前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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刃先が狙いを定めたとばかりに私の眼前でキラリと光る。

「や、やめ…」
「お願いだからじっとしてて」

阻止しようと上げた声は、向かいあわせの男の手が頭上に見えて身構えてしまい、ギュッと目を瞑ったことで途切れてしまう。

ジャキッ

はらり、と私から離れた髪の切れ端が自我を持ったかのように輝いて、ゆらゆらと室内を舞った。


「うん、いい感じ」

鋏を納めた青年が、眉間を優しく撫でる。

恐る恐る開いた視界に映ったのは、まるで「美」だけを突き詰めて精巧に作られたお人形のような儚い少女だった。
どんなに小さな光をも逃さず反射するような潤いを帯びた鮮やかな赤い瞳の輝きが人形ではないのだと実感させられる。つるりと滑らかな白い肌は日焼けでほんのりと赤く染っている。血の通ったその小さな唇は針を突き立てれば、簡単に弾けてしまいそうだ。

そんな少女にぼーっと見蕩れていると、扉の叩く音が聞こえて、そちらへと視線を向けた。

「あら…べっぴんさん。アレクに任せてよかったわ」

扉からひょっこりと顔を出した酒場の女将さんマーサは、こちらを見て満足そうに頷いた。そしてそのまま部屋へと入ると、対面にいる青年、アレックスの頭をガシガシと撫でた。

「ちょ…っと…やめてくれよ」
「あっはっは、本当にこの子は…綺麗だねぇ、ねっ!アレクも見蕩れていたんだろう?」
「そっ、それはそうだけど…」

目の前にあった鏡が降ろされて、アレックスの真っ赤な顔が視界に映る。

「どうかな?変じゃない?」

心配そうにこちらを伺うアレックス。

「そんなことないです、むしろお仕事で忙しいはずなのに…ごめんなさい」

先月、民間の学習施設でお貴族様に認められて、屋敷の庭師へと就職したアレックス

平民から大出世したそんな彼が私の髪を整える為にわざわざ時間を割いてくれたのが申し訳なくなる。

「やりたくてやってることだから…それに喜んでくれたのなら、僕も嬉しいよ」

長年、弟妹の髪を整えてきたアレックスだ。経験と実力が自信に繋がっているのだろう。髪の毛を切られたことに少しの後悔はあったが、アレクへ笑顔を向ける。正直、満足している自分もいた。

「なんだか頭も軽くなったみたいですし、視界が開けてありがたいです」
「うーん、なんだか求めていた喜び方とは違うけど…ユフィが笑ってるならいっか」

そういって、ニカッと笑うアレクが頭を撫でてくれた。

ここ最近、平民や貴族を分け隔てなく参加させる行事が増えた。そして明日、この年で12歳を迎える子供たちのためのパーティが行われるということを今朝知ったのだ。今朝。

「1度でいいから娘を着飾ってみたかったんだよねぇ」
「一生に一度だよっ?」

そう言うマーサに期待を込めた眼差しを向けられれば、首を縦に振るしかなかった。

(マーサさん息子さんしかいないって言ってたもんなぁ…お世話になってるし断れないよ…)

どこから持ってきたのか分からない衣装箱の山をアレックスに運ばせるマーサは生き生きとしている。それがなんだかおかしくて、嬉しくて自然と笑みがこぼれた。


レイヴンと別れて約2年、私は12歳を目前にしていた。
以前と変わらない生活を送っている。小屋にはちょくちょく行っているが彼と会うことは一度もなかった。

「赤のドレスもいいけど、うーん…これなんてどうだい?」

相変わらずマーサは私を着飾るのに躍起になっている。





********


ここでやっと主人公ちゃんの名前が…。



主人公はユフィです。
お読み頂きありがとうございます!
お気に入りやしおり、反応があってとても嬉しいです。
それを励みに頑張ります!
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