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六 斎藤一之章:Survival
敗残兵(三)
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遠くで声がした。
「……斎藤さま! 斎藤さま、目を開けてくなんしょ! ああ……」
驚いた。オレはまだ生きているらしい。
体は、ぴくりとも動かない。あれだけ激しくオレを苛《さいな》んだ痛みも一切、消えた。だから死んだんだとばかり思っていた。
「斎藤さま、斎藤さま! 嫌《やん》だ、応えて……目を覚ましてくなんしょ!」
時尾の声だ。遠く近く、揺らいで聞こえる。
別の声が聞こえた。男の声だった。
「落ち着きぃや。斎藤は、ちゃんと息をしゆう。体じゅう骨が砕けるほど打たれた上、腹には銃弾で風穴を開けられたっちゅうがに、執拗《しわ》い男じゃ」
ぼんやりと記憶がよみがえる。
倒幕派に降伏した後、塩川の謹慎所に送られた。皆は武器を奪われて幽閉されたが、オレはそうもいかなかった。生まれ持った妖刀、環《ワ》断《ダチ》は、オレの身から離れようとしない。
手にも足にも枷《かせ》を付けられて隔離されたのが初日。その格好で座敷牢に放り込まれたのが翌日。会津の山口二郎は新撰組の斎藤一だと知れたのがさらに翌日で、私刑がおこなわれたのはその晩だった。
座敷牢の梁《はり》から下がった金具に手枷を釣られた。覆面の男が全部で十数人。言葉を聞くに、薩摩もいれば長州も土佐もいた。
仲間や親類が新撰組に手傷を負わされたとか殺されたとか、京都で幅を利かせていたのが気に食わなかったとか、花街で女を巡る喧嘩沙汰になったのを忘れていないとか、いろんな恨みをぶつけられた。オレの身に覚えがあろうがなかろうが、関係ないようだった。
ぎしり、と金具の軋《きし》む音がした。
「まずはここから外してやらにゃあならん。こうしてみると、背の高い男じゃ。伊地知さん、一寸《ちっくと》、斎藤の体を支えゆうてくれんがか? 服が汚れてしまうけんど」
「よか。汚れやら気にせん。じゃっどん、ほんなこつ凄《わっぜ》か怪我じゃ。虫の息じゃっど。ああ、板垣さあ、体ごと持ち上ぐっほうが金具ば外しやすかろう」
「そうじゃな。一二の三で抱えるき」
「よし。一二の三っ」
その途端、釣られていた両腕が、重みに任せて落ちた。肩の関節が外れるのがわかった。鈍い痺れが広がって、すぐにまた何も感じなくなる。
床に寝かされたらしい。足に下がり切っていた血が、じわじわと戻ってくる。腹の傷が疼《うず》いた。たぶん痛い。息がうまく継げないのは、痛みのせいだろう。
声が出ない。木刀で殴られ始めた最初は、歯を食い縛って声をこらえていた。いつの間にか声の出し方を忘れた。呻《うめ》くことさえできなくなった。
銃弾が腹の真ん中を突き抜けた。腹から五寸と離れていないところに銃口があった。傷口が熱くて、息ができなかった。私刑の狂乱に酔った連中は笑っていた。
どくどくと血が流れ出た。流れれば流れるほど、体は冷たく重くなった。少しずつ死んでいくのがわかった。木刀で傷口を突かれても、もう痛くなかった。
いつ私刑の連中が座敷牢を去ったのか、覚えていない。
「いきなり銃声が聞こえて、こりゃあおかしいと思うたんじゃ。昼ごろに、兵士らが新撰組の斎藤は左利きじゃっちゅう話をしゆうがが耳に入っちょったしのう」
「板垣さあから知らせば受けて、二人で様子ば見に来てみれば、案の定、蜘蛛《くも》の子ば散らすごつ逃げ出した連中のおった。そんときはもう、斎藤はこげん様子じゃった」
近付いたり遠ざかったりする音の中で、不意に、時尾の息遣いが耳元に触れた。嗚《お》咽《えつ》だった。それを押し込めるように強い語調で、時尾は言った。
「条約違反だとわかっておられるがよ? 会津藩士はあなたがたに従う。その代わり、あなたがたは会津藩士を捕虜として扱う間、決して無用の処罰を加えねえ。自分《わが》の名と藩の誇りに懸けて、署名して約束したではねぇかし」
