゼニスは言った。
世界でもほんの数名しか知るものがいない秘密。
アカシックレコードの非公開領域にて、厳重に秘匿されてある情報。
神々にまつわる記録。
ルーシーがピクリと肩をふるわす。
わたしもテーブルの下にて、ゼニスの股間に向けていた左人差し指式マグナムの照準をそっとはずした。
ぶっ放すのは話を聞いたあとからでも遅くはない。
「少し長い話になるから、先にお茶のおかわりを用意しておこうか」
ゼニスが手をパンパン鳴らすと、すぐにグリューネが姿をみせた。
お茶会が始まってから、ずっと給仕役に徹し殊勝な態度を見せている希代の悪女。
そんな彼女にわたしは尊大ぶった物言いにて「これこれ、せっかくの茶葉が泣いておるよ。もう少しお湯の温度と淹り時間に気をつけてくれたまえ」とイヤミを言ってやったら、射殺さんばかりにめちゃくちゃにらまれた。
6
あなたにおすすめの小説
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる