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クロードはフォルテナをピッタリと脇にくっつけると庭に咲いている花を指さした。
「ジプソフィラですね。こんな風に咲いていたのね。キレイ」
一角に咲いたジプソフィラの小さくて白い花がまるで野原の上に雪が降ったようだ。
クロードは側にいた庭師を呼び寄せるとジプソフィラを切ってもらいフォルテナに持たせた。
「わー……キレイ。いただいていいのですか?」
フォルテナがクロードを見上げると彼はコクコクと頷いた。
「ありがとうございます」フォルテナはにっこり笑うとジプソフィラに花を埋めた。小さな花が鼻に当たってくすぐったい。
本当に赤ちゃんの吐息だわ。
クロードはそんなフォルテナを見て口元を緩め、別の一角を指さすとフォルテナに歩くように促した。
「まあ!マリーゴールドですね?かわいい。こうして咲いているとかわいさが増しますね」葉っぱとオレンジの花弁のコントラストが可愛らしい。花言葉が『健康』なのも頷ける。
クロードはまたしても庭師を呼ぶと花を切らせてフォルテナに持たせた。フォルテナの腕の中には二種類の花で花束が出来た。
「まあ……」フォルテナは男性から花束を貰ったのが初めてだったので感動してしまった。
そんな様子を見たクロードはまた再びフォルテナの腰を更に抱き寄せると歩くように促した。
フォルテナは次は何を見せてくれるのだろう。とウキウキしながら歩き出す。
「あら……何かしら?見たことがないお花です。……でもキレイ」
遠くから見るとまるで一つの丸い花のようだが、近寄ると小さな花が集まって円形を作っている。
長い茎の上に花が付いていてそれもまたかわいらしい。色は薄紫だ。
クロードはそれを庭師に三本切らせた。
フォルテナの持つ花束に刺す。
「まあ、かわいらしい……ありがとうございます」
フォルテナがにっこり笑うとクロードは耳を真っ赤にしながら俯いた。フォルテナは花に夢中で気付いていないだろうけど。
「ありがとうございました」
フォルテナは部屋までエスコートしてくれたクロードにお礼を言うと膝を折った。
クロードは手帳にペンを走らせると『またあとで』と書いた。
フォルテナもその横に『わかりました』と書くとクスクス笑う。なんで筆談なのかしら……
フォルテナはクロードから貰った花束を「花瓶に挿しておいてもらえる?」とハーネットに渡した。
「これは……」
「旦那様が来てね。それでお花を切ってくれたのよ」
「あー……クロード様はまたそのようなことをしてるんですね」
「そうなのね。私も偶然会ったから気を使わせてしまったのよ。でもとてもキレイだったわ」フォルテナは図鑑を本棚から取り出して言う。みんなにもしているのね。
「クロード様ったらすぐ腰を抱き寄せてきますよね」
「ああ、そうね。女性みんなにするの?意外と女たらしなのね。私なんてあまりそういう経験がないからびっくりしたわ。男性ってそういうものなのかしら?それとも庭を歩く時のルール?」
「……そうですね」
ハーネットはその質問以降話さなくなったのでフォルテナはなんだか不思議な心地になってから「あ……」と思わず声を上げた。
旦那様が筆談するのは……ハーネットに聞かれないようにするためかも……
フォルテナは室内で訝しげな顔をしているハーネットを目の端で見た。ハーネットに聞かれないように気を使って筆談にしているんだわ……私を邪険にせず、ハーネットが傷つかない方法……私ったらそれを笑ったりして……
しかもデリカシーもなくペラペラと今日の出来事を報告して……私たちたまたま会っただけなのに……
「まあ、私たちなんて歩いていたらたまたま偶然出会っただけだから……ほほほ、私になんて特別な女性に対してと比べると全然違うのでしょうね!恐らく待ち合わせだとか……すると思うわ!私なんかとは違って」
フォルテナはそう言うと図鑑を広げた。
「『ダイヤモンドリリー』……なんだか華やかな見た目にピッタリな名前。……誰がつけたのかしら?とても素敵ね」フォルテナは今日貰った名も知らぬ花を図鑑で調べる。
いつも思うが、お花のネーミングというのは誰がつけているのだろう。星のように最初に発見した人?
