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過去はとうに過ぎ去って4
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――誤解している? エステルは慌てて首を振った。
「まさかヴィートと……?」
「あの方とは、王がやって来るほんの数分前に、お会いしたばかりです」
「……『あの方とは』? では、他の男とは会っているというのか?」
ますます機嫌を損ねていくアレシュに、エステルは戸惑いながらも、弁解する。
「そのような事はありません……!」
第一、いつ他の男と知り合う機会があるというのか?
『王妃教育』と称し王宮内に閉じ込められ、外に出歩けるのは王宮の奥深い中庭。
閉じ込められているとはいえ、王宮は広くて一日解放感があるから、鬱蒼としなくて済むし、中庭も馬を入れて回った方が速い面積だ。
それでも、人に会うのは限られていてこの行事に参加して、ここに来て初めて大人数に出くわした位だ。
そう言ってやれば良いのに――
(なのに彼の前では、言いたいことが言えなくなってしまう……)
ズバズバ言ってのけて、いっそのこと嫌われてしまえば良い、そう思うのに――反面では、嫌われたくないと身体が反応し口を閉ざして笑って見せる。
そんな自分に、アレシュは気付いているかも知れない。
それを含めて彼に、余計な気遣いなどしてほしくない。
(きちんと、話し合おう)
「アレシュ王」
エステルはアレシュの猜疑と怒りの瞳に、真っ直ぐに立ち向かおうとした時、衣越しに彼の大きな手の感触に仰け反った。
乗馬用に仕立てたドレス越しに、股間をまさぐる手――蠢く指。
「あ、王」
急に始まった行為にエステルの頭は真っ白になり、話し合いたいと考えていた内容が、たちどころに消え失せた。
そのまま生い茂る林の中に追いやられ、大木に背中合わせをさせられる。性急にドレスの中に侵入するアレシュの指は、直ぐにエステルの下着の中に入り緩慢に動き出す。
「お止めください……! こんな時にこのような場所で……!」
いくら光の入らない木々の生い茂る林の中でも、今日は狩猟で、いつ追い立てられた獣やそれを追う犬や人が入ってくるか限らない。
(こんな、はしたない所を見られたりしたら……!)
焦る心は、アレシュを退けようとエステルの腕に力をいれる。だけど身体は、彼の指を容易く受け入れていた。
「足を開きなさい」
アレシュが囁く。その声さえも媚薬になり、ズクンと下腹が疼く。
「だ、駄目……あ、……」
無理矢理差し込まれる人差し指が閉じた花芯を捉え、指の腹で撫でられてしまうと、腕の力が抜けて、アレシュを押し退けることなど出来ない。
「そんな蕩けそうな目で『駄目』と言われてもな……。拒絶にならん」
「ちが……っ、ん……」
「足を開くんだ」
と、もう一度命令されエステルは、躊躇いながらも少しだけ足を広げる。
「……もっと広げなさい」
言われるがままに、アレシュの手が安易に入るくらいに股を広げると
「ああ……素直で嬉しいよ、可愛い私のエステル」
と、エステルの唇を啄み始めた。
軽い子供の真似事のような口付けから、吐息さえも食らい付いてくる激しいものへと変わっていく。
「う、ぁ……ん……」
角度を変える度に漏れる自分の声は、甘くて淫らだ。エステルは頭の片隅でそう思った。
身体はアレシュを欲している。心が負けた。
身体と直に繋がっている頭は、欲望に忠実であれと理性を埋めてしまった。
アレシュの舌が侵入したと同時、花芯を守っていた柔皮が剥がされた。
「ふっ……! うぅ……!」
ピクン、とエステルの身体が跳ねる。
ジワリとした快感から強烈な刺激にと変わり、一瞬回ってきた痛みに身体が反応したのだ。
アレシュは丁寧に花芯を親指の腹で撫で、時々摘まんだり、軽く爪先で弾いたりと集中的に弄ぶ。
「……! ん! ……ふっ!」
エステルの口はアレシュの唇によって塞がれ、口内を凌辱され続けていた。飲み込めない唾液が、口角から溢れ伝い出していても抗うことが出来ない。
クチュリ、とアレシュの指が音を立て移動する。花芯を弄んでいる以外の指が、手持ち無沙汰だと下にも触れ出したのだ。
だが、エステルの中に侵入はしてこない。あくまでも出入り口を撫で回すだけ。
「ふ……ぅ……ぅ!」
それだけでも、エステルの身体は甘く痺れ、揺れる。身体を大木に預け尚、アレシュが片腕で支えても、快感に足が震えて立ち続けているのが辛かった。
