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第3話 唐揚げと偶然
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「角の方がまだ……まざってないぞ……」
日曜日の朝。俺はバイト先のお弁当屋さんで、唐揚げの仕込みをしていた。
1年近く働いているので、もう慣れているのだけど、まだ昨日の事が頭にあるせいか仕事に集中ができていなかった。そのせいで、社員の中山さんに注意される。
中山さんは、体の大きな短髪の男性。普段から優しいのだが、犬で例えるとセントバーナードの様な怒らせるといけないオーラを出している。
「すみません……」
そういうと、口角を少し上げ別の作業を始める。
すると調理場のほうから、小さい女性が来る。
「長坂君~今日もイケメンだねぇ!」
「ああ、どうも……」
この人は新宅さん。正確には最近結婚して中山になったのだけど、お店ではいまだに『新宅さん』と呼ばれている23歳のかわいい新妻。
「あれれ? なんか元気無いんじゃないの?」
「いえ、別にそんなことは……」
「さてはフラれたかな?」
そういわれ、ドキッとする。
別にフラれたわけじゃ無いけど、似たようなものということもあり動揺が顔に出てしまった様だった。
「あたりかぁ~でも長坂くんはモテそうなんだけどねぇー」
「新宅さんは、中山さんと付き合ったのって店でしたよね?」
「そうだよ?」
「どうやって付き合ったんですか?」
そういうと、彼女はニヤニヤする。
「お店で見つける気かな? 清水さんとかどう?」
「いやいや清水さん親世代じゃないですか!」
「たしか、同じくらいの歳の娘がいたんじゃないかなぁ?」
なるほど、そういうことか……清水さんは若い時それなりに美人だったかもしれない雰囲気はあるけどそういう話じゃない。
「それでも、紹介してくれというのも変な話ですよ!」
「まぁねー」
何となく、聞いていたことをはぐらかされた気がした。噂は聞いていたけど、新宅さんは昔、中山さんと店長にアプローチされていたらしい。さわやかで好青年で男前の店長と、寡黙で大きい中山さんと争い、選ばれたのは中山さんだった。
俺なら間違いなく店長選ぶんだけどなぁ……と、なんとなく不思議に思っていた。
仕込みが終わると、ピークの時間になる。それまでの時間は準備しやすいように、分けられるものを分けておくのがピークまでの作業だった。
お弁当屋のピークは忙しすぎて、2時過ぎ位までほとんど流れ作業で作る。
そのせいもあり、体感時間がすぐに過ぎるからピークも別に嫌いでは無かった。
「そろそろ落ち着いてきたなぁ。長坂、休憩まわしていこうか!」
店長がそういうと、俺は昼ごはんの準備を始める。お昼ごはんは弁当容器になんでも詰めていいというお得なルールだった。
「今日は、これかなぁ……」
「お、長坂は唐揚げかぁ」
振り向くと店長もお弁当容器を持って立っている。
「俺も唐揚げにするか……おまえの分も一緒揚げてやろう! 休憩室でまってろ」
タイミングが合うときはいつも一緒に作ってくれる。こういった部分が若くして店長になった理由なのだと思う。しばらくして、二人分の唐揚げ弁当をもって休憩室に入ってきた。
「今日は村田スペシャル唐揚げ弁当だぞ!」
「店長。名前長いっす……」
名前を入れたスペシャルというだけあって普段より弁当は豪華だった。店長はスニーカーが好きという事もあり、仲が良いい。そのせいもあり、お店の中ではよく話したり休憩が一緒になったりしていた。
「そうだ、長坂。おまえそろそろ新人教育してみるか?」
「え? 新人入ってくるんですか?」
「ああ、今日の夕方からなんだけどな、一通りできるし大丈夫だろ?」
「まぁ……多分」
いつも通りの事をしていても、変なミスをしてしまいそうなだけに新しい事をするのはいいなと思った。
「まぁ、悩みがあるときは仕事に打ち込むのが一番だな!」
その言葉を聞いて、もしかしたら店長もぼんやりしがちな今日の事を考えて俺に振ったのかもしれないと思った。
「店長は、彼女とか作らないんすか?」
「痛いこと言うなぁ……なるべくかわいい子をバイトで入れるようにしてるんだけどな」