沈黙が落ちる。敵兵らしき足音がいくつか寄ってきて、それでもまだ沈黙が続く。
馬鹿だなと時尾に告げたかった。約束を守ってもらえるほどの男じゃないから、オレはこんな目に遭った。恨まれているんだ。あんたが想像するよりもずっと深く、強く。
意識がだんだんと、はっきりしてくる。胸の上に時尾の手のひらがある。そこから温かなものが流れ込んでくる。時尾が治癒の術を使っているらしい。
馬鹿だなと、また言いたくなる。こんな大怪我を治すんじゃ、あんたにも負担が掛かっちまう。よせよ。放っておいてくれていいのに。
ようやく沈黙が破られる。板垣の声は沈んでいた。
「まっこと不甲斐ないぜよ。わしらが戦に勝ったがは事実、新選組に恨みを持つ者が多いがも事実。けんど、勝者の驕《おご》りで約束を破るがは、人として本当《ざま》に情けない。下《げ》手《しゅ》人《にん》には必ず処罰を下す。堪忍しとうせ」
「人を疑いたくはねぇけんじょ、疑っつま。あなたがたが指図したのではねぇがよ?」
「誓って良《え》い、わしらは関与しちょらん。信じてもらえんがか?」
「何《な》如《じょ》すればわたしがあなたがたの言葉を信じられるべ? わたしの友達が何人も死んだ。お城では引っ切り無しの砲弾を浴びた。こっだ目に遭わされたら、あなたがたに人の血が流れているとは信じられねえ!」
伊地知の声が応えた。
「戦は戦じゃ。おい達《どん》も必死で戦うて勝たんとならんじゃった。おい達《どん》にも人死には出ちょっど。恨みば抱くとはお互いさまじゃっどん、今回の件だけは、おいも板垣さあも嘘などついちょらん。おいと板垣さあば信じやんせ」
「斎藤さまをいたぶって殺そうとした薩摩と土佐の首《しゅ》魁《かい》が、どの口で、信じろなんて言うがよ!」
「揉み消そうち思えば揉み消せた。初めは闇に葬ろうち思うた。じゃっどん、いつかは露見する。ここで斎藤ば死なせたら、どげんしようもなか禍根がまた生まるっじゃろ。すでに深か恨みもあろうどん、これ以上深うして何になる? じゃっで、すぐ、おはんば呼んだ」
時尾が蒼い環を持つことも知られているんだろう。オレと同じで、隔離されて監視を受けていたのかもしれない。縮地の術を使えば、幽閉なんか無意味なんだ。
それでも自分だけ逃げ出すことは、時尾ならやらない。オレだって、逃げることも抵抗することもしなかった。オレが身勝手を起こせば、ほかの会津藩士がどうなるかわからない。
板垣が声を上げた。
「斎藤の傷口を洗うてやるがが良《え》いろう。湯とフェノールを持ってこさせる。フェノールで傷口の毒を消してやりゃあ、銃創も膿《う》みゃあせん。西洋医学が怪我の治療に優れちゅうがは、わしらが体を以て実証しちゅう」
「んだなし。西洋医学が日本の医学より進んでいることは、会津でも知られている。資金さえあれば外国に学びに行きてぇと望む者も、若ぇ世代には多い。軍制も技術も思想も遅れた藩だと見くびらねぇでくなんしょ」
「会津の男が強情ながは知っちゅうけんど、女も大したもんじゃ。そう睨みなや。斎藤の介抱、女ひとりで難しけりゃあ、人手を貸すぜよ」
「人手はいらねえ。斎藤さまのお体に、あなたがたは指一本、触れんに。もしものことがあれば、わたしは環の力を爆発させる。死んでも狂っても妖に堕ちても、何《な》如《じょ》なっても構わねえ。巻き添えにできるだけみんな巻き添えにして地獄に連れていく」
「それは困るちや。互いに条約は守ろう。わしは斎藤と話をせにゃあならん。目を覚ますがを待っちゅうぜよ」
板垣がまわりの部下にあれこれと指示を飛ばした。足音が走り去る。
目が開かない。音だけは聞こえているのに何もできず、意識はふわふわとして頼りない。自分の体がここにあるとわかるのは、胸の上に時尾の手のひらを感じられるからだ。
下っ端のいなくなった中で、伊地知が、ぽつりと言った。