「ん……ぅ! ……ん―― !」
緩やかに蜜口を撫で回していた指が、早くなる。擦られて粘着のある淫らな音がしきりにエステルの耳に届き、羞恥に涙が出てくる。
なのに、身体は快感を求めて熱くなり、胸は激しく揺れ動き早鐘を打つ。
「―― !」
刹那、フワリと身体が浮いた気がした。まるで空に飛んだような解放感に頭が真っ白になり、そのあと落下する感覚。身体がエステルの意思に反して、ヒクヒクと小刻みに揺れた。
アレシュが、ゆっくりと名残惜しそうに、口付けを止めて離す。まだ達した余韻に浸っているエステルを、アレシュは愛しげに見つめた。受け止められずに口から溢れた唾液を、アレシュの舌が拭いとる。
「……このような行為を、他の男とはしていないと信じているが……不安で堪らない」
「お……う……」
劣情と、悲壮の間を往き来するように、アレシュの呼吸が荒い。
「貴女が私を一人の大人の男として見てくれるまで、身体に触れるのは止めようと思った……だが」
ズルリ、と水音がたち、エステルの滴る蜜所にアレシュの節張った指が入ってきた。
ゆっくりと入り口を広げるように撫でる。親指は未だ開きつつある花芯を押し潰したままに。
「あ……あぁ……駄目、これ以上は……」
いくら背中を大木に預け、王の片腕がエステルの身体を支えていると言っても、快楽に溶けてきている腰は何とも安定が無い。足など、戦慄いてしっかりと地に着いているのか分からない。覚束無いほどだ。
「大丈夫だ」
アレシュがそう囁くと、エステルの脚の間に膝を入れた。彼女を支えている腕と反対側の太腿を支えるように。
「あっ、……っ、うん……」
だが敏感になっているエステルには、その支えさえも刺激になって脚は震えっぱなしだった。
「もう、下着が役割を成さないほどだ。ずぶ濡れだぞ? エステル」
「――っ、い、や……」
クスリ、と耳元でアレシュが笑う。その吐息がまたエステルの身体を震わせ、甘い快感を生み出す。
(こんなところで……おかしくなりたくない……!)
「もう、これ以上……はお止め……くだ…さい……」
「『止めてほしい』という顔じゃない」
相反する身体の欲求を見透かされ、エステルの顔が瞬く間に朱に染まった。
ふっと笑うアレシュの微かな呼気がまた、エステルの耳朶をなぶる。
「もっ……! もう、やっ……!」
耳が弱点だと、よく知っている彼を止めたい。それだけで軽く達してしまい、更に腰が砕けそうだ。
アレシュの指の愛撫は止まらず、ますます念入りに、執着を帯びていく。深く、指の根本まで、蜜壺となった膣に差し入れては引き戻す。
「ひっ……ん! うん……っ」
「良いか……?」
アレシュの問いに答える余裕もない。
「ぅ、ひぃ……っ、は……ぁっ」
自分でも、はしたないと思う喘ぎをあげるばかりだ。
蜜壺を荒らす指が二本となり、それが内壁を擦りながら動き出すと、下腹に痺れが急速に広がる。
「あ……! ひっ……! いゃあぁ……!」
一気に全身に広がり、エステルは堪えられず声をあげ戦慄いた。
快楽に目まで蕩けて涙が溢れる。身体をひくつかせ、荒い呼吸を吐き出すエステルを、アレシュはしっかりと抱き寄せた。
「身体は、もう私を受け入れていると言うのに……。貴女は、いつ心を明け渡してくれる……?」
快感を昇華したエステルの呼気と、劣情と切なさの含まれたアレシュの熱い吐息が、重なり合う。
抱き締める腕は自分をしっかりと抱き寄せるのに、どこか心細い。
この不安定さは自分だけそう感じるのか、それとも、アレシュの体格からきているのか――達したばかりのエステルの頭は、うまく働かないでいた。
「いっそうのこと、貴女の全てを奪えば、私を受け入れてくれるのか……?」
「……王!」
荒ぶる風のようにアレシュが動く。大木に擦り付けるようにエステルを地に下ろし、ドレスの裾を捲りあげた。
「いつまで我慢すれば良い? いつになれば私を! 今の私を見てくれる? どこまで貴女を閉じ込めれば良い? どうしたら貴女から『愛している』との言葉を貰えるのだ! ――どれもこれも叶わぬなら……!」
シュミーズが引き裂かれる音がして、大気の温度を感じる。
今まで淫靡な欲望に翻弄されていた身体は熱さを保っていたが、自分の体温より低い森林の空気を肌で感じ、エステルは一気に頭が冴えた。
「アレシュ王……! お止めください!」
エステルの険のある声にも引かず、アレシュは彼女を逃がさぬように腰に乗る。
「……淫惑に弱いくせに、貴女は……」
アレシュが、悪戯めいた表情を見せた。
(――誰のせいだと……!)