「いや、それはクソ野郎ですね」
「おいおい、ひどい言い方だなぁ。でもそのほうがお前もモチベーション上がるだろ?」
「ま……まぁ、そうですね」
そりゃ、かわいい子がいた方がモチベーションには繋がるだろう。だが、店長の嫁候補となれば話は別だ。
「でもなぁ……今回はどちらかというと喜ぶのは長坂かな?」
「何でです?」
「16歳なんだよ、お前の1つ下になるな」
「そうなんですか?」
正直新人で年下が来るのはありがたい。業務を教えるにしても年上だといろいろ気を使ってしまう部分もあり、あまり強く言えないと思っていた。
「まぁ、そういうわけだからよろしく頼むわ」
「はい……」
「彼女、彼氏いないといいな」
「店長。うるさいっす」
休憩を終え、夜の仕込みを始める。この時間にパートのおばちゃんが夜のピーク時まで来ることになっている。中山夫妻も休憩を終えたあたりで、一息着くと従業員の入口から甲高い女の子の声が響いてきた。
「おはようございまーす!」
店長の言っていた新人の子が来たのだろう。だけど、挨拶した声がどこかで聞いたことのあるような気がする。しばらくして、店長が俺を呼びに来た。
「長坂、ちょっといいか?」
「あ、はい。昼間言ってた新人の子ですか?」
「そうだ、紹介するから一旦休憩室に来てくれ!」
途中だった仕込みの作業を、新宅さんに引き継ぐ。それから俺は手を洗いマスクをとってから休憩室に向かう。
店長と話す女の子の声がかすかに聞こえ、やはり何処かで聞いた声だと思った。
綾じゃないだろうし……誰だったかな……そう思ってドアを開けると、女の子と目が合う。
その瞬間、女の子が声を上げた。
「あーっ! 昨日のクズ男!」
「ちょ、暴力女……なんでお前なんだよ!」
その声の勢いに店長は俺たちを見回す。
「なんだ、おまえら知り合いだったのか! それはそれで都合がいいな」
店長はそういって頷いた。
「いえ、知りません」
「自分も知らないです……」
「なんだなんだ? 仲悪いのか? まあ、あくまで知らないっていうなら紹介するけど、こちら日比野千佳さん。でこっちが先輩の長坂だ」
店長がそういってニッコリと笑い紹介する。俺たちは、空気を読み目を合わさず挨拶を交わした。
日曜日の朝。俺はバイト先のお弁当屋さんで、唐揚げの仕込みをしていた。
1年近く働いているので、もう慣れているのだけど、まだ昨日の事が頭にあるせいか仕事に集中ができていなかった。そのせいで、社員の中山さんに注意される。
中山さんは、体の大きな短髪の男性。普段から優しいのだが、犬で例えるとセントバーナードの様な怒らせるといけないオーラを出している。
「すみません……」
そういうと、口角を少し上げ別の作業を始める。
すると調理場のほうから、小さい女性が来る。
「長坂君~今日もイケメンだねぇ!」
「ああ、どうも……」
この人は新宅さん。正確には最近結婚して中山になったのだけど、お店ではいまだに『新宅さん』と呼ばれている23歳のかわいい新妻。
「あれれ? なんか元気無いんじゃないの?」
「いえ、別にそんなことは……」
「さてはフラれたかな?」
そういわれ、ドキッとする。
別にフラれたわけじゃ無いけど、似たようなものということもあり動揺が顔に出てしまった様だった。
「あたりかぁ~でも長坂くんはモテそうなんだけどねぇー」
「新宅さんは、中山さんと付き合ったのって店でしたよね?」
「そうだよ?」
「どうやって付き合ったんですか?」
そういうと、彼女はニヤニヤする。
「お店で見つける気かな? 清水さんとかどう?」
「いやいや清水さん親世代じゃないですか!」
「たしか、同じくらいの歳の娘がいたんじゃないかなぁ?」
なるほど、そういうことか……清水さんは若い時それなりに美人だったかもしれない雰囲気はあるけどそういう話じゃない。
「それでも、紹介してくれというのも変な話ですよ!」
「まぁねー」
何となく、聞いていたことをはぐらかされた気がした。噂は聞いていたけど、新宅さんは昔、中山さんと店長にアプローチされていたらしい。さわやかで好青年で男前の店長と、寡黙で大きい中山さんと争い、選ばれたのは中山さんだった。
俺なら間違いなく店長選ぶんだけどなぁ……と、なんとなく不思議に思っていた。