「花言葉は『また会う日を楽しみに』『箱入り娘』……か。旦那様は私に次会えるのを楽しみにしてるのか、それとも外に出て来ないで欲しいのか……ふふ」
フォルテナはその日一日とてもいい日だったと思いながら夜寝室に行った。すごく珍しいことにクロードはもうすでにいて、ベッドに腰を掛けてフォルテナを待っていた。
「旦那様!お……お待たせいたしました」
フォルテナは慌てて駆け寄るとクロードの隣に腰掛けた。
クロードは無言でその一部始終を眺めるとフォルテナを見つめている。
フォルテナは走ったせいか胸をドキドキさせながらクロードを見上げた。「……旦那様?」
クロードはフォルテナを抱き寄せるとそっと顔を寄せてきた。腰を抱く手が震えているような……
しかし、フォルテナはそんなことは気にならない様子で目を閉じた。
ぷにゅ……と二人の唇が合わさる。
クロードの手が冷たくてフォルテナはそれが気になっていた。
随分前から待っていてくださったのでは……?
そこにそっと手を重ねる。
大きくてゴツゴツした手だ。
クロードはフォルテナをベッドに押し倒し手に指を絡ませると舌を差し込んできた。がっちりとした体系で無口なクロードからは想像ができないくらいそれは優しい動作だった。
フォルテナは思わず「ん……」と吐息を漏らした。
その音が合図だったかのようにクロードはフォルテナの夜着を脱がせると胸の先に吸い付いた。
先ほど唇を合わせたときとはまた違うゾクゾクが背中を駆け抜ける。クロードがフォルテナの乳頭を唇に挟むとそれは刺激を受けて徐々に堅さを帯びていく。
「ん……ぅ……」フォルテナが身を捩らせるのを見てクロードは興奮した。自身も服を脱ぎ捨てるとフォルテナの陰部に指を這わせる。
下着の上からでもわかるしっとりとした手触りにクロードは息が荒くなっていった。暗闇に自分の荒い息が響き、フーフーと鼻息が漏れる。
下着を脱がせると陰核に指を添わせた。
フォルテナはこれが好きだ。
もうすっかり存在を主張し始めているそこをクロードは揺らした。フォルテナが息を殺して腰を捩らせる。
クロードは彼女の首すじに口を寄せるとキスをした。
「ジプソフィラですね。こんな風に咲いていたのね。キレイ」
一角に咲いたジプソフィラの小さくて白い花がまるで野原の上に雪が降ったようだ。
クロードは側にいた庭師を呼び寄せるとジプソフィラを切ってもらいフォルテナに持たせた。
「わー……キレイ。いただいていいのですか?」
フォルテナがクロードを見上げると彼はコクコクと頷いた。
「ありがとうございます」フォルテナはにっこり笑うとジプソフィラに花を埋めた。小さな花が鼻に当たってくすぐったい。
本当に赤ちゃんの吐息だわ。
クロードはそんなフォルテナを見て口元を緩め、別の一角を指さすとフォルテナに歩くように促した。
「まあ!マリーゴールドですね?かわいい。こうして咲いているとかわいさが増しますね」葉っぱとオレンジの花弁のコントラストが可愛らしい。花言葉が『健康』なのも頷ける。
クロードはまたしても庭師を呼ぶと花を切らせてフォルテナに持たせた。フォルテナの腕の中には二種類の花で花束が出来た。
「まあ……」フォルテナは男性から花束を貰ったのが初めてだったので感動してしまった。
そんな様子を見たクロードはまた再びフォルテナの腰を更に抱き寄せると歩くように促した。
フォルテナは次は何を見せてくれるのだろう。とウキウキしながら歩き出す。
「あら……何かしら?見たことがないお花です。……でもキレイ」
遠くから見るとまるで一つの丸い花のようだが、近寄ると小さな花が集まって円形を作っている。
長い茎の上に花が付いていてそれもまたかわいらしい。色は薄紫だ。
クロードはそれを庭師に三本切らせた。
フォルテナの持つ花束に刺す。
「まあ、かわいらしい……ありがとうございます」
フォルテナがにっこり笑うとクロードは耳を真っ赤にしながら俯いた。フォルテナは花に夢中で気付いていないだろうけど。
「ありがとうございました」
フォルテナは部屋までエスコートしてくれたクロードにお礼を言うと膝を折った。
クロードは手帳にペンを走らせると『またあとで』と書いた。
フォルテナもその横に『わかりました』と書くとクスクス笑う。なんで筆談なのかしら……
