前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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動物のお面やくじ引き、射的や楽器演奏、それに懐かしさを感じる美味しいお菓子。
前世では人混みを嫌い、遠慮していたはずのお祭りが子供に戻ったせいなのか…レイヴンが笑って勧めるからなのか、いつの間にか時間を忘れて楽しんでいた。

アレックスがくれた髪飾りは最後まで見つからなかった。庭師や常駐騎士の方まで探してくれていたらしく、落ちていたであろう大木の周りは落葉がひとつ残らず無くなっていた。後日見つかれば連絡すると言われたが、レイヴンがとりもってくれたため、任せることにした。

私の連絡先なんてないから正直助かったけど…




「皆様、楽しんで頂けましたでしょうか?」

凛と澄んだキーラ嬢の声は魔力式拡声器によって、聴衆全ての耳元に届く。

「貴族と平民…それが今も大きな溝になっている、ということは理解しています」
「ねぇ、なんか貴族のおじさんみたいな話し方不快なんだけど…もう帰らない?」
「……はいっ?」

こんな美少女に対しておじさんなんて表現する?というか不敬すぎない?…と驚愕してレイヴンの顔を見ると『飽きた』という表情を見せつけて、ユフィの指を弄って遊んでいる。


〝「キーラの声はうるさいし、聞きたくない」
「辞めるならちゃんと辞めるって言わないと駄目よ?お貴族様なら特に…それに禁呪があるんだよ?」
「えぇ…僕は大丈夫なのに……王子も帰っていいよ?」
「断る」

自身の命を左右させる書類を簡単に投げ出したレイヴンに呆れて、床に落ちた書類をユフィは丁寧にテーブルの上に広げる。

「『全ては私のお陰でしてよ?』って顔してさー、権力におんぶされたおじさんの演説みたいで気持ち悪いんだよねー」〟


不意に思い浮かぶ小説のシーン。

そうだ…小説内でレイヴンがいつからかは分からないがキーラの従者をしていたことがある。
レイヴンの美しい顔を気に入ったキーラが禁呪でレイヴンを縛っていたため、ガルシア家の労働者名簿から外すように正式な辞職方法を王子とヒロインが探していた。

その時の台詞が思い浮かんで、身体が固まる。


「……ィ……ユフィ!」
「えっ?あっ…ごめん」
「行こ」

「で………私が代わりに声をあげます。ですので学びの場で出会う機会がありましたら是非とも学友として、同じ歳の仲間として気軽にお声をかけて頂けるとうれし……」

繋がれた手に引かれて、キーラの声と盛り上がる声援が遠ざかっていくのをただただ黙って聞いていた。


2頭の黒い軍馬のような逞しい馬が引く車にエスコートされて、2人きりの空間。

「ねぇ、僕もう我慢できない…」
「えっ、えっ?!」

馬車の中、レイヴンに抱きしめられて角の隅にまで追いやられたユフィは困惑していた。
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