8 / 10
8話 ふざけるなよ!
しおりを挟む
そんなことを考えていた時、教室の引き戸ががらっと開いた。
「ちょっと、優奈ー!?」
「あ、みゆう。どうしたの? 大声出して」
隣のクラスの桐島さんのライブ友達が、いきなり教室に乗り込んできた。
学校帰りによく2人でライブに行っている、と5月くらいのLIMEで教えてもらった子だろう。よく教室にきて、桐島さんとバンドの話をしている。
「SUIのTwwiterみたわよ!?」
食ってかからん勢いで、みゆうと呼ばれた女生徒は桐島さんに詰め寄った。
(SUIって⋯⋯)
ああ、そうだ。確か、彼女の好きなバンド『デスラビット』の青い髪をしたボーカルが、そんな名前だった気がする。
「あの写真に写ってたスマホケースとキーホルダー、あんたのでしょ!?」
「えへへ。やっぱバレた?」
てへっと可愛く桐島さんは舌を出して、恥ずかしそうに笑っていた。
(なんのことだ?)
僕は咄嗟にSUIのTwwiterアカウントを見に行った。
SUIの最新ツイートは、昨夜の夜中3時。内容は、『終電逃した~。友達とカラオケオール中』というもので、画像が添付されていた。
その画像を開いてみると、薄暗いカラオケルームに、SUIのメロイックサインがされた手と、色々飲み物が置かれたテーブル。そのテーブルには⋯⋯今彼女が手に持っているスマホケースと、カバンについているキーホルダーが写り込んでいた。
(え⋯⋯? どういう、こと⋯⋯?)
僕は、頭の中が真っ白になった。
「うっわ、やっぱり! これって駅前のカラオケ村の部屋だよね!? あんたら繋がってたの!?」
「うーん、繋がってるっていうか⋯⋯」
『繋がり』というのは、ファンの子とバンドマンが個人的に連絡を取り合う、または密会する、というビジュアル系シーンの闇を表す単語だ。これは、桐島さんがビジュアル系が好きだというので、僕も色々調べていたときに、偶然知ったことだった。
「今、SUIと付き合ってるの、私」
「はああああ!?」
みゆうという人が叫んだが、僕も叫びたかった。
いや、叫べすらしなかった。
もう、頭の中がパニックだった。
「で、昨日カラオケオールして、家帰って、シャワーだけ浴びて学校来た、的な」
恥ずかしそうにモジモジ言う桐島さん⋯⋯。
僕は、そんな桐島さんを見たくてしょうがなかったのに⋯⋯どうして、こんなにも切ないんだろう?
どうして、こんなどす黒い感情だけが、胸を満たしていくのだろう?
「え、いつから!? いつから付き合ってるの!?」
「うーん、先月末くらいかな? DMでもしよかったら遊ぼうって連絡きて、それで会って遊んでる時に、前から気になってて付き合いたいって言われて」
「うっそ!? SUIってガード固くてファンと繋がらないって有名なのに!」
「うん⋯⋯だから、私に連絡するのも、すごく緊張したんだって」
すごく嬉しそうに、恥ずかしそうに、桐島さんはSUIとの馴れ初めを話していた。
先月末⋯⋯ちょうど、彼女のメイクが変わり始めた時だった。もしかして、SUIの好みに合わせてメイクを濃くしたのだろうか。
ふざけるなよ。
⋯⋯ふざけるなよ!!
「え、大丈夫? SUIに遊ばれてない? だって、腐ってもバンドマンでしょ? 確かにSUIは女ネタ上がったことないけど⋯⋯」
「わかんない⋯⋯けど、そういうの、ないって言ってくれたし、昨日も最寄りまで来てくれて、朝帰って、今日もバイト終わってから来てくれるんだって⋯⋯」
「え!? あのライブだとオラオラしてるSUIが!? めっちゃ大事にされてんじゃん!」
「うん、意外でしょ? ああ見えて、イチャ甘が大好きなんだよ、SUIって」
いつも甘えてくるから可愛いんだぁ、と桐島さんが照れたように呟く。
なんだよ、それ⋯⋯なんなんだよ、なんなんだよ!
なんでそんなに可愛い顔をして、そんな絶望的なこと言ってんだよ!
嘘だ。そんなの信じられるはずがない。
桐島さん⋯⋯君は、僕と付き合うんでしょ?
だって、ラノベだったらそうなるのに⋯⋯そうなるのに!
僕と隣の席になって、たくさん話しかけてくれて、好きになってくれて⋯⋯それで、僕は「やれやれ」だなんて言いながら、いつも君のわがままに付き合って、一緒に過ごすんでしょ!?
