アニンバイツ

飲杉田楽

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過去の章~赤い雨季~

18.その出会いは吉かそれとも凶か

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標的を捉えた狼のごとく大きく股を開き鉄パイプをの先端を床に擦り付け、
突進寸前の闘牛のような体制で
攻撃準備を整える。
マグカップから垂れ流された血液がデスクに角へと流れ、その角から床へ滴り落ちた
その瞬間、女が滑るようにして接近を開始。
肩まで伸びたその髪を雑に振り回しながら
毛細血管がしっかりと浮かび上がった
眼を見開き鋭い爪を前に出しながら
突進してきた。
空かさず 間合いを取ろうとバックステップを
踏む八田だが、 そのまま床にたっぷりと
垂れ流された赤い絨毯の上を低姿勢のまま
滑り始めた。
女の股下を潜り抜け、空かさず鉄パイプを
女の両足に引っ掛ける。
八田の後ろから床に溜まっていた血が
飛び跳ね女がバランスを崩して
滑り転げる。
しかし、もう一体の異形は
それがどうしたとばかりに  飛び跳ねてきた。
普通であればそのまま 体を押さえつけられ
首筋を食いちぎられてお仲間入りを果たしてしまうのだろうが、八田はオフィス用の
車輪がついた椅子を血のカーペットへスライドさせ蹴り上げた。 空中では勿論の事
軌道修正なんてものはできないその
異形となった男は 八田の放り投げ椅子に
激突。 その効力で スピードを上げた椅子は
ロッカーに激突し転倒。
その衝撃に耐えきれなかったロッカーが転倒し、上にロッカーの上に常備されていた
鉄バット達が一斉に落下する。
唸り声を上げ、抵抗するが、
見事なまでに鉄バットの雨が男に降り注ぎ、
その唸り声は断末魔として変換された。
女の方も 余りにも
滑りが良くなったフィールドだったため、
首が曲がらぬ方向へ曲がり動かなくなった。
八田は、血みどろになった、自分の姿を
みて、 がっかりすると その場から立ち去ることにした。
食い殺された青年達はいずれ、蘇り、
異形と化す。その前にここから離れよう、
そう決意した次の瞬間だった。
目の前にさっきまではいなかったはずの
少年が佇んでいた

見たところの八田と年齢はそう変わらない風貌だったが、  どうも様子がおかしい。
『苦しい…、、にげて、』
青年がそう告げた瞬間少年の右半身が
バイクのエンジン音の如く鳴り響き、
変形した。
『は?! なんじゃそりゃあ!』
八田は堪らず声を荒げる。
が、 先ほどの青年の顔とは異なり、
もうすでにその目は死んだも同然の
感情が感じられない目だった。
八田はそれに気付きすぐさま離れようとしたが、 その時にはすでに少年の右半身から
吐出した触手によって八田は吹っ飛ばされていた。 受身を取ろうと必死に足掻く八田だが、それを阻止しようと少年があり得ない移動速度で八田に接近し落下途中の八田に
鉄拳を繰り出す。 
その衝撃波に耐えきれず、堪らず血反吐を口から撒き散らす他ない八田。
しかし、そこで息絶える 男ではない。瞬時に
体をひねらせ、青年の顔面に右足の踵をねじ込む。
そのまま八田は掃除用ロッカーに激突するがなんとか受身を取り転がる。
青年はもう二度と使われることがないであろう紅く染まった机の上に着地する。
『にげて、、また、殺してしまう、、』
青年は苦しそうに蹲る。
八田は殴られた腹をさすりながら言葉を必死に紡ぐ。
『なんだかしらねえけど、お前には殺されねーよ、 まだ生半可なんだよお前。俺が助けてやるよ』
そういうと、八田は 目を見開き、
クラウチングスタート寸前のような体制を
し始めた。八田の拳はみるみるうちに黒い血管に侵食されていき
、筋肉が盛り上がっていく。
八田は 青年がどんな
境遇にあるのか理解していた。
なぜなら
八田も同じ境遇に立つ者だからである
『俺もお前もウイルスに侵食されちゃあいるが抗体を持ってる。 なあ、これってすごいと思わねえか?』
八田の肉体には僅かながら異形の血が混じっていた。 しかし、抗体を持つ八田は
完全に感染することはなく、代わりに
類い稀な運動能力を手に入れた。
八田は歓喜していた。
自分と同じ者がいると、
そして辛い思いをしてここまで来た
奴が存在していたことに感動した。
この体がゆえにバケモノ扱いされたことは
多々あった。
人を助けても 逃げられ通報され
迫害を受ける。
おそらく目の前にいる変貌を遂げた少年もそうなのだろう。
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