彼はやっぱり気づかない!

水場奨

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37話 いざ出勤!の前に

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朝起きたら目の前クリスのドアップで驚いた。
はあ、同じ血が通ってるとは思えないほど男前だ。
俺の顔もな、別に悪くないんだ。
前の自分の感覚で言うと、可愛い系のイケメンっていうか、将来有望って感じ。
何しろまだ身体が成長しきってねえからな。

だからこっちの世界で俺の顔がいまいちっていう評価だとしても、俺的にはテンション上がるっていうか。他のヤツらによく思われてなくても、自己満足できるんだ。
けどなー、クリスもリクもカランも本当に男前だからなー。

あー!俺も早くデカくなりてえ!

「んー、おはよ。兄さん、百面相してどうしたの?」
「お、おう。お前の顔イケてるなって見惚れてた」
「……兄さんは僕をどうしたいのかな?」
急にグイッと引き寄せられて、ばっ!ばか!苦しいって!
なんつー胸筋だよ!

「クリスのアホ!!死ぬわ!!」
鼻潰れてねえか?
「あーやべえ、兄さんかわいいな、小さくて」
「うっせえ、アホ!!すぐにデカくなって踏み潰してやるからな!!」
「あははは、待ってるよ」
むーかーつーくー!!
これでも160はあるんだぞ!
お前なんか主人公だからって、ズルでデカくなってるだけのくせに!

「サリス様、お目覚めですか?」
俺が大声を出したから起きてると判断したんだろう。
扉の向こうからかかる声に、緊張で身体が強張った。昨日の今日で、どう接したらいいのかわからん。

「お、おう。起きてるぞ」
「朝食の準備が整っております。どうぞリビングの方までいらしてください」
クリスの部屋だからか、カランが入ってこないのもバリ違和感だな。

「はー、起きるか」




「何このご馳走」
机の上には、朝から誰が用意してくれたの?ていう量のバイキング飯。
2人と顔合わせるの気まずいなーなんて思っていたから、人の多さに救われた感はあるが。
飯も人も、何この多さ。

「私達が起床した時に、彼らが訪ねてきまして」
「え、と。王立学院ってこんなすごいのか?」
他の部屋もみんな?
「わけないでしょ。この部屋がなんだよ」
クリスはそう言うと、席について食事を始めた。
戸惑ったりしないのかよ。昨日は特別じゃないって言ってなかったか?

「ほら、兄さんが座らないとリクもカランも食べられないから。リクが食べないとあの人達が困るだろ?」
「へ?なんで俺?」
急に話を振られたリクが本気で戸惑ってる。
まあ、俺もわけがわかんねえけど。

「クリス様、それ以上はご容赦ください。まだ内部の調査が進んでおりませんので」
「ふーん?」
4人が席について食事を始めると、バタバタと彼らが動き出した。
シーツとか回収してくれてるっぽい。
ホテルだホテル。ホテルだと思うことにしよう。

「今日の予定でございますが、クリス様、リク様、カラン様には教師が付きますので、基本的な学習を受けていただきます。
サリスフィーナ様は勤務先にご案内しますので、責任者と顔合わせをなさってください」

「はーい」
お仕事な、お仕事。
給料が貰えるとアイツらになんか買ってやれるだろうし、父さん頑張るよ!

「ダメです。私達がいない間、サリス様の身の回りの守りが薄くなります」
「いや、俺結構強いから」
お前らより強いからな。
「サフィ様が強いのは知ってますよ!そちらの心配はしておりません!変な、虫が、付くのを、懸念しているのです」
わけわからん。
男相手に言うセリフじゃねえな。そういうのは可愛い女子に言ってやれ。

「では、サリスフィーナ様もご一緒に勉強なさいましょうか?準備いたします」
はあぁぁぁぁぁあ?
絶対イヤですけど?
なんでリクの意見が即採用されるんだよぉぉぉ!

「いや!俺は顔合わせに行く!俺は勉強が嫌いだ。お前らは、俺の役に立てるように俺の苦手分野を充分に学べ、いいな!」

「は、はい!必ずお役に立って、この胸の内の愛を証明してみせます!」
「サリス様への愛の証として必ず成し遂げてみせます!だから、昨日のことをお許しください!」
「ずっとお側に置いてくださる約束ですよね!まあ、地の果てまで追いかけますけど」
「サリス様のためならなんでもできます!」
「サフィ様のためになるならば、この手を汚す覚悟はあります!!」
「愛するサリス様のために、知識をつけて邪魔者排除いたします!」
「愛しいサフィ様のために、技術を磨いて邪魔者抹殺してみせます!」

まだまだ続く2人の宣言に、俺は口を閉じた。
目も閉じたいし、心も閉じたい。

急に、愛が、重いの、なんで?

さっきまで作り物みたいに微動だにしなかった周りの人達も、流石に動揺したのかこっちをガン見している。

ここは主人として、飴鞭で許しと活を入れるべきだろうな……。
このままだと、この2人、ただの危険人物。

「おう。学年で10番以内に入ったら、なんでも許してやるし、なんでも言うこと聞いてやるぞ」
いや、ひと学年何人いるのか、テスト自体が有るのか、順位が出るのかも知らんのだけどな。
今まで勉強してなかったヤツが学年でトップ張れるほど、世間は甘くないのよ?

