剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?五本目っ!黄金のランプと毒の華。

月芝

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004 石切り場

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 ポポの里の中を流れる小川。その流れを少しばかりさかのぼった森の奥に、デデンと四角い巨岩が鎮座している場所がある。
 ここが石切り場。
 どういう理屈でこんな形をした岩が、そこに転がっているのかはナゾ。
 でも岩の性質が加工するのにちょうどいいとわかってからは、何代にも渡ってチビチビ削り出すように。
 おかげでいまでは巨岩の周辺や内部はやたらとカクカクした地形となり、ふだんは子どもたちの絶好の遊び場所になっている。
 彫刻師のジールンさんが神像を作っては「気に入らねえ!」と壊すをくり返す結果、里に備蓄されてあった材料が足りなくなったので「ちょっととってきてくれ」と神父さまより頼まれた。
 ふだんは、わたしが勇者のつるぎミヤビに乗って飛び回っていたら、すぐに「天剣(アマノツルギ)さまになんということを。この罰当たり者めがっ!」と目くじらを立てるくせに、ちゃっかり魔王のつるぎアンの転移能力や大地のつるぎツツミのチカラをあてにするんだ……。
 あとジールンさん。いくら作品のデキが気に入らないからって、仮にも神さまの形をした像をボコボコ叩き壊すのはどうかと思うの。わたしとしては、そっちの方がよっぽど罰当たりな気がしてしようがない。

  ◇

「おねえちゃんとここにくるのもひさしぶりだねえ」

 隣で石切り場を見上げているのは、母アヤメ似のサラサラ金髪を持つ愛妹のカノンである。カノンはわたしとちがって美形の両親からのいいとこどりの美幼女。
 あぁ、近い将来、世界中が震撼することになるであろう。
 究極超絶空前絶後の美女の登場に。
 そして辞典の「美」とか「かわいい」という項目をひくと、「カノンのこと」と記載されるようになるのだ。
 そんなカノンだが、わたしが神父さまのお使いで石切り場に行くと告げたら、「自分もついていく」と言うから連れてきた。ここのところ姉は忙しく各地を飛び回っており、あんまりかまってあげられなかったから、きっと寂しかったのであろう。愛い愛い。
 それにしても懐かしい。わたしも感慨深げに石切り場を見上げる。
 一時期、この石切り場はカノンのお気に入りの場所であった。「カクカクしているのが、ちょっとお城っぽい」との理由にて、仲のいい女友だちを誘っては、ここでごっこ遊びに興じていたものである。
 それを見て、当時のわたしはしみじみ思ったものである。「カノンは女優の道でも成功するのにちがいあるまい」と。
 ふっ、姉バカだと笑わば笑え。
 だが事実なのだからしようがない。

 なんぞとひとしきり回想と妄想をたんのうしてから、わたしが帯革よりスチャと取り出したのは金づち。これは第三の天剣・大地のつるぎツツミが変じたもの。

「ツツミ、お願いね」
「おまかせあれ、母じゃ」

 手の中にある金づちに声をかけてから、最寄りの岩壁をコツン。
 とたんに音の波紋が拡散されて、大地のつるぎツツミの空間把握能力が発動。手のひらを通じていろんな情報が伝わってくる。
 適当に削りだして崩落とか起きたらたいへんだからね。まずは事前にしっかり下調べ。
 するとすぐに彫刻に適した石の在り処が判明するも、それ以外にも奇妙な情報がもたらされた。

「ありゃりゃ、この奥から穴がどこぞに繋がっているみたい」

 わたしの言葉にカノンが首をコテンとかしげる。

「ここならすみからすみまでしってるけど、そんな穴なんてあったかなぁ」
「お姉ちゃんも記憶にないよ。どれ」

 ちょいと好奇心がうづいたので、調べてみようと思い立つ。
 石切り場の奥へと繋がる通路へ。あとからトコトコとカノンも続く。
 通路といったところで、幾分もない。
 陽の光がギリギリ届くかどうかといった程度の奥行しかない。
 その突き当りの床が、おかしな反応のあった箇所。
 試しにツツミでごつんと叩いてみたら、床がボコっと抜け落ちた。
 姿をあらわしたのは空洞。
 ひょいと頭を突っ込んでみるも、真っ暗で何も見えない。そこで帯革より白銀のスコップをとり出す。これは第一の天剣・勇者のつるぎミヤビが変じたもの。

「ミヤビ」
「かしこまりましたわ、チヨコ母さま」

 すかさずピカッと光り出した白銀のスコップ。自身が明かりとなって暗い空洞内部を照らす。
 そしてあらわとなった光景に、わたしは「えっ!」

 精緻に組まれた石にて構成された地下通路。緩やかな傾斜を描きながら地の底へと向かい、真っ直ぐにのびている。
 明らかなる人工物。ぱっと見、かなりの年代を感じる風格がある。
 フム。これはいわゆる古代遺跡の類であろうか?
 しかも未発掘にて荒らされた形跡もなし。
 ひょっとしたらお宝ザックザクにて、ついでに四角い巨岩のナゾが判明しちゃうかも?
 うーむ、夢が広がる広がる。
 わたしがそんなことをニヤニヤ考えていたら、カノンが言った。

「これはもう、いくっきゃないよ。たんけんだよ、おねえちゃん!」

 白い肌をやや紅潮させつつ、碧眼にてこちらを見つめてくるカノン。そのまなざしに宿っていたのは不退転の決意。
 愛妹はやる気に満ち充ちている。そしてこれから始まるであろう大冒険への期待で鼻の穴がぷくぷくしている。
 ならば、姉としてはその期待に答えるしかなかろう。
 さぁ、冒険の時間だ。


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