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誕生日が過ぎたらレイヴンと国を出るとは言ったものの条件をつけた。
建国祭が終わって、冒険者登録を済ませてから国を出ること
最初にレイヴンの住んでた国に行くこと
そして隠し事はしないでほしいということ
最後の条件に黙り込んでいたレイヴンだったが「国を出たら教えてあげる」と了承してくれた。
別れ際に「建国祭までは会えないかもだけどお祭りは一緒に回ろうね」と、いつものあざとい顔でお願いしてきたレイヴンに、明日は会えないんだと寂しく思う自分がいた。それに気付いて赤面し、またレイヴンにからかわれた。
次の日からユフィは国を出る準備を始めた。市場で仲良くなった人達に会う度に、12歳になったらこの国を出る、と挨拶をして、旅に必要な鞄やナイフを新調していった。
「がんばれよ」
「いつでも戻っておいで」
「さらわれないか心配だよ」
マーサも市場の人も笑顔で答えてくれる。「聖女」のことは気付いていたようで、それでもユフィのことは黙っていてくれた。その優しさに胸が暖かくなって離れ難くもなった。
「あんたが毎日持ってくるもんだから…肉はもう充分だよ、明日は建国祭なんだから楽しんできな?」
「え、足りますか?」
「保存方法が完璧だったから有り余ってるくらいだよ、それに今日たんまり仕込んだからね」
快活に笑うマーサの言葉に俯いてしまう。正直、孤児としてのこの国での経験は今でもトラウマを残している。それにレイヴンと会いたいという気持ちは日に日に大きくなっていた。だけど、市場で触れ合うこの時間は、いつの間にかユフィの唯一の楽しみになっていたのだと気付く。
名残惜しくて、出されたホットミルクをちびちびと飲んだ。
「ユフィが泣き虫だったとはねぇ…」
「泣いてな…い」
「ほら……泣かないで」
マーサはカウンターから出るとユフィをぎゅっと抱き締めた。
「あんたがどこに居ても私はあんたをかわいいかわいい娘だと思ってるよ、だから辛くなったらいつでもここにおいでね」
ユフィは気づかないうちに嗚咽を漏らして泣いていた。暖かくて、洗剤の匂いがして、乾燥した指の感触が頬を擽る。
マーサさんは今の私のお母さんだった。上手く笑えない私を笑顔にしてくれる市場のみんなが私の家族だった。私にも居場所があったのだと気付いて、嬉しくて寂しくて苦しくなった。
「ほら、もう泣き止んで…じゃないとデートに響くよ」
「うぅ…はい」
「暖かいタオル持ってくるよ」
「グス…ありがとうございます」
ちょうどマーサが奥に引っ込んだ時、お客さんが入ってきたので重たく晴れた瞼を隠すように外套を深く被った。
◇◇◇◇◇◇◇
レイヴンside
キーラの部屋に隠されていたのは古代遺物だった。用途は分からないが翼の生えた鳥のようにも見える金属の塊。
その鳥の腹には古代文字が書かれているが見たことのないものだった。
闇市で手に入れたであろうそれは、証明書もなく被害もないため、摘発する理由にはならなかった。
シュエットの影からは、とりあえずは持ち帰ってケイルに見て貰わないと分からないということで撤退の要請が出る。
キーラの部屋には古代遺物を複製した偽物を忍ばせ、レイヴンは転移陣で帰れるからと影達を帰らせて残ることにした。
「えー、寂しいなぁ」
指輪から聞こえるケイルの声は相変わらずでレイヴンは無視をする。
「じゃあ、そのお嬢様がなんで精霊に興味あるのか探ってきてねー」
めんどくさい任務は貰ったが、ユフィとの時間が作れるのは嬉しかった。
シュエットの影が帰り、代わりにコンドラーのメイドがやってくる。相変わらず無表情で気味が悪いが関心を示してこない分、動きやすかった。
それからは毎日ユフィに会いに行った。
面倒くさそうな顔をしながら頬を染めて、繋いだ手が離れると名残惜しそうにするユフィが可愛くて仕方なかった。
合間にキーラへの聞き込みをするが、夢見る少女のようでしかなかった。
「精霊に会ってみたいんです」
「きっと悪いようにはならないと思うのです」
最終的に精霊の森に案内してくれ、と言い出す始末で限界が来ていた。
そろそろ帰ろうかな、と思う時にユフィが光魔法持ちだということを知った。ユフィと出会って魔力の増加に違和感があったから、驚きはしなかった。
だけどあのパーティの時、確かに2人に認識阻害の隠蔽魔法をかけたはずなのにぶつかったヘリオスは、その魔法を無効化してユフィに気付いたらしい。
ヘリオスは騎士団を動かし、キーラもユフィを探すのに躍起になっている。
ユフィにいつ言おうか迷っている間に、市場の人達にも知れ渡っていた。いよいよ時間の問題だと思ったけど、ユフィは一緒に帝国に来てくれると言ってくれた。
条件は厳しかったけど、きっとユフィなら受け止めてくれる…
だけど、神様はいつだって僕に意地悪だ
「レイラ様!「聖女」様が見つかったらしいの!!」
僕は興奮するキーラの言葉に笑うことすら出来なかった
***********
レイヴンターンを分けようかと悩みました。でも分けると長くなっちゃうので省略して一緒にしてみました!!!