「っしゃあぁぁぁあ!!」
「さっさと食って勉強するぞ」
あ、うん。
効き目ありすぎて、引くわー。
あああ、食い方……急にマナーもクソもねえ。

本当、どうした?

「2人とも落ち着けって。まだ教師も来ないのに何をやるっつうんだよ」
クリスがげんなりしてる。

こんな兄ちゃんで、本当ごめんな。
勉強押し付けて、本当ごめんな。
お前ら、本当に、ごめん!!

だって俺、勉強したくないんだもーん。





食事が終わったら部屋に教師が来ると聞いて、巻き込まれてはならないと速攻部屋を後にした。
お世話になる職場に案内してくれる役人さんに続いてそれらしき建物に着くと、洗礼それは唐突にやってきた。

「お前か。試験もなく研究棟に配属されたってやつは」
バリバリに虐めてやるぞオーラの出ているヤツが現れたのだ。

「あいつ誰?」
「カモネギ侯爵家の3男、ショッテル様です」
「そうだぞ、お前。が高いぞ、ひれ伏せ!」
案内人が真っ青になって反論しようとしてるけど、自分の身は自分で守る。そいつを黙らせるのは俺の仕事だ。
そもそも侯爵がどのくらい偉い人かもわからん。
俺、平民だから、大体の人間が俺より上の身分だってことは知ってるが。

《シフォーン、今暇?》
《おう。暇しておるぞ。どうした》
《こっちに来てもらってもいい?》
《勿論じゃ》

「シフォン、来て」

だってな、俺が死んだらシフォンも死んじまうんだぜ?
だから俺は自分の命を守るのに、どんな手でも使うことに決めた。
この間はビビっちまったけど、大人の偉い人にも負けられない。ビアイラの領主様とかにも、簡単に処刑されるわけにはいかない。
俺が納得できる死に方以外で、シフォンを道連れにできるわけがないんだ。

そしたらな、変な気を起こす気力ごと削いじまうのが1番手っ取り早いってなるだろ?

「な!ま、魔物?!」

『誰が魔物だ。我はビアイラの神獣、そこなサリスフィーナの契約者であるぞ』

「シフォン、急に呼んでごめんなー。俺、今日からここで働くんだけどさ、最初に反抗的なの締め上げとこうと思って」
これから始まるハッピーライフのためにな!

『ああ、人間は見ただけで力の差も解らぬ劣種だからの。思いっきり暴れておくか?』
あははは……。
それ、もろ悪役のヤツー。俺がやったら即アウトなヤツー。

「ひとまずコイツ、どう絞めようかなあ」
怪我させずに心だけ折りたい。

「あ、わわわわ。わ、我はカモネギ侯爵家の3男であるぞ!」
「よし、シフォン《そっと》踏み潰せ」
身分をかさにきるやつに碌なのはいねえ。

「うわあぁぁぁぁあ!!ひいぃぃぃぃぃい!!ごめんなさい~!!」
あ、なんだ。ごめんなさい言える子だったか。
威嚇するように巨体を起こしたシフォンに、ぷにっと顔を押されて、ショッテル君失神寸前でお漏らししました。

「ぐずっ、どうせ、お前らも馬鹿にすんだろ。もう、こんなの見られてお婿に行けないっ。どうせ僕、出来損ないだし!うわあぁぁん!」

『……なんだか哀れになってきたの』
「げ、元気出せよ。浄化してやるし、俺たち以外にはバレてないからな、お漏らし」
「お漏らしって言うな!!」
だってお漏らしじゃん。
あー、ちょうどいい弱み握っちゃった♡

まだまだ泣いているが、それに付き合う必要もないので、浄化をかけて腕を引っ張って起こしてやった。

あー、なんか子供(じゃないけど)が泣き止むもの無かったかな。

あ!

「ほら、これ食え。元気出るぞ」
不思議カバンからソレを取り出して、グニュっと口に押し込んでやる。
「む、美味いな。それに、なにかが溢れてくるような。これはなんだ?」
「モズラ団子だ。最近開発したみたらし風味だぞ」
やっと醤油が買えたんだよ。これでちょっとレパートリーが広がったんだ。

「ぶほぉぉおおおっっ!!おま、おま、モズラっていったら、仙薬、神薬の元になる素材ではないか!!菓子を与えるように食すものではないわ!!」

「え、だって森に生えまくってるタダ食材だぞ」

「あれはなあ!加工できる人員が居なさ過ぎるのだ。採取しただけのモズラは使いようのないゴミだが、加工してあるものはスプーン1杯で金貨1枚ほどの価値があるんだぞ!!」

『そうであろうな。モズラは別名聖霊のミルクと呼ばれるものじゃ。加護のない人間に加工できるものではあるまいて』

……マジで?

それを知らないで、俺たち毎日ちょー食ってるな。
そういえばあいつら、普通じゃ考えられないくらい元気だわ。
まさかこんなところでモズラの秘密を知ることになろうとは……。


因みにこの後、ショッテル君とシフォンのおかげで顔合わせがスムーズにいって、とても居心地の良い職場になりそうだと安心できた。

ショッテル君、なかなかに使い道のある男だ。しめしめ。



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ではまた明日!
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