アニンバイツ

飲杉田楽

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第3章 殲滅作戦始動編

23.出動③

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雨音はハイヒールを2度3度、 コツコツと
鳴らすと  水泡を  出現させ  それを
凝縮 させてから 指で弾いた

水泡弾というべきだろうか、
カウンターを狙う勝呂に
命中した  が、 全て拍手で防いだ

が、  

破裂する瞬間水が体力に飛び散り
一気に蒸気と化し、それは霧となった
視界をブラックアウトさせる濃霧の前に

勝呂の動きも鈍る
感覚を研ぎ澄まし  右手で作り出した
拍手を地面に当てた

その衝撃は大地をも蹴破るほどの威力で
あたり一面が瓦礫の山に成り果てていく。


平面として構築されていたはずの
アスファルトが悲鳴をあげ、 崩れ
飛び上がったかと思うとそれに続くようにして 周りのコンクリートや標識までもな
宙に浮き砂埃をあたり一面に吹かせ始めた

地面にヒビが入り隙間から火が姿を現わす
その火の手は雨音の足元にも迫り
それを避けようとステップを踏んだが

勝呂の拍手の衝撃によって悲鳴をあげた
アスファルト達が 雨音のハイヒールを
素直に受け入れてくれるはずもなく
一瞬で雨音が足場として捉えていた
大地が細かく砕け散っていく。

颯爽と次の拍手 を発動させる勝呂の前に
なす術なく 雨音は  あまりの衝撃に
液体化し始め、ぐにゃりと 
粘土質へと変貌を遂げる
地に足を取られる


これはダメだと悟った雨音は
瞬時にハイヒールを投げ捨て  
水を硬質化させて作り上げた 
ブーツを履いて屋根の上に避難した

地面は 蜷を巻き始めたかと思うと
諦めたかのように砕けてゆき
元の地面として再構築され、

歪みきったコンクリートやアスファルト達が
自分の定位置へと 戻っていった

雨音は溜息をつき、 
何かと恐ろしき輩だと勝呂を探した
『ここにいるぜ?』


息が止まった  

ほんの一瞬だが
雨音は息をすることをやめた

勝呂はいつの間にか 雨音の背後で
右手の人差し指を  雨音に向けていた
無駄な動きをしたら貫かれ
蜂の巣になってしまうのだろうと
恐れた雨音は なす術なく
嫌々、降伏の白旗を
揺らす思いで歯軋りしながら
両手をあげた。

『よろしい、判れば。』
ニヤリと口角を上げ、
ほくそ笑む勝呂。
それを見て もう戦いはうんざりだと
戦意喪失する雨音。
屋根でそんな不可解な行動をとる
2人を見ていた金髪オールバックの男が
けたたましい笑い声を響かせ、
2人を呼んだ。
『時間だ。お手洗い済ませたっぽいし、
早よう乗ってくれ。もう車出すぜ?』
そう男はいうと 頭の後ろで両手を組みながら
スタスタと駐車場の方へ消えていった。
屋根の上で一戦終えた2人は素直にその男の後に着いて行った。
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