分かりにくかったらすみません(;_;)
しおりやお気に入り、自信と励みになります。
いつもお時間頂きありがとうございますm(_ _)m
建国祭が終わって、冒険者登録を済ませてから国を出ること
最初にレイヴンの住んでた国に行くこと
そして隠し事はしないでほしいということ
最後の条件に黙り込んでいたレイヴンだったが「国を出たら教えてあげる」と了承してくれた。
別れ際に「建国祭までは会えないかもだけどお祭りは一緒に回ろうね」と、いつものあざとい顔でお願いしてきたレイヴンに、明日は会えないんだと寂しく思う自分がいた。それに気付いて赤面し、またレイヴンにからかわれた。
次の日からユフィは国を出る準備を始めた。市場で仲良くなった人達に会う度に、12歳になったらこの国を出る、と挨拶をして、旅に必要な鞄やナイフを新調していった。
「がんばれよ」
「いつでも戻っておいで」
「さらわれないか心配だよ」
マーサも市場の人も笑顔で答えてくれる。「聖女」のことは気付いていたようで、それでもユフィのことは黙っていてくれた。その優しさに胸が暖かくなって離れ難くもなった。
「あんたが毎日持ってくるもんだから…肉はもう充分だよ、明日は建国祭なんだから楽しんできな?」
「え、足りますか?」
「保存方法が完璧だったから有り余ってるくらいだよ、それに今日たんまり仕込んだからね」
快活に笑うマーサの言葉に俯いてしまう。正直、孤児としてのこの国での経験は今でもトラウマを残している。それにレイヴンと会いたいという気持ちは日に日に大きくなっていた。だけど、市場で触れ合うこの時間は、いつの間にかユフィの唯一の楽しみになっていたのだと気付く。
名残惜しくて、出されたホットミルクをちびちびと飲んだ。
「ユフィが泣き虫だったとはねぇ…」
「泣いてな…い」
「ほら……泣かないで」
マーサはカウンターから出るとユフィをぎゅっと抱き締めた。
「あんたがどこに居ても私はあんたをかわいいかわいい娘だと思ってるよ、だから辛くなったらいつでもここにおいでね」
ユフィは気づかないうちに嗚咽を漏らして泣いていた。暖かくて、洗剤の匂いがして、乾燥した指の感触が頬を擽る。
マーサさんは今の私のお母さんだった。上手く笑えない私を笑顔にしてくれる市場のみんなが私の家族だった。私にも居場所があったのだと気付いて、嬉しくて寂しくて苦しくなった。
「ほら、もう泣き止んで…じゃないとデートに響くよ」
「うぅ…はい」
「暖かいタオル持ってくるよ」
「グス…ありがとうございます」
ちょうどマーサが奥に引っ込んだ時、お客さんが入ってきたので重たく晴れた瞼を隠すように外套を深く被った。
◇◇◇◇◇◇◇
レイヴンside
キーラの部屋に隠されていたのは古代遺物だった。用途は分からないが翼の生えた鳥のようにも見える金属の塊。
その鳥の腹には古代文字が書かれているが見たことのないものだった。
闇市で手に入れたであろうそれは、証明書もなく被害もないため、摘発する理由にはならなかった。
シュエットの影からは、とりあえずは持ち帰ってケイルに見て貰わないと分からないということで撤退の要請が出る。
キーラの部屋には古代遺物を複製した偽物を忍ばせ、レイヴンは転移陣で帰れるからと影達を帰らせて残ることにした。
「えー、寂しいなぁ」
指輪から聞こえるケイルの声は相変わらずでレイヴンは無視をする。
「じゃあ、そのお嬢様がなんで精霊に興味あるのか探ってきてねー」
めんどくさい任務は貰ったが、ユフィとの時間が作れるのは嬉しかった。
シュエットの影が帰り、代わりにコンドラーのメイドがやってくる。相変わらず無表情で気味が悪いが関心を示してこない分、動きやすかった。
それからは毎日ユフィに会いに行った。
面倒くさそうな顔をしながら頬を染めて、繋いだ手が離れると名残惜しそうにするユフィが可愛くて仕方なかった。
合間にキーラへの聞き込みをするが、夢見る少女のようでしかなかった。
「精霊に会ってみたいんです」
「きっと悪いようにはならないと思うのです」
最終的に精霊の森に案内してくれ、と言い出す始末で限界が来ていた。
そろそろ帰ろうかな、と思う時にユフィが光魔法持ちだということを知った。ユフィと出会って魔力の増加に違和感があったから、驚きはしなかった。
だけどあのパーティの時、確かに2人に認識阻害の隠蔽魔法をかけたはずなのにぶつかったヘリオスは、その魔法を無効化してユフィに気付いたらしい。
ヘリオスは騎士団を動かし、キーラもユフィを探すのに躍起になっている。
ユフィにいつ言おうか迷っている間に、市場の人達にも知れ渡っていた。いよいよ時間の問題だと思ったけど、ユフィは一緒に帝国に来てくれると言ってくれた。
条件は厳しかったけど、きっとユフィなら受け止めてくれる…
だけど、神様はいつだって僕に意地悪だ
「レイラ様!「聖女」様が見つかったらしいの!!」
僕は興奮するキーラの言葉に笑うことすら出来なかった
***********
レイヴンターンを分けようかと悩みました。でも分けると長くなっちゃうので省略して一緒にしてみました!!!
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いつもお時間頂きありがとうございますm(_ _)m
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