前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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「どけっ、くせぇーんだよ」
「うっ…」

建国祭が終わり、静かになった市場に残飯や小銭が落ちていないかと夜道を探していると通りすがりの酔っぱらいに勢いよく背中を蹴られた。不意打ちの衝撃に中身もない胃が圧迫感で吐き気を催し、追いやられた路地裏へと倒れ込む。

なんとか空の木箱に寄り添って冷たい風を凌ぐ。けれど、凍えて悴む指先は汚れていて、ささくれの痛みも感じない程に冷えきっている。キューキューとお腹はいつまでも鳴り止まない。

建国祭の花火、綺麗だったなぁ、今日は誕生日なのに…コンビニのフライドチキンが恋しいよ。それで…チキンを食べ終わる頃にはインスタントラーメンが出来上がっていて…ふふっ、それが簡素なご飯だなんて、贅沢ね

「え、こんび…に?」

ズキン、と頭が痛んで、蹲る。ひとつを思い出したことで溢れ出した記憶はまるで早送り映画のように頭の中に流れ続ける。もちろん停止ボタンなんてものはなく、頭よりも痛んだ胸が張り裂けそうになった。

最後に見えたのは…黒髪で黒い瞳の私が、幸せを願っていた美しい少女の笑顔だった。

浅い呼吸を繰り返し、身体は痛みで冷たい地面に張り付いたように動かない。

流れた記憶の中ではコンクリートの道に並ぶ四角い丈夫な建物、鉄の車や鉄の飛行物体があることを私は当たり前のように眺めて生活していた。

それが自分の前世の記憶だと気付くと、パッとしない人生だったなと笑いそうになって切れた唇が顔を歪める。

「今よりは…全然マシ…だね」

今までの記憶、頬にたれた白銀の髪、最後に見えた少女の笑顔。

この少女、今の私の存在が、前世で読んでいた恋愛ファンタジー小説の中のヒロイン、それも虐げられる幼少期を送る少女だとすぐに気がついた。

「む、むり…」

ボロボロに汚れて擦り切れた服をぎゅっと掴んで自分の肩を抱きしめる。骨は浮き出ており、強く掴んだ肩や背中は打撲のせいで鈍く傷んだ。

小説を読んでいた時には、ひたすらにヒロイン頑張れこんちくしょー!!ヒロインだから!!未来は明るいから!!って涙を堪えて布団に包まりながら思っていたのに…今ではそんな前世の自分さえ憎らしくなる。

それもそのはずこのヒロイン、始まりは孤児、拾われた施設では虐待、お貴族様に養子にされても家族から召使い以下の扱いをされて虐め抜かれるというトリプルコンボ。おまけに、その後でも学園編や舞踏会編など、バリエーション豊かにフルボッコにされるのだ。現れるヒーロー達も多種多様でハッピーエンドまでの道のりがまぁ遠い遠い。そのおかげで二次創作の、その多種多様ルートにはお世話になったのを覚えている。

「まだまだ先の恋愛なんてもののために、これから何年もこんなのを我慢するのなんて…無理だよ」

前世を思い出したところで現状は変わらないし、腹は膨れない。お風呂にも入れず、擦り傷だらけの身体はとても痒い。隠れていても冬の風は容赦なく指先や頬を突き刺してくる。昨日から何も食べていない体は鉛のように重たくて、お金も頼るところも、魔力だって今は持っていない。

……………魔力。
「そうだ!まりょく!!」






*******
読んでいただきありがとうございます。
ノリと勢いと妄想力だけで書きました。すでに書き終えています。

拙い文章とご都合主義で名前すら決めていませんが、反応良ければ続きを載せようと思います。びびりですみません。
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