「官軍は一枚岩ではなか。味方んごつ振る舞いよっても、こいつば出し抜きたか、あいつば打ち負かさんばならんち、腹ん中では思っちょる。こげん様《ざま》では、戦の終わって共通の敵のおらんごつなったら、分解してしまうとじゃなかじゃろか」
「伊地知さん、何を言いゆう?」
「板垣さあも同じごつ感じちょっはずじゃ。官軍、いや、新政府は、薩長土肥の烏合の衆。どげんかせんとならん」
それきり、板垣も伊地知も黙ってしまった。音が止むと、意識に引っ掛かるものがなくなる。オレはそのまま眠りに落ちた。
目覚めは唐突だった。
夢を見ていた気がする。何かに追われて逃げるうち、はっと、まぶたが開いた。体が動いた。
「斎藤さま?」
時尾がオレを見下ろしていた。薄暗い中で、時尾の大きな目が張り詰めている。
血の匂いがした。汗の匂い、埃の匂い、薬の匂いがした。
まばたきをする。指を動かす。胸いっぱいに息を吸い込んでみる。
体じゅうの骨が軋《きし》んで痛んだ。腹に鈍い痺れがある。痛みは生きている証だ。オレは命脈を保ったらしい。
「斎藤さま、わたしがわかるがよ?」
「ああ……ここは座敷牢か?」
「はい。死んづまってもおかしくねぇほど痛め付けられて、何《な》如《じょ》すんべしと思ったけんじょ、目を覚ましてくれてよかった」
時尾は泣き出しそうな顔で笑った。オレはまぶしくて目を逸《そ》らす。時尾に手を借りてどうにか上体を起こすと、目眩《めまい》に襲われた。
「無理はなさらねぇでくなんしょ」
時尾の声が近い。寄り掛かっているんだから当たり前だ。時尾の体は温かかった。部屋は冷たい。オレは寒さのせいで目覚めたのかもしれない。
何を見るでもない目に、覚えのない柄の袷《あわせ》が映っている。上等なもので、擦り切れてもいない。寝ているうちに着替えさせられたらしい。
記憶がよみがえる。オレの体には指一本触れさせないと、時尾は板垣たちに啖《たん》呵《か》を切った。つまり、そういうことだ。時尾が全部やったってことだ。
じわじわと恥ずかしさが込み上げた。目眩が収まったところで、時尾から体を離す。肌寒さを覚えた。
「……世話に、なったみたいだな」
「わたしでねぇと治せねぇ傷だったなし。お役に立てて安心しました」
「や、その、着替えを……体、汚れていただろう、オレ」
余計なことを言ったと気付いたのは、言ってしまった後だった。
時尾は両手で顔を覆って、声にならない声を上げた。嫁入り前の上級武家の女が、男の裸なんか見慣れているはずはない。時尾にとってみれば、とんでもなくはしたない仕事だっただろう。
気まずい。が、どうしようもない。謝るのも、たぶん何か違う。
しばらくして、時尾が肩で息をして手を下ろした。袂《たもと》から布切れを取り出してオレに突き付ける。誠の一文字と段だら模様。時尾が縫った袖章だった。オレも時尾も互いの顔じゃなく、袖章だけ見ていた。
「捨てずにいてくださったなんて、たまげました。術の効果も消えて、何の役にも立たねぇのに」
「オレの手元に残った新撰組の印は、これだけなんだ」
「大事なお印だから、捨てられねかったがよ?」
「ああ」
オレは時尾の手から新撰組の袖章を受け取った。汚れて染みだらけで、あちこちほつれている。
「出過ぎたことをしたのではねぇかと、ずっと気になっていました。新撰組の外の者が勝手に、斎藤さまにとって大事なお印を作《こせ》っつまって」
「もらったときにも言ったはずだが、嬉しかった。この印はオレの誇りだ。それをあんたはわかってくれた」
「だって、新撰組の羽織も旗も、斎藤さまに似合っていました。京都で初めてお目に掛かったときは、鮮やかな浅《あさ》葱《ぎ》色の羽織でした。その次は黒地の羽織、また別のときは白地の羽織。段だら模様は、わたしにとっても忘れられねぇお印だなし」
「荒くれ壬《み》生《ぶ》狼《ろ》の、嫌われ者の印だ」
「わたしは、嫌いなんかではねかったです」
突然、咳払いが聞こえた。座敷牢に下ろされた格子の向こう側、行《あん》灯《どん》が作る影が動く。オレは身構えようとしたが、体が鈍い。時尾がオレを庇《かば》って進み出た。
