47 / 79
レイヴン父
しおりを挟む
「お久しぶりです。公爵閣下、この度はおめでとうございます」
大袈裟に忠誠の礼を取るケイルに、クレインは冷たい視線を送った。
「あはっ、兄さんは相変わらず怖いなぁ」
「挨拶はいい、本題を話せ」
「えー、手紙届かなかった?それより、将来有望な後継は可愛くないのー?」
ケイルの言葉を無視し、お茶を用意したメイドを扉の外へと下がらせる。
二人になった部屋で、クレインはあげていた前髪をぐしゃりと下ろし、「俺の子供ではない」と、言いかけて代わりに紅茶を飲み干した。
「メアは大丈夫なのか」
「今は意識も戻ってるし元気だよー、なんというかあれは愛し子と言うより「精霊のおもちゃ」だったからねぇ」
ケイルの、あまりに無神経な言葉にクレインが持つティーカップはガチャリと音を立てて、ひび割れる。
「どうして今まで黙ってたんだ」
「物に当たるのやめなよ…どうせ報告したら会いに行ってたでしょー?殺す気?」
メアが2年前に精霊の森へと入り、精霊の気分を害して呪術をかけられていた、その様な内容の手紙が昨日届いていた。
今すぐにでも森へと駆け出したかったクレインは、光魔法持ちが丈夫な男児を産んだ、と喜ぶ家臣等の「おめでとうございます」と言う声に阻まれていた。
「メアさんがさー、諦めがついたら知らせてもいいって言ったんだよー?」
「諦め」の言葉にツキリと傷む胸を押さえたクレインは下唇を噛む。
諦めてもいい…そう思ったのは俺自身だ、メアに言われて傷付く資格は俺にはない……
紅茶にミルクと砂糖を大量に入れたケイルはそれをひとくち飲むと、俯くクレインに構わず、これまでのことを話した。
メアにかけられた呪術は、「好き」な人に近付くと傷つけられる、というもの。
精霊は最初にメアの「好き」という感情に興味を持ち、精霊にその「好き」を向けてくれるなら遊んであげても良いと言った。メアはその精霊のお願いに頷いたが、精霊に「好き」だと言っても、抱きしめても思いは届かなかった。
やがて飽きた精霊が「嘘つき」と怒り、「お前の「好き」が「嫌い」に変わるのが見てみたい」と言って消えた。
その後、精霊の森を抜けて、心配して探していた父がメアに駆け寄ると腕に痛みが走り、見てみると二の腕が大きく裂けていた。それを見たメアの父がさらに近寄るとメアの背中にまたひとつ大きな傷が出来た。
「近寄らないで」と父に叫んだメアの耳元に精霊の笑い声が聞こえて、気を失ったメアを父が抱き留めた時にはその現象は収まっていた。
ケイルは「まっ、こんな感じ」と話し終えると紅茶を口に含み、クレインの膝に置かれた真っ白な拳を見る。
「今はお父さんともお喋りできるし外も歩けるから大丈夫だよー」
「そうか」
「うん、でも呪術ってよく分かんないでしょー?どんな目的で掛けたかも分かんないし、一日で解けた人もいれば、今でも解けてない人も居るし」
「………」
「メアさんの呪術が薄れてるか解けてるか分かんないんだよねー」
「……何が言いたいんだ」
「僕は母上似だし?あんまり似てないから大丈夫なのかも…だからさぁ」
ケイルが提案したのは、呪術研究のためにメアに会うことだった。
大袈裟に忠誠の礼を取るケイルに、クレインは冷たい視線を送った。
「あはっ、兄さんは相変わらず怖いなぁ」
「挨拶はいい、本題を話せ」
「えー、手紙届かなかった?それより、将来有望な後継は可愛くないのー?」
ケイルの言葉を無視し、お茶を用意したメイドを扉の外へと下がらせる。
二人になった部屋で、クレインはあげていた前髪をぐしゃりと下ろし、「俺の子供ではない」と、言いかけて代わりに紅茶を飲み干した。
「メアは大丈夫なのか」
「今は意識も戻ってるし元気だよー、なんというかあれは愛し子と言うより「精霊のおもちゃ」だったからねぇ」
ケイルの、あまりに無神経な言葉にクレインが持つティーカップはガチャリと音を立てて、ひび割れる。
「どうして今まで黙ってたんだ」
「物に当たるのやめなよ…どうせ報告したら会いに行ってたでしょー?殺す気?」
メアが2年前に精霊の森へと入り、精霊の気分を害して呪術をかけられていた、その様な内容の手紙が昨日届いていた。
今すぐにでも森へと駆け出したかったクレインは、光魔法持ちが丈夫な男児を産んだ、と喜ぶ家臣等の「おめでとうございます」と言う声に阻まれていた。
「メアさんがさー、諦めがついたら知らせてもいいって言ったんだよー?」
「諦め」の言葉にツキリと傷む胸を押さえたクレインは下唇を噛む。
諦めてもいい…そう思ったのは俺自身だ、メアに言われて傷付く資格は俺にはない……
紅茶にミルクと砂糖を大量に入れたケイルはそれをひとくち飲むと、俯くクレインに構わず、これまでのことを話した。
メアにかけられた呪術は、「好き」な人に近付くと傷つけられる、というもの。
精霊は最初にメアの「好き」という感情に興味を持ち、精霊にその「好き」を向けてくれるなら遊んであげても良いと言った。メアはその精霊のお願いに頷いたが、精霊に「好き」だと言っても、抱きしめても思いは届かなかった。
やがて飽きた精霊が「嘘つき」と怒り、「お前の「好き」が「嫌い」に変わるのが見てみたい」と言って消えた。
その後、精霊の森を抜けて、心配して探していた父がメアに駆け寄ると腕に痛みが走り、見てみると二の腕が大きく裂けていた。それを見たメアの父がさらに近寄るとメアの背中にまたひとつ大きな傷が出来た。
「近寄らないで」と父に叫んだメアの耳元に精霊の笑い声が聞こえて、気を失ったメアを父が抱き留めた時にはその現象は収まっていた。
ケイルは「まっ、こんな感じ」と話し終えると紅茶を口に含み、クレインの膝に置かれた真っ白な拳を見る。
「今はお父さんともお喋りできるし外も歩けるから大丈夫だよー」
「そうか」
「うん、でも呪術ってよく分かんないでしょー?どんな目的で掛けたかも分かんないし、一日で解けた人もいれば、今でも解けてない人も居るし」
「………」
「メアさんの呪術が薄れてるか解けてるか分かんないんだよねー」
「……何が言いたいんだ」
「僕は母上似だし?あんまり似てないから大丈夫なのかも…だからさぁ」
ケイルが提案したのは、呪術研究のためにメアに会うことだった。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる