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レイヴン9
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キーラの口から「禁呪」のワードが出たことで、影はキーラの周辺も探すことになった。その度、レイヴンはキーラが部屋を空ける時間を作るために買い物など外に誘う機会を増やした。
その日も、パーティ用の装具などを見に行きませんか、とキーラを連れ街中へ繰り出していた。
「これなんてどうかしら」
「煌びやかですね、ですが首が重くなりそうです」
キーラの手には、大ぶりの青い宝石がついたネックレス。
誘っといてなんだが、やはり女性の趣味にはついていけないとレイヴンは宝飾店の窓の外によそ見をする。
宝飾店の反対側には鍛冶屋があって、そこに見覚えのある人物がいることに気が付いた。
(あの茶髪…)
男は職人と楽しそうに話をしている。その手には銀細工の髪飾りがあった。嫌な予感がする
買い物を終え、帰宅すると体調が悪いから、とキーラ嬢に断りを入れ、部屋から抜け出すと動きやすいワンピースに着替え、すぐに鍛冶屋へ向かった。
その鍛冶屋は冒険者向きの店で剣や盾を売っていたが、魔法石のネックレスやイヤリング、髪飾りも置いていた。価格は魔法石や宝石などの飾り石を持参すれば安くなるシステムのようだ。
「お嬢ちゃん、何か気になるものでもあったか?」
先程、茶髪の男と話していた職人が不思議そうにレイヴンを見て話しかけてくる。
「見たことない嬢ちゃんだが…まさか迷子じゃ」
「あの、先程、男性が髪飾りを買っていかれませんでしたか?」
「あー、アレクのことか?ははーん、あいつもモテるねぇ、ふむ…嬢ちゃん、残念だがアレクは諦めな」
「え、いや、違う」
職人はニヤニヤと顎を撫でていたが眉を八の字に下げると、レイヴンを慰めるようにぽんぽんと頭を叩いた。
「あの髪飾りを贈る子にプロポーズするんだと!」
「は?」
「……な、なんだ悪いことは言わねぇ、嬢ちゃんならこの先もっと良い男が」
「これ…加工してくれない?」
無表情になったレイヴンを見て、職人は後ずさりをする。そんなレイヴンが冷たい眼差しのまま微笑み、ガラスケースにある翼を模した髪飾りを指さした。
パーティ前日の夕方、あいつは案の定、髪飾りをユフィに無理矢理付けた。それだけじゃなく勝手に髪を切り、ベタベタと触っていた。
だからあいつの職場を異動させた。以前、ガルシア侯爵の所有する別邸に人手が足りてないところがあると聞いていたから、ちょうどよかった。
寮生活にはなるが条件も給金も良い。早朝には迎えを送るからと「息子さんがよく働いてくださっているおかげです、よろしくお願いいたしますね」と令嬢の顔で笑えば、あいつの両親は喜んでいた。
貴族の特権てのは本当にずるいな、と思いながらもあいつがユフィに触れたことが頭に浮かんでどうしようもない不安が襲ってくる。
次の日は皆がパーティの準備で忙しそうにしていたため、「体調が優れない」と言うレイヴンを心配したキーラも「ゆっくり休んでください」というとすぐに姿を消した。キーラの部屋に開かない机の引出しがあるから、と影達も機を狙い、忙しそうにしている。
静かになった部屋の中、ドレスに着替えて隠密と隠蔽の魔法をかけ、ユフィを探しに外へ飛び出した。
馬車乗り場で見つけたユフィはその容姿を晒し、とても目立っていた。チラチラと頬を染める男らもいて、不愉快だ。同じ馬車に乗ろうとする男らを押しのけ、真後ろにつくとこっそりユフィに隠蔽魔法をかけた。
馬車の中、あいつの髪飾りを出してきたから壊してやりたくなったけど、無くなったと知ったらパーティに行かずに探すかもしれない。ズキズキと痛む胸を押さえて緩く纏めた髪にその髪飾りを付ける。
だけど、その手に触れて気付いてもらえないのも、あいつの髪飾りを付けているのも耐えられなかった。
侯爵邸に着いて急いで部屋に戻り、化粧を落として、一着だけ持ってきていた男用の喪服のスーツを着ると髪飾りを持って再び庭園に飛び出す。
ユフィはすぐに見つかった。僕が隠蔽魔法をかけたせいで、人混みの中にぽつんと立っている。ゆっくりと近付いて、目の前に来てもユフィは気付かない。
どうしてキーラにそんな顔をするの?
