25階の残響(レゾナンス)

空木 輝斗

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第7章:時の残響(レゾナンス・オブ・ゼロ)

第40話:外側戦線

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世界が裏返った瞬間、
悠の足元から“床”という概念が消えた。

白でも黒でもない。
空間の“色そのもの”が存在しない場所。

ただ――
未来の素材が細い埃のように漂っている。

「ここが……外側……?」

息を整えようとした瞬間、
横から小さな声がした。

『落ち着け。呼吸は概念だ。
 “呼吸しているつもり”で十分だ。』

起源の悠だった。

見た目は10歳の少年。
しかし瞳に宿る光は、
無限の時間を観測し続けた者のそれだった。

「……お前、本当にずっとここに……?」

『25回分、ずっとな。
 だから分かる――ここは危ない。』

その言葉と同時に――
空間が“ざらり”と歪む。

悠は反射的に振り返った。

黒い影。
人影のようで、しかし輪郭しかない。

そして、その周囲を取り巻く――

無数の“眼”。

形を持たず、ただ視線だけが漂っている。
その視線が、こちらを一斉に“観測”した。

《――――ミツケタ》

全身に冷たい針が刺さるような感覚。
見られているだけなのに、時間そのものが凍る。

「こいつらが……インベーダー……?」

起源の悠が頷く。

『未来を食う寄生者だ。
 確定していない未来の“骨組み”を喰う。
 25回ループが起きたのは、
 あいつらが“未来候補”を喰い続けたからだ。』

黒い眼が一斉に膨張する。
未来の素材を吸い込みながら巨大化する。

《――――ケイソク……カクテイ……ホシイ……》

次の瞬間、
眼の一つが悠へ飛んできた。

反射的に身をすくめたが――

『動くな!』

起源の悠が前に出る。

ぱん、と虚空に手で線を引いた。

その線が光り、
飛んできた眼は触れる前に“分解”された。

「……すげぇ……今の、なんだ?」

『観測線だ。
 敵の“未来の座標”を切断した。』

「未来……の座標?」

『あいつらは“未来の確定点”に向かってくる。
 その線を切れば動けなくなる。』

黒い眼の群れがざわめく。

《――――ミライ……ハカイ……シナイ……ト……》

《――――タベラレナイ……》

声が重なり、
観測空間そのものが震える。

起源の悠が低く呟いた。

『気をつけろ。
 今までのは“端末”。
 本体は……あの奥だ。』

指差す方向――
空間に“裂け目”があった。

裂け目から伸びる黒い霧が、
この世界を少しずつ侵食している。

そして霧の中心で脈打つ黒い球体。

まるで未来を吸い込みながら
肥大し続ける“核(コア)”のようだった。

『あれが外側の中心核(オーバー・コア)。
 あそこを破らない限り世界に未来は戻らない。』

悠は唾を飲み込む。

「じゃあ俺たちの仕事は――」

『あの核に“未来を繋ぎ直す”こと。
 破壊じゃない。
 観測者が選ぶべき未来を“渡す”。
 それが、観測者の最終任務だ。』

黒い霧が渦を巻き、
眼の群れが一斉に襲いかかる。

悠は息を呑む。

しかし――

『大丈夫だ。
 お前には、俺がいる。
 俺には、お前がいる。
 二人で観測する世界は……揺らがない。』

起源の悠の手が、
もう一人の悠の手をつかんだ。

瞬間――
空間が震え、
無数の“未来の線”が見えた。

(これが……観測者が二人揃った力……!)

二人は手を前に突き出した。

「未来は――俺たちが選ぶ!!」

白い線が奔り、
黒い眼の群れを貫いた。

衝撃波が走り、
外側の空間が激しく揺れる。

戦いが始まった。

観測者 vs 未来を食う侵入者。
その第一撃が、ここで放たれた。
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