明かりの中に姿を見せたのは、板垣だった。
「そろそろ邪魔しても良《え》いがか? 斎藤一に話があるき」
「いつからいた?」
「おんしが目覚める一寸《ちっくと》前からじゃ。見張りが付くがは当たり前じゃろう」
「土佐の総大将自らが見張りか?」
「たまたま見回りに来てみりゃあ、当直が居眠りしゆう。何ちゅうて起こしちゃろうかと考えよったら、おんしのほうが起き出した。けんどのう、女と仲良くするがは、せめて牢を出てからにしぃや。目障りじゃ」
「黙れ。てめぇら、こいつに何もしなかっただろうな?」
「ちょっかいを出しちょったら何じゃ?」
「殺す」
板垣はいきなり笑い出した。時尾の細い後ろ姿から殺気が立ち上る。板垣は気にする様子もなかった。太い格子に手を掛けて、座敷牢をのぞき込む。
「おんしら、似た者同士じゃのう。人質は無事に生かしてこそ人質としての価値があるっちゅうがを、おんしらから学んだぜよ。単なる力業では、おんしらを封じ込めることは難しい。こんな格子が何の役に立つろう? けんど、おんしらはそこでおとなしくしちゅう」
時尾が声を上げた。
「条約があんべし。わたしは約束を破らねえ」
「ああ、わしも信用しちゅう。おんしらの目には光がある。戦に負けて国を奪われて明日をも知れんっちゅうがに」
「土地でも武器でも差し出してやんべ。奪いてぇだけ奪えばいい。けんじょも、魂と誇りは決して差し出さねえ。五十年、百年経っても、あなたがたが都合よくすべて忘れっつまっても、わたしたちは屈辱を忘れねえ。わたしたちの怒りは消えねえ」
板垣は首をかしげた。いつしか真剣な目をしている。
「会津はわしらに一切の協力をせんと言うがか? そりゃあ困る。新政府は力を蓄えにゃあならん。日本は、外国と対等にやり合える国にならにゃあならんのじゃ。そのために、会津の武士には力を貸してもらいたい。そして、斎藤一、おんしにも」
「てめぇの配下に就けとでも言うのか?」
「わしでのうても構わん。無論、わしの下に来るなら、それがいちばん良《え》いけんど」
「願い下げだ」
「愛想のない男じゃのう。剣士として、将帥として、間者として、得がたい能力を持っちゅうがに、このまま埋もれるつもりがか? 能力を活かして食っていこうとは思わんがか?」
「てめぇに世話をされる筋合いはない」
「会津藩士の沙汰はまだ確定しちょらんけんど、おそらく開拓じゃ。蝦《え》夷《ぞ》地《ち》になるか陸奥《むつ》になるか、いずれにせよ不毛の雪国に送ることになるろう。斎藤、おんしは行かんでも良《え》い。会津の生まれではないき、理由を付けて配下に呼ぼうっちゅう者は沢山《こじゃんと》おる」
時尾がオレを振り返った。怯《おび》えたような顔だった。
オレは袖章を握った拳で胸を打った。痛みが、ずんと響く。
「誰の指図も受けない。オレは、オレの選んだ道を行く」
「わしらとともに来るつもりはないっちゅうわけか」
「オレは会津を選ぶ」
板垣は不敵に笑った。
「おぉの、馬鹿者《べこのかあ》め。苦労しぃや。まあ、かわいい嫁さんと一緒なら、苦労のし甲斐もあるかもしれんけんど」
「不愉快な言い草だな」
「いちいち目くじらを立てなや。おんしとはいずれまた会うろう。仕事がほしけりゃあ東京に出てきい。こき使うちゃるぜよ」
野心のぎらつく目をして、板垣は去っていった。いつの間にか起きていた見張りが、言い訳をしながら板垣を追い、叱り飛ばされて戻ってくる。
緊張が解けたのか、時尾がへたり込んだ。
「安心しました。斎藤さまが会津を選んでくれて」
「何を今さら」
時尾が頬にえくぼを作った。オレは、息をついて寝転がって目を閉じた。
「斎藤さま、具合《あんべ》はまだおつらいがよ?」
「ああ。起きていられない」
体じゅうがだるくて頭が重かった。それだけじゃなく、胸の奥がよじれるように痛かった。
「……斎藤さま! 斎藤さま、目を開けてくなんしょ! ああ……」
驚いた。オレはまだ生きているらしい。
