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027 冒険、どんぐり山
しおりを挟むネコの目線と人の目線とでは、当然ながら観え方がちがう。
人間の姿のときには、とくに面白味がない風景だとおもっていたけれども、あらためて世界の広さや美しさを知った和香は「ほへぇー」と景色に感動する。
それを横目に、サンとパウロは天狗岩の鼻先に立ち、北東の方角をじーっとにらんでいた。巻物によれば、秘宝が隠されている場所へと誘う第二のヒントがその方角にあるというのだが……
「ウユ~ンンン? (おかしいわね、滝なんてどこにもないわよ)」
「キュ~ン、ウユンウユン。(というか、どんぐり山に滝なんてあったか)」
サンとパウロは困惑している。
第二の目印となるのは『光る滝』というモノ。
けれどもパウロが言ったように、どんぐり山の周辺には滝と呼べるような場所はない。
ということは巻物に記されているのはそのままの意味ではなくて、なんらかの比喩もしくは隠語ということになる。
額をつき合わせては、ウンウンうなっているサンたちに和香も加わって考える。
「にゃんにゃにゃなぁ~。(光る滝か。光るってのはたぶん陽射しが反射していることだよねえ)」
だが、ここから北東の方角にはそれらしきものがない。
もしも本当に光る滝があったら、とっくに観光スポットになっているはず。
でもそんな話は和香もとんと耳にしたことがなかった。
(ということは、おそらくは季節や時間などが関係しているのではなかろうか?)
正体が人間である和香は、すぐにそのことを考えつくも、山育ちのサンとパウロはそうはいかない。
かといって二頭が思いつくまでのんびり待っている余裕はない。
なにせ自分たちは追われる身なのだ。こんな目立つところで棒立ちをしていたら、じきに発見されてしまうだろう。
だから和香はサンたちにバレないように、こっそり自分の影に手を突っ込む。
取り出したのはリュックサックの中にあったコンパクトミラーである。仲良しのスズちゃんとお揃いで買った物。百均の品だが、花柄が可愛く和香はけっこう気に入っている。
「なぁなぁなぁ。(ちょっとコレを使ってみて)」
差し出された見慣れぬ品をいぶかしむ二頭。
鏡の中に映る自分たちの姿にシャーッと驚き興奮するも、和香はそれをどうにかなだめ、使い方を説明し、さっそく実戦する。
お陽さまの光を鏡で反射、北東の方角へと向け探ったところ――
キラッ、チカッ、キラッ、チカッ。
「「「あっ」」」
三頭はそろって声をあげた。
彼方の斜面にて光を返してくる場所がある。
おそらくだが地理的に、よく晴れた日などに陽光を受けたら、それこそ滝のように見えるのではなかろうか。
他にそれらしい場所はない。
三頭はうなづき合うと、すぐに天狗岩を降りて第二のヒントである『光る滝』へと向かった。
◇
森を抜け、辿りついた斜面は岩肌。
ぱっと見にはゴツゴツしているだけ、でもよくよく見てみたら黒い石が縦に並ぶようにして点在している。
黒曜石だ。ガラス質の火山岩で先史時代には石器などに使用されていた。
岩肌より露出した部位が風化したのであろう、表面がつるりとしており、それが光を反射しては、遠目には『光る滝』のように見えていたのだ。
見上げた先、黒い石の列の中に紛れるかのようにしてソレはあった。
小さな洞穴(ほらあな)。
大きさはタヌキならばどうにか入れる程度しかない。
これはよくよく目を凝らし、地形を観察せねば気づけないだろう。
天然のトリックアート。
ゆえにこれまで誰にも発見されなかったとおもわれる。
試しにパウロが穴の奥を探ってみたところ……
「ウユユーン! ウユーン! (風だ。奥まで続いているぞ。どうやらこれが第三のヒントのようだ)」
第三のヒントは『常夜の道』なるもの。
これを臆せず進めば、また一歩、タヌキの宝箱へと近づける。
パウロが先頭に立ち、次にサンが、和香はへっぴり腰にておずおずこれに続く。
夜行性のタヌキは暗いところでもへっちゃら。
それはネコも同じ。
なのだけれども、だからとて怖くないわけではない。
和香は内心、ひょえぇぇぇ。
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