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31話 念話で会議
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王からの提案を完全には断ることができず、項垂れたまま部屋を辞した。
長い廊下を歩く先の目的地は、城まで一緒に来た家族達が待つ控室だ。控室は1階でここは最上階のため距離がある。
くねくねと廊下を案内人について歩きながら、生きていた王子ってどんなだったかなと漫画の内容を思い出そうとしたが、読んでもないからわかるわけもない。
《サフィよ。帰るまでに少し確認したい。念話でよいか?》
《うん、いいぞ》
チラリとシフォンを見ると、シフォンは案内人に気取らせないように澄まして歩いている。
《この世界は頂点に漫画家麗子がおられるのは知っているだろう?》
《え、そうなのか?》
作者さんて創造神になるのか、まあそうだよな。話を創った人だもんな。
《……お主、本当に学ぶことが嫌いなのだな。聖典に詳しく載っておるであろう》
《う、うん。俺、だいぶ甘やかされて育ったんだよ。やりたくないことは、やらなくてよかったというか……読んだことない、というか小さい時過ぎて覚えてない的な?》
ということにしておく。
全部が嘘ではない。
そもそもが宗教に興味がないから、俺の意識が目覚めてからそういうことを気にしたこともなかったよ。
《それでよくそんな風に育ったもんだ。まあ、おおらかに育ったと言えばよいのかもな》
シフォンがフスと鼻を鳴らした途端、前を歩く案内人がビクリと跳ねた。
神獣でも魔獣でも怖いもんは怖いよな。
《あー、我は世界創造神にはお目にかかったことはないのだがな、その下に君臨する御山殿にはお会いしたことがあるのだ。我は更にその下に属する神獣である故、御山殿には敵わぬ。御山殿が慈しんでおる愛子殿には我の加護が効かぬやもしれん》
《へー》
《へーて……サフィよ。お主本当にわかっておらんな。我の加護が効かぬということは、その愛子殿がサフィと敵対した場合には、自力で戦うしかないということぞ?サフィは魔力や加護を使わずに剣術や体術で戦えるのか?》
おおふ、そういうこと?
絶、対、無理。
《俺、普段から喧嘩しないように気をつける。あんまり敵を作らないようにするよ。せめて王子の年齢が分かるといいんだけどなー》
そしたらその辺りの年齢の人を警戒すればいいだけだもんな。
魔法がなくても、逃げ足だけは自信あるぞ。
《我も愛子殿には会ったことがないのでな……だが確か、御山殿が怒る事案が起きたのが5年前、王子が10歳の誕生を祝う宴だったはずだから、今は15、6歳になっているのではないか?》
そうか。ということは学院でギリ顔を合わせるかもしれない年か。
うん、一応最上級生だけは接点を持たないように気をつけよう。
本当、授業を受けずにすんでよかったよ……クリス様々だな。
……ていうか、勝手に決めてきてクリスに全部押し付けるとか、怒られるかな……怒られるよな。
クリスだって勉強するのイヤに決まってるもんな。
《あ!っていうかシフォン》
《なんだ?》
《俺が人間じゃなくなったみたいなこと言ってなかった?》
よかった、思い出せて。
《ああ、そのことか。サフィは我とクゥが力を与え過ぎたでの。我らに近い存在になっておる。かと言って、人の器では我らのように力を使いこなすのも難しかろうな》
人の器では……ってことはやっぱり人間なのか。
あーよかった。
てか使いこなすのが難しい程の力……。使いこなせなかったらどうなるんだよ。
まさかの暴発?!
めちゃくちゃ怖いんですけど!