体は、ぴくりとも動かない。あれだけ激しくオレを苛《さいな》んだ痛みも一切、消えた。だから死んだんだとばかり思っていた。
「斎藤さま、斎藤さま! 嫌《やん》だ、応えて……目を覚ましてくなんしょ!」
時尾の声だ。遠く近く、揺らいで聞こえる。
別の声が聞こえた。男の声だった。
「落ち着きぃや。斎藤は、ちゃんと息をしゆう。体じゅう骨が砕けるほど打たれた上、腹には銃弾で風穴を開けられたっちゅうがに、執拗《しわ》い男じゃ」
ぼんやりと記憶がよみがえる。
倒幕派に降伏した後、塩川の謹慎所に送られた。皆は武器を奪われて幽閉されたが、オレはそうもいかなかった。生まれ持った妖刀、環《ワ》断《ダチ》は、オレの身から離れようとしない。
手にも足にも枷《かせ》を付けられて隔離されたのが初日。その格好で座敷牢に放り込まれたのが翌日。会津の山口二郎は新撰組の斎藤一だと知れたのがさらに翌日で、私刑がおこなわれたのはその晩だった。
座敷牢の梁《はり》から下がった金具に手枷を釣られた。覆面の男が全部で十数人。言葉を聞くに、薩摩もいれば長州も土佐もいた。
仲間や親類が新撰組に手傷を負わされたとか殺されたとか、京都で幅を利かせていたのが気に食わなかったとか、花街で女を巡る喧嘩沙汰になったのを忘れていないとか、いろんな恨みをぶつけられた。オレの身に覚えがあろうがなかろうが、関係ないようだった。
ぎしり、と金具の軋《きし》む音がした。
「まずはここから外してやらにゃあならん。こうしてみると、背の高い男じゃ。伊地知さん、一寸《ちっくと》、斎藤の体を支えゆうてくれんがか? 服が汚れてしまうけんど」
「よか。汚れやら気にせん。じゃっどん、ほんなこつ凄《わっぜ》か怪我じゃ。虫の息じゃっど。ああ、板垣さあ、体ごと持ち上ぐっほうが金具ば外しやすかろう」
「そうじゃな。一二の三で抱えるき」
「よし。一二の三っ」
その途端、釣られていた両腕が、重みに任せて落ちた。肩の関節が外れるのがわかった。鈍い痺れが広がって、すぐにまた何も感じなくなる。
床に寝かされたらしい。足に下がり切っていた血が、じわじわと戻ってくる。腹の傷が疼《うず》いた。たぶん痛い。息がうまく継げないのは、痛みのせいだろう。
声が出ない。木刀で殴られ始めた最初は、歯を食い縛って声をこらえていた。いつの間にか声の出し方を忘れた。呻《うめ》くことさえできなくなった。
銃弾が腹の真ん中を突き抜けた。腹から五寸と離れていないところに銃口があった。傷口が熱くて、息ができなかった。私刑の狂乱に酔った連中は笑っていた。
どくどくと血が流れ出た。流れれば流れるほど、体は冷たく重くなった。少しずつ死んでいくのがわかった。木刀で傷口を突かれても、もう痛くなかった。
いつ私刑の連中が座敷牢を去ったのか、覚えていない。
「いきなり銃声が聞こえて、こりゃあおかしいと思うたんじゃ。昼ごろに、兵士らが新撰組の斎藤は左利きじゃっちゅう話をしゆうがが耳に入っちょったしのう」
「板垣さあから知らせば受けて、二人で様子ば見に来てみれば、案の定、蜘蛛《くも》の子ば散らすごつ逃げ出した連中のおった。そんときはもう、斎藤はこげん様子じゃった」
近付いたり遠ざかったりする音の中で、不意に、時尾の息遣いが耳元に触れた。嗚《お》咽《えつ》だった。それを押し込めるように強い語調で、時尾は言った。
「条約違反だとわかっておられるがよ? 会津藩士はあなたがたに従う。その代わり、あなたがたは会津藩士を捕虜として扱う間、決して無用の処罰を加えねえ。自分《わが》の名と藩の誇りに懸けて、署名して約束したではねぇかし」
沈黙が落ちる。敵兵らしき足音がいくつか寄ってきて、それでもまだ沈黙が続く。
馬鹿だなと時尾に告げたかった。約束を守ってもらえるほどの男じゃないから、オレはこんな目に遭った。恨まれているんだ。あんたが想像するよりもずっと深く、強く。
意識がだんだんと、はっきりしてくる。胸の上に時尾の手のひらがある。そこから温かなものが流れ込んでくる。時尾が治癒の術を使っているらしい。