その顔に、エステルは一気に燃え上がった――憤怒に。
「『王妃候補』だと……! 強引に連れてこられて! 誰も私の意見など聞かない中で……! 貴方に無理矢理身体を開かされて……! それで『愛している』と言ってくれ、ですって……!?」
「エステル……」
怒りを露にしたエステルに、アレシュが一瞬引いた隙に立ち上がる。
今までの不満が爆発した。
エステルは乱暴にドレスの裾を下ろし、汚れを叩くとアレシュを睨み付けた。
「婚約も、破棄になるように仕向けられて! それからの見合い話も揉み消されて……それを知らずに八年間も私は……! ずっと気付かずにこれからの人生に悲観して…! 貴方はそんな私の気持ちなど、お構いなしに自分の感情だけで、権力を傘にして私の人生を操作をしていたのよ! ……お、大人の男性として見てほしい? ――それ以前の問題よ!」
その負い目が、アレシュ王にもきっとある。だから最後まで、身体の関係を強いらず止まっていてくれたのだろう。
(その事に、少しでも感激した私は愚かだった!)
まだ彼は子供だ。権力をかざす子供だ。
「私を解放して……! 私は王! 貴方にこれ以上、私の人生を操作されたくはありません!」
訴えながら、エステルの頬に涙が伝う。
悔しさなのか悲しみなのか、感情の高ぶりから涙が止まらない。
アレシュは瞠目したまま、エステルのその様子を見ていたが、ゆっくりと彼の顔から感情が消えた。
そして吐かれた言葉は、内容と共に冷たい。
「駄目だ。貴女を解放はしない」
「まさかヴィートと……?」
「あの方とは、王がやって来るほんの数分前に、お会いしたばかりです」
「……『あの方とは』? では、他の男とは会っているというのか?」
ますます機嫌を損ねていくアレシュに、エステルは戸惑いながらも、弁解する。
「そのような事はありません……!」
第一、いつ他の男と知り合う機会があるというのか?
『王妃教育』と称し王宮内に閉じ込められ、外に出歩けるのは王宮の奥深い中庭。
閉じ込められているとはいえ、王宮は広くて一日解放感があるから、鬱蒼としなくて済むし、中庭も馬を入れて回った方が速い面積だ。
それでも、人に会うのは限られていてこの行事に参加して、ここに来て初めて大人数に出くわした位だ。
そう言ってやれば良いのに――
(なのに彼の前では、言いたいことが言えなくなってしまう……)
ズバズバ言ってのけて、いっそのこと嫌われてしまえば良い、そう思うのに――反面では、嫌われたくないと身体が反応し口を閉ざして笑って見せる。
そんな自分に、アレシュは気付いているかも知れない。
それを含めて彼に、余計な気遣いなどしてほしくない。
(きちんと、話し合おう)
「アレシュ王」
エステルはアレシュの猜疑と怒りの瞳に、真っ直ぐに立ち向かおうとした時、衣越しに彼の大きな手の感触に仰け反った。
乗馬用に仕立てたドレス越しに、股間をまさぐる手――蠢く指。
「あ、王」
急に始まった行為にエステルの頭は真っ白になり、話し合いたいと考えていた内容が、たちどころに消え失せた。
そのまま生い茂る林の中に追いやられ、大木に背中合わせをさせられる。性急にドレスの中に侵入するアレシュの指は、直ぐにエステルの下着の中に入り緩慢に動き出す。
「お止めください……! こんな時にこのような場所で……!」
いくら光の入らない木々の生い茂る林の中でも、今日は狩猟で、いつ追い立てられた獣やそれを追う犬や人が入ってくるか限らない。
(こんな、はしたない所を見られたりしたら……!)
