前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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レイヴン父

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「お久しぶりです。公爵閣下、この度はおめでとうございます」

大袈裟に忠誠の礼を取るケイルに、クレインは冷たい視線を送った。

「あはっ、兄さんは相変わらず怖いなぁ」
「挨拶はいい、本題を話せ」
「えー、手紙届かなかった?それより、将来有望な後継は可愛くないのー?」

ケイルの言葉を無視し、お茶を用意したメイドを扉の外へと下がらせる。
二人になった部屋で、クレインはあげていた前髪をぐしゃりと下ろし、「俺の子供ではない」と、言いかけて代わりに紅茶を飲み干した。

「メアは大丈夫なのか」
「今は意識も戻ってるし元気だよー、なんというかあれは愛し子と言うより「精霊のおもちゃ」だったからねぇ」

ケイルの、あまりに無神経な言葉にクレインが持つティーカップはガチャリと音を立てて、ひび割れる。

「どうして今まで黙ってたんだ」
「物に当たるのやめなよ…どうせ報告したら会いに行ってたでしょー?殺す気?」

メアが2年前に精霊の森へと入り、精霊の気分を害して呪術をかけられていた、その様な内容の手紙が昨日届いていた。

今すぐにでも森へと駆け出したかったクレインは、光魔法持ちが丈夫な男児を産んだ、と喜ぶ家臣等の「おめでとうございます」と言う声に阻まれていた。

「メアさんがさー、諦めがついたら知らせてもいいって言ったんだよー?」

「諦め」の言葉にツキリと傷む胸を押さえたクレインは下唇を噛む。

諦めてもいい…そう思ったのは俺自身だ、メアに言われて傷付く資格は俺にはない……

紅茶にミルクと砂糖を大量に入れたケイルはそれをひとくち飲むと、俯くクレインに構わず、これまでのことを話した。


メアにかけられた呪術は、「好き」な人に近付くと傷つけられる、というもの。

精霊は最初にメアの「好き」という感情に興味を持ち、精霊にその「好き」を向けてくれるなら遊んであげても良いと言った。メアはその精霊のお願いに頷いたが、精霊に「好き」だと言っても、抱きしめても思いは届かなかった。

やがて飽きた精霊が「嘘つき」と怒り、「お前の「好き」が「嫌い」に変わるのが見てみたい」と言って消えた。

その後、精霊の森を抜けて、心配して探していた父がメアに駆け寄ると腕に痛みが走り、見てみると二の腕が大きく裂けていた。それを見たメアの父がさらに近寄るとメアの背中にまたひとつ大きな傷が出来た。

「近寄らないで」と父に叫んだメアの耳元に精霊の笑い声が聞こえて、気を失ったメアを父が抱き留めた時にはその現象は収まっていた。


ケイルは「まっ、こんな感じ」と話し終えると紅茶を口に含み、クレインの膝に置かれた真っ白な拳を見る。

「今はお父さんともお喋りできるし外も歩けるから大丈夫だよー」
「そうか」
「うん、でも呪術ってよく分かんないでしょー?どんな目的で掛けたかも分かんないし、一日で解けた人もいれば、今でも解けてない人も居るし」
「………」
「メアさんの呪術が薄れてるか解けてるか分かんないんだよねー」
「……何が言いたいんだ」
「僕は母上似だし?あんまり似てないから大丈夫なのかも…だからさぁ」

ケイルが提案したのは、呪術研究のためにメアに会うことだった。
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