馬鹿だなと、また言いたくなる。こんな大怪我を治すんじゃ、あんたにも負担が掛かっちまう。よせよ。放っておいてくれていいのに。
ようやく沈黙が破られる。板垣の声は沈んでいた。
「まっこと不甲斐ないぜよ。わしらが戦に勝ったがは事実、新選組に恨みを持つ者が多いがも事実。けんど、勝者の驕《おご》りで約束を破るがは、人として本当《ざま》に情けない。下《げ》手《しゅ》人《にん》には必ず処罰を下す。堪忍しとうせ」
「人を疑いたくはねぇけんじょ、疑っつま。あなたがたが指図したのではねぇがよ?」
「誓って良《え》い、わしらは関与しちょらん。信じてもらえんがか?」
「何《な》如《じょ》すればわたしがあなたがたの言葉を信じられるべ? わたしの友達が何人も死んだ。お城では引っ切り無しの砲弾を浴びた。こっだ目に遭わされたら、あなたがたに人の血が流れているとは信じられねえ!」
伊地知の声が応えた。
「戦は戦じゃ。おい達《どん》も必死で戦うて勝たんとならんじゃった。おい達《どん》にも人死には出ちょっど。恨みば抱くとはお互いさまじゃっどん、今回の件だけは、おいも板垣さあも嘘などついちょらん。おいと板垣さあば信じやんせ」
「斎藤さまをいたぶって殺そうとした薩摩と土佐の首《しゅ》魁《かい》が、どの口で、信じろなんて言うがよ!」
「揉み消そうち思えば揉み消せた。初めは闇に葬ろうち思うた。じゃっどん、いつかは露見する。ここで斎藤ば死なせたら、どげんしようもなか禍根がまた生まるっじゃろ。すでに深か恨みもあろうどん、これ以上深うして何になる? じゃっで、すぐ、おはんば呼んだ」
時尾が蒼い環を持つことも知られているんだろう。オレと同じで、隔離されて監視を受けていたのかもしれない。縮地の術を使えば、幽閉なんか無意味なんだ。
それでも自分だけ逃げ出すことは、時尾ならやらない。オレだって、逃げることも抵抗することもしなかった。オレが身勝手を起こせば、ほかの会津藩士がどうなるかわからない。
板垣が声を上げた。
「斎藤の傷口を洗うてやるがが良《え》いろう。湯とフェノールを持ってこさせる。フェノールで傷口の毒を消してやりゃあ、銃創も膿《う》みゃあせん。西洋医学が怪我の治療に優れちゅうがは、わしらが体を以て実証しちゅう」
「んだなし。西洋医学が日本の医学より進んでいることは、会津でも知られている。資金さえあれば外国に学びに行きてぇと望む者も、若ぇ世代には多い。軍制も技術も思想も遅れた藩だと見くびらねぇでくなんしょ」
「会津の男が強情ながは知っちゅうけんど、女も大したもんじゃ。そう睨みなや。斎藤の介抱、女ひとりで難しけりゃあ、人手を貸すぜよ」
「人手はいらねえ。斎藤さまのお体に、あなたがたは指一本、触れんに。もしものことがあれば、わたしは環の力を爆発させる。死んでも狂っても妖に堕ちても、何《な》如《じょ》なっても構わねえ。巻き添えにできるだけみんな巻き添えにして地獄に連れていく」
「それは困るちや。互いに条約は守ろう。わしは斎藤と話をせにゃあならん。目を覚ますがを待っちゅうぜよ」
板垣がまわりの部下にあれこれと指示を飛ばした。足音が走り去る。
目が開かない。音だけは聞こえているのに何もできず、意識はふわふわとして頼りない。自分の体がここにあるとわかるのは、胸の上に時尾の手のひらを感じられるからだ。
下っ端のいなくなった中で、伊地知が、ぽつりと言った。
「官軍は一枚岩ではなか。味方んごつ振る舞いよっても、こいつば出し抜きたか、あいつば打ち負かさんばならんち、腹ん中では思っちょる。こげん様《ざま》では、戦の終わって共通の敵のおらんごつなったら、分解してしまうとじゃなかじゃろか」
「伊地知さん、何を言いゆう?」
「板垣さあも同じごつ感じちょっはずじゃ。官軍、いや、新政府は、薩長土肥の烏合の衆。どげんかせんとならん」
それきり、板垣も伊地知も黙ってしまった。音が止むと、意識に引っ掛かるものがなくなる。オレはそのまま眠りに落ちた。
