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過去の章~赤い雨季~
20.はじまった復讐劇
しおりを挟む※一部の表現の差し替えと加筆致しました。
仲間というのは同じ境遇にいればいるほど
絆が増し連体感が倍増するものだ。
だからこそ、忌み嫌われるこの力を持つもの同士が力を合わせるというのはかなり
良いチームワークを生むものだと八田は確信した
辛い過去を背負ってきた、
忘れ去りたい記憶を今もなお背負い生きている。
だからこそ、痛みがわかるもの同士だからこそ、力を合わせ生き抜くことができると八田は信じた
『八田~ みっけたぞー炒飯だ』
馬鹿でかい声で騒ぐのは、
右半身のみがウイルスに侵されている
青年、勝呂だった。
勝呂の黒髪は癖が付いており遠くからでも仲間であれば判別できるほどわかりやすい髪型をしていた。
そしてなにより、自然と修羅場をくぐり抜けてきたその肉体は 鍛え抜かれており、
多少の戦闘なら素手で挑める程。
まあ、素手が基本なのだがこの無法地帯では
素手で戦闘する者の方が少なく大半が
物騒なものを懐にしまいこんでいる。
『よし、勝呂、今日はこの辺で良い。
あんまりもらい過ぎるとストックが無くなるからな』
『え?本当にいいのか、これっぽっちで?』
『欲張り過ぎるのはよくねえってことよ』
『ふーん、まあ 八田がそう言うならそーなのかもな、、』
勝呂は致し方ない と思い、炒飯を
3つほど取るとリュックサックの中に
入れた。
『行くぞ、勝呂。』
スタスタと自分のペースで歩いていく八田。
それを追う勝呂。
そんな日常が続くと思っていた。
しかし、 それは続かなかった
それはあまりにも突然で
あまりにも必然的な出来事だった。
結果的に 共に暮らしていた
少女の雨音を守るため勝呂に雨音を託し、
二手に分かれた八田だったが、
勝呂の目の前で彼は、 無残な死体となる。
『弱きものは 死ぬ。当たり前だろう。
お前は弱いか?強いか?』
そう問いながら 八田の生首を拾い上げた男の
両腕はなく、 代わりに背中から生えた
紅蓮の触手が 八田の体を切り刻んでいた。
ほんの一瞬だった。
八田が 赤黒の鎧をまとうまでのほんの
数秒で その男はケリをつけた。
いままで、勝呂に戦う術を教え、
人間としてどう生きていくかを
教えてくれた家族のような友人は、目の前であっけなく引き千切られた。
それはまるでひき肉を 千切るかのように
いとも簡単に 勝呂らの目の前で
八田は体を引き裂かれ
ただの肉塊となってしまった。
雨音が泣き叫ぶ。
彼女もまた拾われた子。
兄貴同然の八田が目の前で怪物に食いちぎられていく様を目撃し、号哭する。
そきてなにより、そんな様を見ていた
少女が、我慢など出来るわけがなかった。
『貴様ぁぁぁぁあああああ!!!』
『やめろっ!死に急ぐな!』
勝呂は必死に雨音を止めようと手を伸ばすが
その努力もむなしく、髪を蛇のように
唸らせながら 雨音は その男へ
追撃を図った。
しかし、 男はありえない速度で雨音の死角へ回り腕を引きちぎりしまいには
腹を裂いた。
それは目に見えるという次元を超えており
時間が止まったに等しかったわけだが、
勝呂はその少女から血が噴水のように
噴き出していくその瞬間を見逃さなった
『無駄にはしねえよ』
血の涙を流しながら、勝呂は
起動する。 その 蟠を巻き始めた
紅蓮の触手達はドリルのように回転し
男の上半身を貫いた。
水道管が破裂したかのように
裂け目が血が噴射するが、
『ほう、 やるね、、』
と余裕の表情で笑ったその男は
勝呂の右半身の触手を食いちぎると
細い針金のような手を無数に背中から
出現させ串刺しにした。
『勝呂くん、だっけ? 俺は
八田くんにこの力を上げた張本人。
腕なしって呼ばれてるんだよね、
まあ名乗ったところで君は死んじゃうのだけれど、』
腕なしと名乗った男は ニヤニヤと笑いながら
その姿さらけ出した。
短髪で制服姿だったはず男の姿が
溶けていき中から現れたのは
まるで生肉のような色合いをした肉体と
包帯でぐるぐる巻きにされた顔だった。
包帯の間からはしっかりと
目が見開かれており勝呂の顔を舐めるように
見ていた。
『八田は 裏切ったんだ。 組織をね、
だから殺した。君らには関係ない。』
腕なしの 触手が刀のように構築されていき
這いつくばる 勝呂の四肢にさしていく
声を荒げても足りないくらいの
衝撃と痛みが勝呂の身体中を駆け巡る。
『もう終わりにしよう、いたぶるのは好きじゃないんだ、また生まれ変わって僕のこと覚えてたらおいでよ、相手してやるからさ』
そう言うと、腕なしは 勝呂の
頭めがけて刀を振り下ろした。
腕をちぎられ腹を貫かれた雨音の
泣きじゃくる顔が見える。
勝呂は叫ぶが、 刀の切っ先が目の前に迫る
もう終わりなのかと諦めかけたその時だった
『トレーダー社だ!』
老人の覇気ある声が後ろから聞こえ、
先ほどまで気持ちの悪い笑みを浮かべていた
腕なしの顔がこわばり
刀が消えた。
『あーあ、時間切れだわ、、まあいいや
裏切り者は殺せたし、じゃあね勝呂くん』
そう腕なしは告げると、巨大な羽のようなものを背中から出し空に飛び上がる。
勝呂は その光景をじっと見据えるだけしかできなかった。
殺してやる、あいつだけは
殺さねえと 殺さないと 殺してしまわないと
俺が…
、、その憎しみだけが心に刻まれたが、、
それに相反して、体が冷たくなっていく。
もう死ぬのか。
遠くで 叫ぶ、大人達の声が聞こえる、
雨音が 救急隊のような服装をした
もの達に運ばれていく。
勝呂はその閉じていく瞼から
見える雨音を見て ほくそ笑んだ。
彼女だけでも無事であればいい。
そして、俺は死のう、、
八田を守れなかった俺は死のう。
視界が暗くなっていき、
勝呂は目を閉じた。
『この者を本部へ運べ。』
1人の男が勝呂を指差し命令する
『え? この青年を?もう助かりませんよこの傷じゃ、ってまさか、、』
『この青年には生きる価値がある。
アニンバイツとしての素質がある。少なくとも俺にはそう感じたんだ。時間がない。
一か八か、 適合手術をすべきだ』
『し、、しかし…あの…その手段はっ……わかりました。 貴方がそこまで言うんだから、きっとそうなんでしょう… よし、運ぶぞ皆!』
その男の命令とあらば仕方ないとばかりに
担架に勝呂を乗せると 数人の男たちは
砂埃を撒き散らすヘリコプターの中へ
雨音と勝呂を運んだ。
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