《そ、そういう時はどうしたらいいんだよ》
《そういう時か……魔力を使う頻度を上げて放出するのが1番いいのだが、さすればレベルは上がってしまうからの。魔力の量は増えるだろうな。……誰かに手に余る余剰分の力を、与えてしまうのも手であるぞ。我がサフィに譲渡したようにの》
そっか、あげちまえばいいのか。
強すぎたり手に余る力は、使い方を間違えればただの迷惑な人になっちまうもんな。
何事もちょっと恵まれてるくらいがちょうどいい。
あれやこれやと話は弾んだが、そろそろ控室が近づいてきた。
《さて、ここにはサフィの家族が揃っているのであったな》
《うん。みんな心配性だよなー》
俺の出来なさぶりに、簡単にお手打ちになるとでも思ったんだろうか。
まあ勉強サボってばっかりだったし、前の俺。
俺をサポートしようと付いてきてくれても、結局一緒に王様の前に行くことはできなかったわけだけどさ。
でも、皆んなの気持ちは受け取ったぞ。
《では一度この場から引こう。我がサフィと一緒に行くと驚かせるだろうしな》
それもそうか。お偉いさんや護衛さんですらびびってたしな。
《わかった》
『サフィよ』
シフォンが声を出すと、扉を開けようとしていた案内人の動きがピタリと止まり恐る恐る振り向いた。
『我は新たなる森の守護者が気にしておるだろうから、状況を伝えるために帰る。用があればまた呼ぶがよい』
「うん、ありがとう。シフォンが来てくれて助かったよ。クゥによろしくね」
他人に聞かせるための挨拶を口にすると、シフォンはクフっと笑ってふわっと消えた。
瞬間、案内人が肩の力を抜いたのが分かる。
さて、シフォンは帰った。
俺、結構やらかしたよな。
みんなに意見を確認することもできなかったし、逆らえない権力の前では仕方なかったとは思うけども、いろいろ勝手に決めてきた。
でもよく考えてみ?
漫画では俺は最終的に殺されて家を継ぐどころではなかったわけだ。
つまり、俺に学力は必要ない。
なんなら家業を継ぐのは、流れ通りクリスになるようにした方がいいだろう。
そう思えば、クリスに学業を押し付けたのは強ち間違いではなかったということにならないか?
今のところ俺がクリスをいじめる雰囲気になっていない。
だからこのままいけば、俺、生き残れるかもしれないんだ。
その上で大筋のストーリーも変わらなければ、死なずに済む可能性も高くなるはず。
そうと決まれば、俺はクリスの出世を手助けするサポートメンバーとして頑張るか。
そのための試練であるならば、クリスだって納得してくれるはず、だ。
うん、あの時の俺、グッジョブ!
漫画通りに、王立学院にクリスを入学させることに成功したんだもんな。
よし!
じゃあ後は。
俺は家族の待つ部屋の扉の前で、クリスに怒られる覚悟を決め、決め、らんないよー!
殺されるのヤダぁああ!
怖いぃ~!
初動が大事だぞ、サフィ。
謝るタイミングを間違えると、命取りだぞ。
よ、よし、行くか。
長い廊下を歩く先の目的地は、城まで一緒に来た家族達が待つ控室だ。控室は1階でここは最上階のため距離がある。
くねくねと廊下を案内人について歩きながら、生きていた王子ってどんなだったかなと漫画の内容を思い出そうとしたが、読んでもないからわかるわけもない。
《サフィよ。帰るまでに少し確認したい。念話でよいか?》
《うん、いいぞ》
チラリとシフォンを見ると、シフォンは案内人に気取らせないように澄まして歩いている。
《この世界は頂点に漫画家麗子がおられるのは知っているだろう?》
《え、そうなのか?》
作者さんて創造神になるのか、まあそうだよな。話を創った人だもんな。
《……お主、本当に学ぶことが嫌いなのだな。聖典に詳しく載っておるであろう》
《う、うん。俺、だいぶ甘やかされて育ったんだよ。やりたくないことは、やらなくてよかったというか……読んだことない、というか小さい時過ぎて覚えてない的な?》
ということにしておく。
全部が嘘ではない。
そもそもが宗教に興味がないから、俺の意識が目覚めてからそういうことを気にしたこともなかったよ。
《それでよくそんな風に育ったもんだ。まあ、おおらかに育ったと言えばよいのかもな》
シフォンがフスと鼻を鳴らした途端、前を歩く案内人がビクリと跳ねた。
神獣でも魔獣でも怖いもんは怖いよな。
《あー、我は世界創造神にはお目にかかったことはないのだがな、その下に君臨する御山殿にはお会いしたことがあるのだ。我は更にその下に属する神獣である故、御山殿には敵わぬ。御山殿が慈しんでおる愛子殿には我の加護が効かぬやもしれん》
《へー》
《へーて……サフィよ。お主本当にわかっておらんな。我の加護が効かぬということは、その愛子殿がサフィと敵対した場合には、自力で戦うしかないということぞ?サフィは魔力や加護を使わずに剣術や体術で戦えるのか?》
おおふ、そういうこと?