目覚めは唐突だった。
夢を見ていた気がする。何かに追われて逃げるうち、はっと、まぶたが開いた。体が動いた。
「斎藤さま?」
時尾がオレを見下ろしていた。薄暗い中で、時尾の大きな目が張り詰めている。
血の匂いがした。汗の匂い、埃の匂い、薬の匂いがした。
まばたきをする。指を動かす。胸いっぱいに息を吸い込んでみる。
体じゅうの骨が軋《きし》んで痛んだ。腹に鈍い痺れがある。痛みは生きている証だ。オレは命脈を保ったらしい。
「斎藤さま、わたしがわかるがよ?」
「ああ……ここは座敷牢か?」
「はい。死んづまってもおかしくねぇほど痛め付けられて、何《な》如《じょ》すんべしと思ったけんじょ、目を覚ましてくれてよかった」
時尾は泣き出しそうな顔で笑った。オレはまぶしくて目を逸《そ》らす。時尾に手を借りてどうにか上体を起こすと、目眩《めまい》に襲われた。
「無理はなさらねぇでくなんしょ」
時尾の声が近い。寄り掛かっているんだから当たり前だ。時尾の体は温かかった。部屋は冷たい。オレは寒さのせいで目覚めたのかもしれない。
何を見るでもない目に、覚えのない柄の袷《あわせ》が映っている。上等なもので、擦り切れてもいない。寝ているうちに着替えさせられたらしい。
記憶がよみがえる。オレの体には指一本触れさせないと、時尾は板垣たちに啖《たん》呵《か》を切った。つまり、そういうことだ。時尾が全部やったってことだ。
じわじわと恥ずかしさが込み上げた。目眩が収まったところで、時尾から体を離す。肌寒さを覚えた。
「……世話に、なったみたいだな」
「わたしでねぇと治せねぇ傷だったなし。お役に立てて安心しました」
「や、その、着替えを……体、汚れていただろう、オレ」
余計なことを言ったと気付いたのは、言ってしまった後だった。
時尾は両手で顔を覆って、声にならない声を上げた。嫁入り前の上級武家の女が、男の裸なんか見慣れているはずはない。時尾にとってみれば、とんでもなくはしたない仕事だっただろう。
気まずい。が、どうしようもない。謝るのも、たぶん何か違う。
しばらくして、時尾が肩で息をして手を下ろした。袂《たもと》から布切れを取り出してオレに突き付ける。誠の一文字と段だら模様。時尾が縫った袖章だった。オレも時尾も互いの顔じゃなく、袖章だけ見ていた。
「捨てずにいてくださったなんて、たまげました。術の効果も消えて、何の役にも立たねぇのに」
「オレの手元に残った新撰組の印は、これだけなんだ」
「大事なお印だから、捨てられねかったがよ?」
「ああ」
オレは時尾の手から新撰組の袖章を受け取った。汚れて染みだらけで、あちこちほつれている。
「出過ぎたことをしたのではねぇかと、ずっと気になっていました。新撰組の外の者が勝手に、斎藤さまにとって大事なお印を作《こせ》っつまって」
「もらったときにも言ったはずだが、嬉しかった。この印はオレの誇りだ。それをあんたはわかってくれた」
「だって、新撰組の羽織も旗も、斎藤さまに似合っていました。京都で初めてお目に掛かったときは、鮮やかな浅《あさ》葱《ぎ》色の羽織でした。その次は黒地の羽織、また別のときは白地の羽織。段だら模様は、わたしにとっても忘れられねぇお印だなし」
「荒くれ壬《み》生《ぶ》狼《ろ》の、嫌われ者の印だ」
「わたしは、嫌いなんかではねかったです」
突然、咳払いが聞こえた。座敷牢に下ろされた格子の向こう側、行《あん》灯《どん》が作る影が動く。オレは身構えようとしたが、体が鈍い。時尾がオレを庇《かば》って進み出た。
明かりの中に姿を見せたのは、板垣だった。
「そろそろ邪魔しても良《え》いがか? 斎藤一に話があるき」
「いつからいた?」
「おんしが目覚める一寸《ちっくと》前からじゃ。見張りが付くがは当たり前じゃろう」
「土佐の総大将自らが見張りか?」
「たまたま見回りに来てみりゃあ、当直が居眠りしゆう。何ちゅうて起こしちゃろうかと考えよったら、おんしのほうが起き出した。けんどのう、女と仲良くするがは、せめて牢を出てからにしぃや。目障りじゃ」
