アニンバイツ

第1章 メリュジーヌ本部脱出編

3.欠落した闇【加筆修正済み】

1.


『仕事だ。  行くぞ』

勝呂は  事前に渡された  
カプセル型の薬品を
神奈に渡した。


検査室に寄れと
言われたのにもかかわらず、
勝呂はその横を通り過ぎた。


彼にとって、 検査なんて 
ものは無意味に近い。

彼の右半身について
検査出来るものは限られているからだ。

神奈は 冷たい顔をしている 
勝呂の顔を覗き込んだ
『これは？なんの薬？ 
違法ドラッグ？！きゃー怖い』



勝呂は 神奈の 独り言に 
頭を抱えて 鼻で笑った


『アホか  おまえ。  俺が自らそんなもんに手を出すと思うか？  
それは試験薬らしい。
安全性は 確認済みだ。安心しな       
それ飲むと 10歳若返るんだとよ。


さて、最後の仕事は 学園ときた。 
楽しみなもんだぜ』


神奈は 渡された薬を  不穏な目で見つめながら  勝呂の目が真実を語っていると確認し、 胸元にしまった。


試験薬の名は  リビュート
接種した者は 
10年前の姿に戻るとされている
…が  メリュジーヌ社は  
それを今まで隠蔽して来た。
だが、勝呂や、
神奈が所属するトレーダー社
は 、それを見抜いていた。


少なからず  
その内に秘めた隠謀という名の
改革を進めていることに感づいていた。

トレーダー社の推測では
メリュジーヌ社 が
開発した  試験薬リビュートは 
10年前の姿につまり、  
10年前に  起こったパンデミックにて
発症した者を真人間に
戻すためのものとされる。



したがって、  中途半端に  
誘発物質の暴走に取り込まれ異形と
化した 者達を救済する代わりに    
メリュジーヌ社が  独自に開発したとされる   制御剤 を 接種するのが目的だ。

制御剤を入れられた人間
、及び、アニンバイツ達は 
メリュジーヌ社に
従わなくてはならなくなる。
その理由は明らかにされていないが、
制御剤の威力は凄まじく、


  二年前、トレーダー社の
アニンバイツが  
おぞましい姿で発見された

体内には見たことのない
物質が投与された形跡があり、  
それに抗ったアニンバイツが
なんらかの方法で  
【人間的機能停止】(オーバーロスト)を起こし体内にある 
誘発元素が暴走し
異形と化したものと報告されている。

世界的に大いに功績が認められている
大手製薬会社メリュジーヌ社  
の闇は深い。



そして、この時勝呂達は  
メリュジーヌ社から依頼された
その学園の恐ろしさを知らなかった。

そして  まさかこれが
最期の仕事などでは無く
これから 始まる悪夢 の
引き金になってしまう
などとは、誰も想像もしていなかった。


2.

通称、欠落学園  。



生徒全員がなんらかの形で
戸籍を消失しており  
生存しよう しなかろうと  
国は一切責任を負わないと 
契約しているらしい。


そして、この学園の
周辺及び 領域は
(見えない壁)、 
という名の法律で
完全封鎖  されている

もし、この学園の  領域、
つまりは領空に
侵入した場合  射殺 。

飛行船の場合は  領空侵犯となり
空爆されるというものだ。


極め付けは生徒達の安否だ
生徒数不明
安否不明


という 一番重要であり
どんなことであっても
一番前提でなければならない部分が
全くもって不明と来た。

噂ではその学園で、
ハーフアニンバイツが
未だ戦争用の兵士として、  
収容をされていると言われているが、  全校生徒がハーフアニンバイツだなんて事はありえない。

勝呂 鞍馬は  その噂を否定した。
世界には謎が多いがその数々を
トレーダー社は解決、
または保有して来た。


その中でそんな情報が
一滴も流れて来ることはなかった。


データ保有量では   ある裏組織と
トレーダー社か、と言ったところだ。
それ位、トレーダー社
のデータ保有量は莫大なものだ。


しかし、  
1番不覚だったのは  













その学園の存在を  
知らなかったということだ。