焦る心は、アレシュを退けようとエステルの腕に力をいれる。だけど身体は、彼の指を容易く受け入れていた。
「足を開きなさい」
アレシュが囁く。その声さえも媚薬になり、ズクンと下腹が疼く。
「だ、駄目……あ、……」
無理矢理差し込まれる人差し指が閉じた花芯を捉え、指の腹で撫でられてしまうと、腕の力が抜けて、アレシュを押し退けることなど出来ない。
「そんな蕩けそうな目で『駄目』と言われてもな……。拒絶にならん」
「ちが……っ、ん……」
「足を開くんだ」
と、もう一度命令されエステルは、躊躇いながらも少しだけ足を広げる。
「……もっと広げなさい」
言われるがままに、アレシュの手が安易に入るくらいに股を広げると
「ああ……素直で嬉しいよ、可愛い私のエステル」
と、エステルの唇を啄み始めた。
軽い子供の真似事のような口付けから、吐息さえも食らい付いてくる激しいものへと変わっていく。
「う、ぁ……ん……」
角度を変える度に漏れる自分の声は、甘くて淫らだ。エステルは頭の片隅でそう思った。
身体はアレシュを欲している。心が負けた。
身体と直に繋がっている頭は、欲望に忠実であれと理性を埋めてしまった。
アレシュの舌が侵入したと同時、花芯を守っていた柔皮が剥がされた。
「ふっ……! うぅ……!」
ピクン、とエステルの身体が跳ねる。
ジワリとした快感から強烈な刺激にと変わり、一瞬回ってきた痛みに身体が反応したのだ。
アレシュは丁寧に花芯を親指の腹で撫で、時々摘まんだり、軽く爪先で弾いたりと集中的に弄ぶ。
「……! ん! ……ふっ!」
エステルの口はアレシュの唇によって塞がれ、口内を凌辱され続けていた。飲み込めない唾液が、口角から溢れ伝い出していても抗うことが出来ない。
クチュリ、とアレシュの指が音を立て移動する。花芯を弄んでいる以外の指が、手持ち無沙汰だと下にも触れ出したのだ。
だが、エステルの中に侵入はしてこない。あくまでも出入り口を撫で回すだけ。
「ふ……ぅ……ぅ!」
それだけでも、エステルの身体は甘く痺れ、揺れる。身体を大木に預け尚、アレシュが片腕で支えても、快感に足が震えて立ち続けているのが辛かった。
「ん……ぅ! ……ん―― !」
緩やかに蜜口を撫で回していた指が、早くなる。擦られて粘着のある淫らな音がしきりにエステルの耳に届き、羞恥に涙が出てくる。
なのに、身体は快感を求めて熱くなり、胸は激しく揺れ動き早鐘を打つ。
「―― !」
刹那、フワリと身体が浮いた気がした。まるで空に飛んだような解放感に頭が真っ白になり、そのあと落下する感覚。身体がエステルの意思に反して、ヒクヒクと小刻みに揺れた。
アレシュが、ゆっくりと名残惜しそうに、口付けを止めて離す。まだ達した余韻に浸っているエステルを、アレシュは愛しげに見つめた。受け止められずに口から溢れた唾液を、アレシュの舌が拭いとる。
「……このような行為を、他の男とはしていないと信じているが……不安で堪らない」
「お……う……」
劣情と、悲壮の間を往き来するように、アレシュの呼吸が荒い。
「貴女が私を一人の大人の男として見てくれるまで、身体に触れるのは止めようと思った……だが」
ズルリ、と水音がたち、エステルの滴る蜜所にアレシュの節張った指が入ってきた。
ゆっくりと入り口を広げるように撫でる。親指は未だ開きつつある花芯を押し潰したままに。
「あ……あぁ……駄目、これ以上は……」
いくら背中を大木に預け、王の片腕がエステルの身体を支えていると言っても、快楽に溶けてきている腰は何とも安定が無い。足など、戦慄いてしっかりと地に着いているのか分からない。覚束無いほどだ。
「大丈夫だ」
アレシュがそう囁くと、エステルの脚の間に膝を入れた。彼女を支えている腕と反対側の太腿を支えるように。
「あっ、……っ、うん……」
だが敏感になっているエステルには、その支えさえも刺激になって脚は震えっぱなしだった。
「もう、下着が役割を成さないほどだ。ずぶ濡れだぞ? エステル」
「――っ、い、や……」
クスリ、と耳元でアレシュが笑う。その吐息がまたエステルの身体を震わせ、甘い快感を生み出す。
(こんなところで……おかしくなりたくない……!)