「黙れ。てめぇら、こいつに何もしなかっただろうな?」
「ちょっかいを出しちょったら何じゃ?」
「殺す」
板垣はいきなり笑い出した。時尾の細い後ろ姿から殺気が立ち上る。板垣は気にする様子もなかった。太い格子に手を掛けて、座敷牢をのぞき込む。
「おんしら、似た者同士じゃのう。人質は無事に生かしてこそ人質としての価値があるっちゅうがを、おんしらから学んだぜよ。単なる力業では、おんしらを封じ込めることは難しい。こんな格子が何の役に立つろう? けんど、おんしらはそこでおとなしくしちゅう」
時尾が声を上げた。
「条約があんべし。わたしは約束を破らねえ」
「ああ、わしも信用しちゅう。おんしらの目には光がある。戦に負けて国を奪われて明日をも知れんっちゅうがに」
「土地でも武器でも差し出してやんべ。奪いてぇだけ奪えばいい。けんじょも、魂と誇りは決して差し出さねえ。五十年、百年経っても、あなたがたが都合よくすべて忘れっつまっても、わたしたちは屈辱を忘れねえ。わたしたちの怒りは消えねえ」
板垣は首をかしげた。いつしか真剣な目をしている。
「会津はわしらに一切の協力をせんと言うがか? そりゃあ困る。新政府は力を蓄えにゃあならん。日本は、外国と対等にやり合える国にならにゃあならんのじゃ。そのために、会津の武士には力を貸してもらいたい。そして、斎藤一、おんしにも」
「てめぇの配下に就けとでも言うのか?」
「わしでのうても構わん。無論、わしの下に来るなら、それがいちばん良《え》いけんど」
「願い下げだ」
「愛想のない男じゃのう。剣士として、将帥として、間者として、得がたい能力を持っちゅうがに、このまま埋もれるつもりがか? 能力を活かして食っていこうとは思わんがか?」
「てめぇに世話をされる筋合いはない」
「会津藩士の沙汰はまだ確定しちょらんけんど、おそらく開拓じゃ。蝦《え》夷《ぞ》地《ち》になるか陸奥《むつ》になるか、いずれにせよ不毛の雪国に送ることになるろう。斎藤、おんしは行かんでも良《え》い。会津の生まれではないき、理由を付けて配下に呼ぼうっちゅう者は沢山《こじゃんと》おる」
時尾がオレを振り返った。怯《おび》えたような顔だった。
オレは袖章を握った拳で胸を打った。痛みが、ずんと響く。
「誰の指図も受けない。オレは、オレの選んだ道を行く」
「わしらとともに来るつもりはないっちゅうわけか」
「オレは会津を選ぶ」
板垣は不敵に笑った。
「おぉの、馬鹿者《べこのかあ》め。苦労しぃや。まあ、かわいい嫁さんと一緒なら、苦労のし甲斐もあるかもしれんけんど」
「不愉快な言い草だな」
「いちいち目くじらを立てなや。おんしとはいずれまた会うろう。仕事がほしけりゃあ東京に出てきい。こき使うちゃるぜよ」
野心のぎらつく目をして、板垣は去っていった。いつの間にか起きていた見張りが、言い訳をしながら板垣を追い、叱り飛ばされて戻ってくる。
緊張が解けたのか、時尾がへたり込んだ。
「安心しました。斎藤さまが会津を選んでくれて」
「何を今さら」
時尾が頬にえくぼを作った。オレは、息をついて寝転がって目を閉じた。
「斎藤さま、具合《あんべ》はまだおつらいがよ?」
「ああ。起きていられない」
体じゅうがだるくて頭が重かった。それだけじゃなく、胸の奥がよじれるように痛かった。
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【参考資料】
「国盗り物語」 司馬遼太郎 新潮社
「地図と読む 現代語訳 信長公記」 太田 牛一 (著) 中川太古 (翻訳) KADOKAWA
東浦町観光協会ホームページ
Wikipedia
【表紙画像】
歌川豊宣, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
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