絶、対、無理。
《俺、普段から喧嘩しないように気をつける。あんまり敵を作らないようにするよ。せめて王子の年齢が分かるといいんだけどなー》
そしたらその辺りの年齢の人を警戒すればいいだけだもんな。
魔法がなくても、逃げ足だけは自信あるぞ。
《我も愛子殿には会ったことがないのでな……だが確か、御山殿が怒る事案が起きたのが5年前、王子が10歳の誕生を祝う宴だったはずだから、今は15、6歳になっているのではないか?》
そうか。ということは学院でギリ顔を合わせるかもしれない年か。
うん、一応最上級生だけは接点を持たないように気をつけよう。
本当、授業を受けずにすんでよかったよ……クリス様々だな。
……ていうか、勝手に決めてきてクリスに全部押し付けるとか、怒られるかな……怒られるよな。
クリスだって勉強するのイヤに決まってるもんな。
《あ!っていうかシフォン》
《なんだ?》
《俺が人間じゃなくなったみたいなこと言ってなかった?》
よかった、思い出せて。
《ああ、そのことか。サフィは我とクゥが力を与え過ぎたでの。我らに近い存在になっておる。かと言って、人の器では我らのように力を使いこなすのも難しかろうな》
人の器では……ってことはやっぱり人間なのか。
あーよかった。
てか使いこなすのが難しい程の力……。使いこなせなかったらどうなるんだよ。
まさかの暴発?!
めちゃくちゃ怖いんですけど!
《そ、そういう時はどうしたらいいんだよ》
《そういう時か……魔力を使う頻度を上げて放出するのが1番いいのだが、さすればレベルは上がってしまうからの。魔力の量は増えるだろうな。……誰かに手に余る余剰分の力を、与えてしまうのも手であるぞ。我がサフィに譲渡したようにの》
そっか、あげちまえばいいのか。
強すぎたり手に余る力は、使い方を間違えればただの迷惑な人になっちまうもんな。
何事もちょっと恵まれてるくらいがちょうどいい。
あれやこれやと話は弾んだが、そろそろ控室が近づいてきた。
《さて、ここにはサフィの家族が揃っているのであったな》
《うん。みんな心配性だよなー》
俺の出来なさぶりに、簡単にお手打ちになるとでも思ったんだろうか。
まあ勉強サボってばっかりだったし、前の俺。
俺をサポートしようと付いてきてくれても、結局一緒に王様の前に行くことはできなかったわけだけどさ。
でも、皆んなの気持ちは受け取ったぞ。
《では一度この場から引こう。我がサフィと一緒に行くと驚かせるだろうしな》
それもそうか。お偉いさんや護衛さんですらびびってたしな。
《わかった》
『サフィよ』
シフォンが声を出すと、扉を開けようとしていた案内人の動きがピタリと止まり恐る恐る振り向いた。
『我は新たなる森の守護者が気にしておるだろうから、状況を伝えるために帰る。用があればまた呼ぶがよい』
「うん、ありがとう。シフォンが来てくれて助かったよ。クゥによろしくね」
他人に聞かせるための挨拶を口にすると、シフォンはクフっと笑ってふわっと消えた。
瞬間、案内人が肩の力を抜いたのが分かる。
さて、シフォンは帰った。
俺、結構やらかしたよな。
みんなに意見を確認することもできなかったし、逆らえない権力の前では仕方なかったとは思うけども、いろいろ勝手に決めてきた。
でもよく考えてみ?
漫画では俺は最終的に殺されて家を継ぐどころではなかったわけだ。
つまり、俺に学力は必要ない。
なんなら家業を継ぐのは、流れ通りクリスになるようにした方がいいだろう。
そう思えば、クリスに学業を押し付けたのは強ち間違いではなかったということにならないか?
今のところ俺がクリスをいじめる雰囲気になっていない。
だからこのままいけば、俺、生き残れるかもしれないんだ。
その上で大筋のストーリーも変わらなければ、死なずに済む可能性も高くなるはず。
そうと決まれば、俺はクリスの出世を手助けするサポートメンバーとして頑張るか。
そのための試練であるならば、クリスだって納得してくれるはず、だ。
うん、あの時の俺、グッジョブ!
漫画通りに、王立学院にクリスを入学させることに成功したんだもんな。
よし!
じゃあ後は。
俺は家族の待つ部屋の扉の前で、クリスに怒られる覚悟を決め、決め、らんないよー!
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