「もう、これ以上……はお止め……くだ…さい……」
「『止めてほしい』という顔じゃない」
相反する身体の欲求を見透かされ、エステルの顔が瞬く間に朱に染まった。
ふっと笑うアレシュの微かな呼気がまた、エステルの耳朶をなぶる。
「もっ……! もう、やっ……!」
耳が弱点だと、よく知っている彼を止めたい。それだけで軽く達してしまい、更に腰が砕けそうだ。
アレシュの指の愛撫は止まらず、ますます念入りに、執着を帯びていく。深く、指の根本まで、蜜壺となった膣に差し入れては引き戻す。
「ひっ……ん! うん……っ」
「良いか……?」
アレシュの問いに答える余裕もない。
「ぅ、ひぃ……っ、は……ぁっ」
自分でも、はしたないと思う喘ぎをあげるばかりだ。
蜜壺を荒らす指が二本となり、それが内壁を擦りながら動き出すと、下腹に痺れが急速に広がる。
「あ……! ひっ……! いゃあぁ……!」
一気に全身に広がり、エステルは堪えられず声をあげ戦慄いた。
快楽に目まで蕩けて涙が溢れる。身体をひくつかせ、荒い呼吸を吐き出すエステルを、アレシュはしっかりと抱き寄せた。
「身体は、もう私を受け入れていると言うのに……。貴女は、いつ心を明け渡してくれる……?」
快感を昇華したエステルの呼気と、劣情と切なさの含まれたアレシュの熱い吐息が、重なり合う。
抱き締める腕は自分をしっかりと抱き寄せるのに、どこか心細い。
この不安定さは自分だけそう感じるのか、それとも、アレシュの体格からきているのか――達したばかりのエステルの頭は、うまく働かないでいた。
「いっそうのこと、貴女の全てを奪えば、私を受け入れてくれるのか……?」
「……王!」
荒ぶる風のようにアレシュが動く。大木に擦り付けるようにエステルを地に下ろし、ドレスの裾を捲りあげた。
「いつまで我慢すれば良い? いつになれば私を! 今の私を見てくれる? どこまで貴女を閉じ込めれば良い? どうしたら貴女から『愛している』との言葉を貰えるのだ! ――どれもこれも叶わぬなら……!」
シュミーズが引き裂かれる音がして、大気の温度を感じる。
今まで淫靡な欲望に翻弄されていた身体は熱さを保っていたが、自分の体温より低い森林の空気を肌で感じ、エステルは一気に頭が冴えた。
「アレシュ王……! お止めください!」
エステルの険のある声にも引かず、アレシュは彼女を逃がさぬように腰に乗る。
「……淫惑に弱いくせに、貴女は……」
アレシュが、悪戯めいた表情を見せた。
(――誰のせいだと……!)
その顔に、エステルは一気に燃え上がった――憤怒に。
「『王妃候補』だと……! 強引に連れてこられて! 誰も私の意見など聞かない中で……! 貴方に無理矢理身体を開かされて……! それで『愛している』と言ってくれ、ですって……!?」
「エステル……」
怒りを露にしたエステルに、アレシュが一瞬引いた隙に立ち上がる。
今までの不満が爆発した。
エステルは乱暴にドレスの裾を下ろし、汚れを叩くとアレシュを睨み付けた。
「婚約も、破棄になるように仕向けられて! それからの見合い話も揉み消されて……それを知らずに八年間も私は……! ずっと気付かずにこれからの人生に悲観して…! 貴方はそんな私の気持ちなど、お構いなしに自分の感情だけで、権力を傘にして私の人生を操作をしていたのよ! ……お、大人の男性として見てほしい? ――それ以前の問題よ!」
その負い目が、アレシュ王にもきっとある。だから最後まで、身体の関係を強いらず止まっていてくれたのだろう。
(その事に、少しでも感激した私は愚かだった!)
まだ彼は子供だ。権力をかざす子供だ。
「私を解放して……! 私は王! 貴方にこれ以上、私の人生を操作されたくはありません!」
訴えながら、エステルの頬に涙が伝う。
悔しさなのか悲しみなのか、感情の高ぶりから涙が止まらない。
アレシュは瞠目したまま、エステルのその様子を見ていたが、ゆっくりと彼の顔から感情が消えた。
そして吐かれた言葉は、内容と共に冷たい。
「駄目だ。貴女を解放はしない」
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