そんな言葉が頭の中で回っていて、いきなり僕は猛烈な吐き気に襲われた。
その場に居てもたってもいられなくなって、トイレに駆け込んだ。そこで、今朝食べたものは全部吐き出した。
「ちょっと、優奈ー!?」
「あ、みゆう。どうしたの? 大声出して」
隣のクラスの桐島さんのライブ友達が、いきなり教室に乗り込んできた。
学校帰りによく2人でライブに行っている、と5月くらいのLIMEで教えてもらった子だろう。よく教室にきて、桐島さんとバンドの話をしている。
「SUIのTwwiterみたわよ!?」
食ってかからん勢いで、みゆうと呼ばれた女生徒は桐島さんに詰め寄った。
(SUIって⋯⋯)
ああ、そうだ。確か、彼女の好きなバンド『デスラビット』の青い髪をしたボーカルが、そんな名前だった気がする。
「あの写真に写ってたスマホケースとキーホルダー、あんたのでしょ!?」
「えへへ。やっぱバレた?」
てへっと可愛く桐島さんは舌を出して、恥ずかしそうに笑っていた。
(なんのことだ?)
僕は咄嗟にSUIのTwwiterアカウントを見に行った。
SUIの最新ツイートは、昨夜の夜中3時。内容は、『終電逃した~。友達とカラオケオール中』というもので、画像が添付されていた。
その画像を開いてみると、薄暗いカラオケルームに、SUIのメロイックサインがされた手と、色々飲み物が置かれたテーブル。そのテーブルには⋯⋯今彼女が手に持っているスマホケースと、カバンについているキーホルダーが写り込んでいた。
(え⋯⋯? どういう、こと⋯⋯?)
僕は、頭の中が真っ白になった。
「うっわ、やっぱり! これって駅前のカラオケ村の部屋だよね!? あんたら繋がってたの!?」
「うーん、繋がってるっていうか⋯⋯」
『繋がり』というのは、ファンの子とバンドマンが個人的に連絡を取り合う、または密会する、というビジュアル系シーンの闇を表す単語だ。これは、桐島さんがビジュアル系が好きだというので、僕も色々調べていたときに、偶然知ったことだった。
「今、SUIと付き合ってるの、私」
「はああああ!?」
みゆうという人が叫んだが、僕も叫びたかった。
いや、叫べすらしなかった。
もう、頭の中がパニックだった。
「で、昨日カラオケオールして、家帰って、シャワーだけ浴びて学校来た、的な」
恥ずかしそうにモジモジ言う桐島さん⋯⋯。
僕は、そんな桐島さんを見たくてしょうがなかったのに⋯⋯どうして、こんなにも切ないんだろう?
どうして、こんなどす黒い感情だけが、胸を満たしていくのだろう?
「え、いつから!? いつから付き合ってるの!?」
「うーん、先月末くらいかな? DMでもしよかったら遊ぼうって連絡きて、それで会って遊んでる時に、前から気になってて付き合いたいって言われて」
「うっそ!? SUIってガード固くてファンと繋がらないって有名なのに!」
「うん⋯⋯だから、私に連絡するのも、すごく緊張したんだって」
すごく嬉しそうに、恥ずかしそうに、桐島さんはSUIとの馴れ初めを話していた。
先月末⋯⋯ちょうど、彼女のメイクが変わり始めた時だった。もしかして、SUIの好みに合わせてメイクを濃くしたのだろうか。
ふざけるなよ。
⋯⋯ふざけるなよ!!
「え、大丈夫? SUIに遊ばれてない? だって、腐ってもバンドマンでしょ? 確かにSUIは女ネタ上がったことないけど⋯⋯」
「わかんない⋯⋯けど、そういうの、ないって言ってくれたし、昨日も最寄りまで来てくれて、朝帰って、今日もバイト終わってから来てくれるんだって⋯⋯」
「え!? あのライブだとオラオラしてるSUIが!? めっちゃ大事にされてんじゃん!」
「うん、意外でしょ? ああ見えて、イチャ甘が大好きなんだよ、SUIって」
いつも甘えてくるから可愛いんだぁ、と桐島さんが照れたように呟く。
なんだよ、それ⋯⋯なんなんだよ、なんなんだよ!
なんでそんなに可愛い顔をして、そんな絶望的なこと言ってんだよ!
嘘だ。そんなの信じられるはずがない。
桐島さん⋯⋯君は、僕と付き合うんでしょ?
だって、ラノベだったらそうなるのに⋯⋯そうなるのに!
僕と隣の席になって、たくさん話しかけてくれて、好きになってくれて⋯⋯それで、僕は「やれやれ」だなんて言いながら、いつも君のわがままに付き合って、一緒に過ごすんでしょ!?
そんな言葉が頭の中で回っていて、いきなり僕は猛烈な吐き気に襲われた。
その場に居てもたってもいられなくなって、トイレに駆け込んだ。そこで、今朝食べたものは全部吐き出した。
0
あなたにおすすめの小説
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
幼馴染に10年片想いしてたら、冷酷御曹司にプロポーズされました
ほーみ
恋愛
春の匂いが、駅前の並木道をくすぐる。満開の桜の下、私はひとり歩いていた。駅までの道は、高校時代、彼とよく歩いた道だ。
制服姿の学生が笑いながらすれ違っていくのを横目に、私はスマホを見下ろした。
「今日、伝えるって決めたんじゃなかったの?」
送信したきり返信のないメッセージ。画面には「既読」の文字があるだけだった。
――渡瀬 湊。私が10年間片想いをしている、幼馴染。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで
嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。
誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。
でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。
このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。
そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語
執筆済みで完結確約です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる