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第7章:時の残響(レゾナンス・オブ・ゼロ)
第31話:26時の朝(後篇)
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アークライン・タワーのロビーは静かだった。
昨夜の騒ぎが嘘のように、ガラスの床は澄んだ朝を映し返している。
だが――
その空気の底には、説明のつかない“異物感”が残っていた。
高梨誠は、カメラを握りしめながら天井を見上げた。
25階――存在しない階層。
「本当に……動き出したんだな、この世界。」
風が吹く。
エレベーターの表示灯が、ゆっくりと点滅を始める。
“24”
“23”
“22”
――降りてくる。
まるで、何かが現実へ戻ってくるように。
高梨は息を呑んで後ずさった。
だが、次の瞬間――
エレベーターは“21”で止まり、扉が静かに開いた。
21階――本来なら、ここで扉が開く理由はない。
1階から見上げているはずなのに、
エレベーターはまるで“存在しない階層の残響”に引き寄せられたようにしずかに止まった。
中には、誰もいない。
ただ、床に白い粒子が薄く漂っていた。
光はひとつに集まり、文字を描く。
【RECON-26:最終ログを送信します】
【観測継承者:高梨誠】
「……継承者? 俺が?」
粒子は揺れ、次の行を示す。
【篠原悠:観測者プロトコル解除済】
【現実層から一時離脱】
【行き先:零層のさらに外側】
高梨は喉が詰まり、言葉が出なかった。
「おい……悠。お前、本気で……」
光がふわりと形を変える。
そこに映ったのは――
悠が最後に塔の中で見せた、あの笑顔。
無言のまま、光の“影”が短くうなずいた。
その瞬間、高梨は悟った。
悠はもう、戻れない。
彼は観測者を超え、
“動き出した世界の外側”へ旅立ったのだ。
ただし――
光粒が、最後のメッセージを描いた。
【でも、いつか会える】
【世界が“次の未来”を選んだとき】
【再構築者は、ふたたび帰還する】
高梨は拳を握り締めた。
「……ふざけんなよ。
一言くらい直接言えってんだ……!」
涙がにじんでいた。
だがその表情には、どこか誇らしさもあった。
光はゆっくりと消えていった。
朝の空気に溶けるように。
――そのときだった。
エレベーターの奥に、かすかな“手形”が残っているのに気づいた。
白い光の指で描かれたような跡。
(……まるで、行ってくるって合図だろうが。)
高梨は深く息を吐き、そっと手を重ねた。
「わかったよ、悠。
だったら俺は、現実側で見続けてやる。」
カメラを持ち上げる。
そのレンズに、朝日が射し込む。
「世界がどこへ行くのか――
全部、俺が“記録”してやる。」
アークライン・タワーの外へ一歩踏み出す。
白い粒子が風に揺れ、
どこか遠くから、鐘の音がかすかに響いた。
――ゴォォォン。
25時の最後の残響。
だがそれは、閉じる音ではない。
“次の零点を決めるための鐘”だった。
高梨誠の物語は、ここから始まる。
そしてどこか遠い層で、
篠原悠はその鐘の音を受け取り――静かに歩き続けていた。
昨夜の騒ぎが嘘のように、ガラスの床は澄んだ朝を映し返している。
だが――
その空気の底には、説明のつかない“異物感”が残っていた。
高梨誠は、カメラを握りしめながら天井を見上げた。
25階――存在しない階層。
「本当に……動き出したんだな、この世界。」
風が吹く。
エレベーターの表示灯が、ゆっくりと点滅を始める。
“24”
“23”
“22”
――降りてくる。
まるで、何かが現実へ戻ってくるように。
高梨は息を呑んで後ずさった。
だが、次の瞬間――
エレベーターは“21”で止まり、扉が静かに開いた。
21階――本来なら、ここで扉が開く理由はない。
1階から見上げているはずなのに、
エレベーターはまるで“存在しない階層の残響”に引き寄せられたようにしずかに止まった。
中には、誰もいない。
ただ、床に白い粒子が薄く漂っていた。
光はひとつに集まり、文字を描く。
【RECON-26:最終ログを送信します】
【観測継承者:高梨誠】
「……継承者? 俺が?」
粒子は揺れ、次の行を示す。
【篠原悠:観測者プロトコル解除済】
【現実層から一時離脱】
【行き先:零層のさらに外側】
高梨は喉が詰まり、言葉が出なかった。
「おい……悠。お前、本気で……」
光がふわりと形を変える。
そこに映ったのは――
悠が最後に塔の中で見せた、あの笑顔。
無言のまま、光の“影”が短くうなずいた。
その瞬間、高梨は悟った。
悠はもう、戻れない。
彼は観測者を超え、
“動き出した世界の外側”へ旅立ったのだ。
ただし――
光粒が、最後のメッセージを描いた。
【でも、いつか会える】
【世界が“次の未来”を選んだとき】
【再構築者は、ふたたび帰還する】
高梨は拳を握り締めた。
「……ふざけんなよ。
一言くらい直接言えってんだ……!」
涙がにじんでいた。
だがその表情には、どこか誇らしさもあった。
光はゆっくりと消えていった。
朝の空気に溶けるように。
――そのときだった。
エレベーターの奥に、かすかな“手形”が残っているのに気づいた。
白い光の指で描かれたような跡。
(……まるで、行ってくるって合図だろうが。)
高梨は深く息を吐き、そっと手を重ねた。
「わかったよ、悠。
だったら俺は、現実側で見続けてやる。」
カメラを持ち上げる。
そのレンズに、朝日が射し込む。
「世界がどこへ行くのか――
全部、俺が“記録”してやる。」
アークライン・タワーの外へ一歩踏み出す。
白い粒子が風に揺れ、
どこか遠くから、鐘の音がかすかに響いた。
――ゴォォォン。
25時の最後の残響。
だがそれは、閉じる音ではない。
“次の零点を決めるための鐘”だった。
高梨誠の物語は、ここから始まる。
そしてどこか遠い層で、
篠原悠はその鐘の音を受け取り――静かに歩き続けていた。
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