オタクで陰キャでぼっちなラノベ系主人公の成り上がり

九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中

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8話 ふざけるなよ!

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 そんなことを考えていた時、教室の引き戸ががらっと開いた。

「ちょっと、優奈ー!?」
「あ、みゆう。どうしたの? 大声出して」

 隣のクラスの桐島さんのライブ友達が、いきなり教室に乗り込んできた。
 学校帰りによく2人でライブに行っている、と5月くらいのLIMEで教えてもらった子だろう。よく教室にきて、桐島さんとバンドの話をしている。

SUIスイのTwwiterみたわよ!?」

 食ってかからん勢いで、みゆうと呼ばれた女生徒は桐島さんに詰め寄った。

(SUIって⋯⋯)

 ああ、そうだ。確か、彼女の好きなバンド『デスラビット』の青い髪をしたボーカルが、そんな名前だった気がする。

「あの写真に写ってたスマホケースとキーホルダー、あんたのでしょ!?」
「えへへ。やっぱバレた?」

 てへっと可愛く桐島さんは舌を出して、恥ずかしそうに笑っていた。

(なんのことだ?)

 僕は咄嗟にSUIのTwwiterアカウントを見に行った。
 SUIの最新ツイートは、昨夜の夜中3時。内容は、『終電逃した~。友達とカラオケオール中』というもので、画像が添付されていた。

 その画像を開いてみると、薄暗いカラオケルームに、SUIのメロイックサインがされた手と、色々飲み物が置かれたテーブル。そのテーブルには⋯⋯今彼女が手に持っているスマホケースと、カバンについているキーホルダーが写り込んでいた。

(え⋯⋯? どういう、こと⋯⋯?)

 僕は、頭の中が真っ白になった。

「うっわ、やっぱり! これって駅前のカラオケ村の部屋だよね!? あんたら繋がってたの!?」
「うーん、繋がってるっていうか⋯⋯」

『繋がり』というのは、ファンの子とバンドマンが個人的に連絡を取り合う、または密会する、というビジュアル系シーンの闇を表す単語だ。これは、桐島さんがビジュアル系が好きだというので、僕も色々調べていたときに、偶然知ったことだった。

「今、SUIと付き合ってるの、私」
「はああああ!?」

 みゆうという人が叫んだが、僕も叫びたかった。
 いや、叫べすらしなかった。
 もう、頭の中がパニックだった。

「で、昨日カラオケオールして、家帰って、シャワーだけ浴びて学校来た、的な」

 恥ずかしそうにモジモジ言う桐島さん⋯⋯。
 僕は、そんな桐島さんを見たくてしょうがなかったのに⋯⋯どうして、こんなにも切ないんだろう?
 どうして、こんなどす黒い感情だけが、胸を満たしていくのだろう?

「え、いつから!? いつから付き合ってるの!?」
「うーん、先月末くらいかな? DMでもしよかったら遊ぼうって連絡きて、それで会って遊んでる時に、前から気になってて付き合いたいって言われて」
「うっそ!? SUIってガード固くてファンと繋がらないって有名なのに!」
「うん⋯⋯だから、私に連絡するのも、すごく緊張したんだって」

 すごく嬉しそうに、恥ずかしそうに、桐島さんはSUIとの馴れ初めを話していた。
 先月末⋯⋯ちょうど、彼女のメイクが変わり始めた時だった。もしかして、SUIの好みに合わせてメイクを濃くしたのだろうか。
 ふざけるなよ。
 ⋯⋯ふざけるなよ!!

「え、大丈夫? SUIに遊ばれてない? だって、腐ってもバンドマンでしょ? 確かにSUIは女ネタ上がったことないけど⋯⋯」
「わかんない⋯⋯けど、そういうの、ないって言ってくれたし、昨日も最寄りまで来てくれて、朝帰って、今日もバイト終わってから来てくれるんだって⋯⋯」
「え!? あのライブだとオラオラしてるSUIが!? めっちゃ大事にされてんじゃん!」
「うん、意外でしょ? ああ見えて、イチャ甘が大好きなんだよ、SUIって」

 いつも甘えてくるから可愛いんだぁ、と桐島さんが照れたように呟く。
 なんだよ、それ⋯⋯なんなんだよ、なんなんだよ!
 なんでそんなに可愛い顔をして、そんな絶望的なこと言ってんだよ!

 嘘だ。そんなの信じられるはずがない。
 桐島さん⋯⋯君は、僕と付き合うんでしょ?
 だって、ラノベだったらそうなるのに⋯⋯そうなるのに!

 僕と隣の席になって、たくさん話しかけてくれて、好きになってくれて⋯⋯それで、僕は「やれやれ」だなんて言いながら、いつも君のわがままに付き合って、一緒に過ごすんでしょ!?

 そんな言葉が頭の中で回っていて、いきなり僕は猛烈な吐き気に襲われた。
 その場に居てもたってもいられなくなって、トイレに駆け込んだ。そこで、今朝食べたものは全部吐き出した。
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