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マーサが持ってきたドレスや装身具は思ったよりも多く、お店を出る頃には日が落ちかけていた。
簡単に纏めた髪束を、研いで加工した木の枝で留めようとするとその腕をアレックスに掴まれる。
「ユフィ、僕にやらせて」
「え?」
木の枝は既にアレックスの手の中にあって、するりと落ちた後ろ髪を優しく梳かされる。
「あ、アレックスさん…」
「本当、細くて綺麗な髪だね、妹達とは全然違うよ」
「そうですか?」
茶色の髪に薄緑色の瞳をした物腰柔らかな雰囲気の青年、アレックス15歳。
庭師に就職する前は親の手伝いでお店に野菜を卸していて、ユフィとはマーサのお店でよく世間話をしていた。
人見知りで稀有な見た目のユフィにも気さくに話しかけるアレックスは周りからも好かれている。
「はい、できた」
「ありがとうございます」
きつくも緩くもなく、後れ毛もない。慣れているのだとよく分かる。
手先が器用って羨ましいな…
ユフィは、ふとアレックスの手にあるものが気になって、指を差す。
「あれ?それ…」
「ん?お祝いだよ、よく似合ってる」
アレックスの手にユフィの髪を留めていた木の枝がある事に気付き、自身の頭に手を伸ばす。手触りで分かるのは複雑に編み込まれた金属製の丈夫な髪飾り。
ユフィは慌てて、アレックスへと頭を差し出した。
「絶対高価なやつですよね?頂けないですっ」
「ええっ…せっかくユフィに似合うと思って選んだのに」
「でもっ…せめてお金をっ」
「僕があげたいと思ったから…受け取って欲しい」
髪を纏めてもらった手前、自分で髪飾りを外すことは出来ない。そんなユフィとアレックスの押し問答が続く。
「あらまぁ、明日はそれがいいねぇ」
仕方なくユフィが髪飾りに手を伸ばそうとした時、店から顔を出したマーサの声で会話は終了した。
「また明日」
アレックスは逃げるように帰っていったので、諦めて森へと向かう。
錆びたり無くしたりしたら大変だ、と結局木の枝と交換した髪飾り。銀細工の中に薄緑色の葉っぱの形をした小さな石が散りばめられていた。
そろそろ魔力無しでは肌寒くなってきた湖に浮かんで、星を眺める。
アレックスに好意を向けられていることはなんとなく感じている。優しくて皆からも好かれてて仕事を持っていて、レイヴンみたいに凄くかっこいいって訳ではないけど告白されたらきっと付き合っちゃうんだろうな、って思ってた。自分の顔を鏡で見るまでは
私、綺麗だったな…
なんだか心にぽっかりと穴が空いたような気分。
息を止めたら苦しいし、瞼を閉じれば視界は当然真っ暗だ。それなのに、ふとした時に自分が他人であるような、俯瞰視点で見ているような感覚に陥る。
自分はちゃんとここで生きているのに、存在しているはずなのに、恐怖や喜びといった感情が一瞬にして根こそぎ抜け落ちていくような感覚。
「いつか本当にお人形さんになっちゃったりして…」
声に出せば、急激な寂しさに襲われる。その寂しさを追い出すようにわざと音を立てて水面を蹴った。
簡単に纏めた髪束を、研いで加工した木の枝で留めようとするとその腕をアレックスに掴まれる。
「ユフィ、僕にやらせて」
「え?」
木の枝は既にアレックスの手の中にあって、するりと落ちた後ろ髪を優しく梳かされる。
「あ、アレックスさん…」
「本当、細くて綺麗な髪だね、妹達とは全然違うよ」
「そうですか?」
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手先が器用って羨ましいな…
ユフィは、ふとアレックスの手にあるものが気になって、指を差す。
「あれ?それ…」
「ん?お祝いだよ、よく似合ってる」
アレックスの手にユフィの髪を留めていた木の枝がある事に気付き、自身の頭に手を伸ばす。手触りで分かるのは複雑に編み込まれた金属製の丈夫な髪飾り。
ユフィは慌てて、アレックスへと頭を差し出した。
「絶対高価なやつですよね?頂けないですっ」
「ええっ…せっかくユフィに似合うと思って選んだのに」
「でもっ…せめてお金をっ」
「僕があげたいと思ったから…受け取って欲しい」
髪を纏めてもらった手前、自分で髪飾りを外すことは出来ない。そんなユフィとアレックスの押し問答が続く。
「あらまぁ、明日はそれがいいねぇ」
仕方なくユフィが髪飾りに手を伸ばそうとした時、店から顔を出したマーサの声で会話は終了した。
「また明日」
アレックスは逃げるように帰っていったので、諦めて森へと向かう。
錆びたり無くしたりしたら大変だ、と結局木の枝と交換した髪飾り。銀細工の中に薄緑色の葉っぱの形をした小さな石が散りばめられていた。
そろそろ魔力無しでは肌寒くなってきた湖に浮かんで、星を眺める。
アレックスに好意を向けられていることはなんとなく感じている。優しくて皆からも好かれてて仕事を持っていて、レイヴンみたいに凄くかっこいいって訳ではないけど告白されたらきっと付き合っちゃうんだろうな、って思ってた。自分の顔を鏡で見るまでは
私、綺麗だったな…
なんだか心にぽっかりと穴が空いたような気分。
息を止めたら苦しいし、瞼を閉じれば視界は当然真っ暗だ。それなのに、ふとした時に自分が他人であるような、俯瞰視点で見ているような感覚に陥る。
自分はちゃんとここで生きているのに、存在しているはずなのに、恐怖や喜びといった感情が一瞬にして根こそぎ抜け落ちていくような感覚。
「いつか本当にお人形さんになっちゃったりして…」
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