仕込みが終わると、ピークの時間になる。それまでの時間は準備しやすいように、分けられるものを分けておくのがピークまでの作業だった。
お弁当屋のピークは忙しすぎて、2時過ぎ位までほとんど流れ作業で作る。
そのせいもあり、体感時間がすぐに過ぎるからピークも別に嫌いでは無かった。
「そろそろ落ち着いてきたなぁ。長坂、休憩まわしていこうか!」
店長がそういうと、俺は昼ごはんの準備を始める。お昼ごはんは弁当容器になんでも詰めていいというお得なルールだった。
「今日は、これかなぁ……」
「お、長坂は唐揚げかぁ」
振り向くと店長もお弁当容器を持って立っている。
「俺も唐揚げにするか……おまえの分も一緒揚げてやろう! 休憩室でまってろ」
タイミングが合うときはいつも一緒に作ってくれる。こういった部分が若くして店長になった理由なのだと思う。しばらくして、二人分の唐揚げ弁当をもって休憩室に入ってきた。
「今日は村田スペシャル唐揚げ弁当だぞ!」
「店長。名前長いっす……」
名前を入れたスペシャルというだけあって普段より弁当は豪華だった。店長はスニーカーが好きという事もあり、仲が良いい。そのせいもあり、お店の中ではよく話したり休憩が一緒になったりしていた。
「そうだ、長坂。おまえそろそろ新人教育してみるか?」
「え? 新人入ってくるんですか?」
「ああ、今日の夕方からなんだけどな、一通りできるし大丈夫だろ?」
「まぁ……多分」
いつも通りの事をしていても、変なミスをしてしまいそうなだけに新しい事をするのはいいなと思った。
「まぁ、悩みがあるときは仕事に打ち込むのが一番だな!」
その言葉を聞いて、もしかしたら店長もぼんやりしがちな今日の事を考えて俺に振ったのかもしれないと思った。
「店長は、彼女とか作らないんすか?」
「痛いこと言うなぁ……なるべくかわいい子をバイトで入れるようにしてるんだけどな」
「いや、それはクソ野郎ですね」
「おいおい、ひどい言い方だなぁ。でもそのほうがお前もモチベーション上がるだろ?」
「ま……まぁ、そうですね」
そりゃ、かわいい子がいた方がモチベーションには繋がるだろう。だが、店長の嫁候補となれば話は別だ。
「でもなぁ……今回はどちらかというと喜ぶのは長坂かな?」
「何でです?」
「16歳なんだよ、お前の1つ下になるな」
「そうなんですか?」
正直新人で年下が来るのはありがたい。業務を教えるにしても年上だといろいろ気を使ってしまう部分もあり、あまり強く言えないと思っていた。
「まぁ、そういうわけだからよろしく頼むわ」
「はい……」
「彼女、彼氏いないといいな」
「店長。うるさいっす」
休憩を終え、夜の仕込みを始める。この時間にパートのおばちゃんが夜のピーク時まで来ることになっている。中山夫妻も休憩を終えたあたりで、一息着くと従業員の入口から甲高い女の子の声が響いてきた。
「おはようございまーす!」
店長の言っていた新人の子が来たのだろう。だけど、挨拶した声がどこかで聞いたことのあるような気がする。しばらくして、店長が俺を呼びに来た。
「長坂、ちょっといいか?」
「あ、はい。昼間言ってた新人の子ですか?」
「そうだ、紹介するから一旦休憩室に来てくれ!」
途中だった仕込みの作業を、新宅さんに引き継ぐ。それから俺は手を洗いマスクをとってから休憩室に向かう。
店長と話す女の子の声がかすかに聞こえ、やはり何処かで聞いた声だと思った。
綾じゃないだろうし……誰だったかな……そう思ってドアを開けると、女の子と目が合う。
その瞬間、女の子が声を上げた。
「あーっ! 昨日のクズ男!」
「ちょ、暴力女……なんでお前なんだよ!」
その声の勢いに店長は俺たちを見回す。
「なんだ、おまえら知り合いだったのか! それはそれで都合がいいな」
店長はそういって頷いた。
「いえ、知りません」
「自分も知らないです……」
「なんだなんだ? 仲悪いのか? まあ、あくまで知らないっていうなら紹介するけど、こちら日比野千佳さん。でこっちが先輩の長坂だ」
店長がそういってニッコリと笑い紹介する。俺たちは、空気を読み目を合わさず挨拶を交わした。
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