前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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レイヴン父

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クレイン・コンドラー18歳。

コンドラー公爵家嫡男、次期当主として厳しく教育を受けてきた。貴族の腹の探り合いも教われば分かりやすく、表情だけで相手を翻弄することも拷問を使ったやり方も学ぶ機会があったから覚えられた。そして、それを淡々とこなしてきた。

ただ一つ、クレインには分からないことがあった。女性から向けられる好意という感情。

文字としては分かっているが、経験した事の無い感情は気になったとしても、クレイン自身に芽生えることはない。

黒髪に鮮やかな青い瞳の容姿端麗なクレインはパーティや茶会では必ず女性に囲まれる。婚約者が居ないのだから当然だ。

娼婦や男色家の喜ぶ顔を幼い頃から見ていたクレインには、媚びても痛めつけてもいないのに好意を寄せる女性達の心がよく分からなかった。

どちらかと言うと弟のケイルの方が媚びることは上手く、人懐っこい性格が女性には受けると思っていた。が、ケイルは今、社交界の噂の種となっている。

「コンドラー公爵家の次男は男色家」

噂が広まる直前、学園で友人と喧嘩したらしいケイルが顔を真っ青にして震えていたのを覚えている。それ以来、ケイルは社交の場に出ていない。それでも公爵家というのは目立つものなのだろう。尾ひれを付けた噂話は今も泳ぎ続けて、人々を楽しませている。

「クレイン様が婚約者を作らないのも…」

余計なお世話だ。現当主の父が隣国で光魔法持ちを探しているというから、きっと俺の婚約もこんなに遅れているのだろう。

だが、そんな噂を黙っていれば家格に傷が付く。余計な噂にまたヒレを付けたご令嬢に笑いかければ、すぐに寄ってきた。

「お嬢さん、時間を持て余す私と踊っていただけないでしょうか?」




「いい加減にしてくれ」

自室に戻り、かっちり締めていた首元のネクタイを緩めれば、我慢していた言葉と溜息が漏れる。

必要な社交を済ませて、家に帰ればすぐにケイルの自室へと向かった。

「社交の場に出て、少し女性と踊ればいいんだ」
「噂がおさまるのなら、どうということはないだろう?」
「俺だけに背負わせるのか?なら勝手にしろ」

終始黙っていたケイルに対して吐き捨てた言葉に後悔もあったが、出てしまったものはしょうがない。ケイルが自分から動くまで放っておけばいい。


明日は希少な薬草が生える地域に住む部族に、採取させてもらっている感謝の挨拶をしなければならない。父の代わりに。野蛮だと聞くから早めに寝て、体調を万全にしておかなくてはならないだろう。

不在の父が探している光魔法持ちというのは希少でありながら災いの元でもある。
唯一光魔法持ちが誕生する故に「聖女」に頼りきりのお隣、聖王国のせいでもあるのだが。

それでも光魔法持ちが大事なのは、その魔力の柔軟性にあった。本人がどんなに魔力が少なくても治癒魔法が使えなくとも、溢れる魔力が周りの人間の魔力や体力を引き上げ、底上げをしてくれる。

そして光魔法持ちの母体から産まれた子供は、稀に不死に近い肉体を得る。

それをお隣は分かっていない。治癒魔法を使えない光魔法持ちは使えないからと捨てられるか売られるのみ。街中には孤児が溢れていると聞く。

それでも聖王国でしか光魔法持ちは生まれないのだから、今も国が潰れないでいられるのだろう。

光魔法なんかなくても俺は丈夫だ。若くして訓練中に脚を痛めた父はそんな光魔法に縋っているようにも見える。息子が健康なだけじゃだめなのだろうか?

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