フォルテナはクロードから貰った花束を「花瓶に挿しておいてもらえる?」とハーネットに渡した。
「これは……」
「旦那様が来てね。それでお花を切ってくれたのよ」
「あー……クロード様はまたそのようなことをしてるんですね」
「そうなのね。私も偶然会ったから気を使わせてしまったのよ。でもとてもキレイだったわ」フォルテナは図鑑を本棚から取り出して言う。みんなにもしているのね。
「クロード様ったらすぐ腰を抱き寄せてきますよね」
「ああ、そうね。女性みんなにするの?意外と女たらしなのね。私なんてあまりそういう経験がないからびっくりしたわ。男性ってそういうものなのかしら?それとも庭を歩く時のルール?」
「……そうですね」
ハーネットはその質問以降話さなくなったのでフォルテナはなんだか不思議な心地になってから「あ……」と思わず声を上げた。
旦那様が筆談するのは……ハーネットに聞かれないようにするためかも……
フォルテナは室内で訝しげな顔をしているハーネットを目の端で見た。ハーネットに聞かれないように気を使って筆談にしているんだわ……私を邪険にせず、ハーネットが傷つかない方法……私ったらそれを笑ったりして……
しかもデリカシーもなくペラペラと今日の出来事を報告して……私たちたまたま会っただけなのに……
「まあ、私たちなんて歩いていたらたまたま偶然出会っただけだから……ほほほ、私になんて特別な女性に対してと比べると全然違うのでしょうね!恐らく待ち合わせだとか……すると思うわ!私なんかとは違って」
フォルテナはそう言うと図鑑を広げた。
「『ダイヤモンドリリー』……なんだか華やかな見た目にピッタリな名前。……誰がつけたのかしら?とても素敵ね」フォルテナは今日貰った名も知らぬ花を図鑑で調べる。
いつも思うが、お花のネーミングというのは誰がつけているのだろう。星のように最初に発見した人?
「花言葉は『また会う日を楽しみに』『箱入り娘』……か。旦那様は私に次会えるのを楽しみにしてるのか、それとも外に出て来ないで欲しいのか……ふふ」
フォルテナはその日一日とてもいい日だったと思いながら夜寝室に行った。すごく珍しいことにクロードはもうすでにいて、ベッドに腰を掛けてフォルテナを待っていた。
「旦那様!お……お待たせいたしました」
フォルテナは慌てて駆け寄るとクロードの隣に腰掛けた。
クロードは無言でその一部始終を眺めるとフォルテナを見つめている。
フォルテナは走ったせいか胸をドキドキさせながらクロードを見上げた。「……旦那様?」
クロードはフォルテナを抱き寄せるとそっと顔を寄せてきた。腰を抱く手が震えているような……
しかし、フォルテナはそんなことは気にならない様子で目を閉じた。
ぷにゅ……と二人の唇が合わさる。
クロードの手が冷たくてフォルテナはそれが気になっていた。
随分前から待っていてくださったのでは……?
そこにそっと手を重ねる。
大きくてゴツゴツした手だ。
クロードはフォルテナをベッドに押し倒し手に指を絡ませると舌を差し込んできた。がっちりとした体系で無口なクロードからは想像ができないくらいそれは優しい動作だった。
フォルテナは思わず「ん……」と吐息を漏らした。
その音が合図だったかのようにクロードはフォルテナの夜着を脱がせると胸の先に吸い付いた。
先ほど唇を合わせたときとはまた違うゾクゾクが背中を駆け抜ける。クロードがフォルテナの乳頭を唇に挟むとそれは刺激を受けて徐々に堅さを帯びていく。
「ん……ぅ……」フォルテナが身を捩らせるのを見てクロードは興奮した。自身も服を脱ぎ捨てるとフォルテナの陰部に指を這わせる。
下着の上からでもわかるしっとりとした手触りにクロードは息が荒くなっていった。暗闇に自分の荒い息が響き、フーフーと鼻息が漏れる。
下着を脱がせると陰核に指を添わせた。
フォルテナはこれが好きだ。
もうすっかり存在を主張し始めているそこをクロードは揺らした。フォルテナが息を殺して腰を捩らせる。
クロードは彼女の首すじに口を寄せるとキスをした。
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