アニンバイツ

過去の章～赤い雨季～

19.覚悟の鎧

八田の腕は赤黒い色に染まり硬く引き締まった鎧のような筋肉を纏っていく。
一方赤黒い触手をドリルのように
捻り上げ、巨大なランスを作り上げた
青年は唸り声をあげながら 右手だけに
毛細血管を張り巡らせ 鋭い眼光を八田に
飛ばした後、跳躍した。
オフィス用のデスクにヒビが入り一瞬で
砕けていく。  
赤黒く染まったそのランスは青年の右手と融合しておりそれを天高く上げ、八田へと
叩きつける
掃除用ロッカーが見るも無残なまでに
潰れていく。
コンクリートの床にヒビが入り砕けていく。
しかし、その青年の攻撃速度よりも八田の
拳の方が素早かった。


肉が軋むような音が響き青年が
そのまま 先ほどまでいた血みどろのデスクの方へ一直線に吹っ飛んでいく。
椅子や机がその衝撃に耐えかねて四方八方に移動していく。 
『こんなもんかな？』
八田は 首をこきりと曲げると、
変質化していた腕を元に戻し倒れこむ青年に駆け寄った。
青年は血反吐を吐いていたが、もうその頃にはあのグロテスクという言葉が異様なまでに相応しいあの右半身は元に戻っていた。

そしてその青年こそが
今、八田と活動を共にする
勝呂 鞍馬 (スグロ クラマ )であった。

そしてこれが勝呂と八田を繋ぐ大きなきっかけとなったのだった。


スーパーの中は
ほぼ、がらんどうで、棚にあるはずの食料品生活用品は綺麗さっぱりになくなっていた
それもそのはず、強盗、窃盗、などが、多発するこの無法地帯では、 ここは格好の狩場。
すなわち、ここは無料の食糧庫と
いうわけだ。
八田は 勝呂と出会った日のことを思い出していた。
あの頃は今はくせっ毛程度で済んでる髪も
酷くごわついており、針金のような髪質だったが、 2人で色々な依頼を受け、成功報酬をもらってくうちに 仲間も増えていき、
衣服や、住居、勿論の事汚かった体も
段々とマシになってきた。
本当であれば高校生として青春を謳歌しているはずの年だが、ここは崩壊の一途を辿る
世界の中心、 ウイルスを何者かがばら撒き
世界的大混乱…パンデミック を起こしたとされる中心地がこの町なのだからしょうがない
と思う他なかった。
考えすぎると嫌なことを思い出す。
だからこそ 八田と勝呂は強く生きた。

 アイスなのが売っている
冷凍食品コーナーへ来た
長持ちするものが欲しい八田たちは
いつものように干物や冷凍ものを
かっさらっていくわけだが、
極稀に、大人の団体との抗争に巻き込まれたりもする。
しかしながら、勝呂や八田、そして
この前助けた少女、といい、 人間なのに、
人間を超越しており、異形ではないのに
異形の力を持っていた。
八田にとって都合が良いことは確かだし
かなり良い方向に向かっていた。