僕のことはもう忘れちゃったの
壇上のキーラを見つめるユフィは空虚な目をしていたかと思えば、その目は一瞬で悲痛に歪む。
思わず抱き締めれば震えているのが分かった。だけど、僕の顔を見て驚いた顔をしたから、ほっと安心した。
キスは出来なかったけど、ユフィの額に落とし忘れた僕の口紅がついて、僕だけの印みたいで、それが嬉しくて我慢した。
恥ずかしがるユフィをからかっていたら、いつの間にか前みたいに表情がコロコロ変わる彼女に戻っていて。会えなくて我慢していたことが溢れて、連れ回して怒られたけど、それすらも嬉しくて久しぶりに息をしているような気持ちになった。
嫉妬心丸出しで恥じる僕に優しい顔で「綺麗」と言ってくれるのはユフィだけだ
泣いて、笑って、怒って、寂しがるのも喜ぶのも、その全ての原因が僕であって欲しい。ユフィ以外は何もいらない。
ごめんね、ユフィ…僕はもう君のことを手放してあげられそうにないや
その日も、パーティ用の装具などを見に行きませんか、とキーラを連れ街中へ繰り出していた。
「これなんてどうかしら」
「煌びやかですね、ですが首が重くなりそうです」
キーラの手には、大ぶりの青い宝石がついたネックレス。
誘っといてなんだが、やはり女性の趣味にはついていけないとレイヴンは宝飾店の窓の外によそ見をする。
宝飾店の反対側には鍛冶屋があって、そこに見覚えのある人物がいることに気が付いた。
(あの茶髪…)
男は職人と楽しそうに話をしている。その手には銀細工の髪飾りがあった。嫌な予感がする
買い物を終え、帰宅すると体調が悪いから、とキーラ嬢に断りを入れ、部屋から抜け出すと動きやすいワンピースに着替え、すぐに鍛冶屋へ向かった。
その鍛冶屋は冒険者向きの店で剣や盾を売っていたが、魔法石のネックレスやイヤリング、髪飾りも置いていた。価格は魔法石や宝石などの飾り石を持参すれば安くなるシステムのようだ。
「お嬢ちゃん、何か気になるものでもあったか?」
先程、茶髪の男と話していた職人が不思議そうにレイヴンを見て話しかけてくる。
「見たことない嬢ちゃんだが…まさか迷子じゃ」
「あの、先程、男性が髪飾りを買っていかれませんでしたか?」
「あー、アレクのことか?ははーん、あいつもモテるねぇ、ふむ…嬢ちゃん、残念だがアレクは諦めな」
「え、いや、違う」
職人はニヤニヤと顎を撫でていたが眉を八の字に下げると、レイヴンを慰めるようにぽんぽんと頭を叩いた。
「あの髪飾りを贈る子にプロポーズするんだと!」
「は?」
「……な、なんだ悪いことは言わねぇ、嬢ちゃんならこの先もっと良い男が」
「これ…加工してくれない?」
無表情になったレイヴンを見て、職人は後ずさりをする。そんなレイヴンが冷たい眼差しのまま微笑み、ガラスケースにある翼を模した髪飾りを指さした。
パーティ前日の夕方、あいつは案の定、髪飾りをユフィに無理矢理付けた。それだけじゃなく勝手に髪を切り、ベタベタと触っていた。
だからあいつの職場を異動させた。以前、ガルシア侯爵の所有する別邸に人手が足りてないところがあると聞いていたから、ちょうどよかった。
寮生活にはなるが条件も給金も良い。早朝には迎えを送るからと「息子さんがよく働いてくださっているおかげです、よろしくお願いいたしますね」と令嬢の顔で笑えば、あいつの両親は喜んでいた。
貴族の特権てのは本当にずるいな、と思いながらもあいつがユフィに触れたことが頭に浮かんでどうしようもない不安が襲ってくる。
次の日は皆がパーティの準備で忙しそうにしていたため、「体調が優れない」と言うレイヴンを心配したキーラも「ゆっくり休んでください」というとすぐに姿を消した。キーラの部屋に開かない机の引出しがあるから、と影達も機を狙い、忙しそうにしている。
静かになった部屋の中、ドレスに着替えて隠密と隠蔽の魔法をかけ、ユフィを探しに外へ飛び出した。
馬車乗り場で見つけたユフィはその容姿を晒し、とても目立っていた。チラチラと頬を染める男らもいて、不愉快だ。同じ馬車に乗ろうとする男らを押しのけ、真後ろにつくとこっそりユフィに隠蔽魔法をかけた。
馬車の中、あいつの髪飾りを出してきたから壊してやりたくなったけど、無くなったと知ったらパーティに行かずに探すかもしれない。ズキズキと痛む胸を押さえて緩く纏めた髪にその髪飾りを付ける。
だけど、その手に触れて気付いてもらえないのも、あいつの髪飾りを付けているのも耐えられなかった。
侯爵邸に着いて急いで部屋に戻り、化粧を落として、一着だけ持ってきていた男用の喪服のスーツを着ると髪飾りを持って再び庭園に飛び出す。
ユフィはすぐに見つかった。僕が隠蔽魔法をかけたせいで、人混みの中にぽつんと立っている。ゆっくりと近付いて、目の前に来てもユフィは気付かない。
どうしてキーラにそんな顔をするの?
僕のことはもう忘れちゃったの
壇上のキーラを見つめるユフィは空虚な目をしていたかと思えば、その目は一瞬で悲痛に歪む。
思わず抱き締めれば震えているのが分かった。だけど、僕の顔を見て驚いた顔をしたから、ほっと安心した。
キスは出来なかったけど、ユフィの額に落とし忘れた僕の口紅がついて、僕だけの印みたいで、それが嬉しくて我慢した。
恥ずかしがるユフィをからかっていたら、いつの間にか前みたいに表情がコロコロ変わる彼女に戻っていて。会えなくて我慢していたことが溢れて、連れ回して怒られたけど、それすらも嬉しくて久しぶりに息をしているような気持ちになった。
嫉妬心丸出しで恥じる僕に優しい顔で「綺麗」と言ってくれるのはユフィだけだ
泣いて、笑って、怒って、寂しがるのも喜ぶのも、その全ての原因が僕であって欲しい。ユフィ以外は何もいらない。
ごめんね、ユフィ…僕はもう君のことを手放してあげられそうにないや
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