ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

文字の大きさ
27 / 129

第27話 ノミダニ駆除

しおりを挟む
 キジブチの話がひと区切くぎりついたところで、いつもの質問をしてみる。

「ここに、お医者さんはいますミャ?」
仔猫こねこちゃんは、ケガをしているニャゴ? でも残念ながら、ここにはお医者さんはいないニャゴ」
「ぼくが、お医者さんですミャ。もしケガや病気で苦しんでいる猫がいるなら、ぼくが助けますミャ」
「あらあらまぁまぁ、仔猫ちゃんがお医者さんニャゴ? 可愛いお医者さんニャゴ。分かったニャゴ、ついて来てニャゴ」

 子供のおままごとに付き合う大人みたいな半笑はんわらいで、キジブチは手招きしながら歩き始めた。
 仔猫あつかいされても、お医者さんだと信じてもらえなくても良い。
 バカにされても、ぼくは苦しんでいる猫をすくうだけだ。

 キジブチについて行くと、クロトラネコを紹介された。

「クロトラさ~ん、仔猫のお医者さんを連れてきたニャゴ~」
「仔猫のお医者さんニャゥ? お医者さんだったら、助けて欲しいニャゥ。体がかゆくてかゆくて、仕方がないニャゥ」

 クロトラネコはかゆそうに体をいたり、激しく頭を振り回したりしている。
 良く見れば、小さな虫がピョンピョンねている。 
 この猫、ノミかダニがいるな。

 でも、処置しょちが分からないから『走査そうさ

『病名:ノミ皮膚炎ひふえん疥癬かいせん(ダニによる皮膚炎ひふえん)、細菌感染症さいきんかんせんしょう
処置しょち:ノミ駆除薬くじょやく、ダニ駆除薬くじょやく抗炎症薬こうえんしょうやく抗菌薬こうきんやく投与とうよ

 ダニやノミは、1匹見つけたら100匹いると考えて良い。
 この感じだとクロトラだけじゃなく、縄張なわばりの猫たちにもいそうだな。
 あとで、全員集めて処置しょちしよう。

 抗菌薬こうきんやくは、ヨモギがあるし。
 抗炎症薬こうえんしょうやくは、アロエがあるから良いとして。
 問題は、ノミとダニの駆除薬くじょやくか。

 この辺りに、ノミとダニの駆除くじょく薬草はあるかな?
 そもそも、そんな薬草があるのかな?
 とりあえず、草がいっぱい生えている場所に向かって『走査そうさ

対象たいしょう白花虫除菊しろばなむしよけぎく
薬効やっこう殺虫成分さっちゅうせいぶんPyrethrinピレトリンを含む。乾燥かんそうさせて、粉末ふんまつにして利用する。ノミ・ダニ・ハエ・などに、殺虫効果がある』

 これだーっ!

 足元にえていた白花虫除菊しろばなむしよけぎくは、花の時季じきえてれていた。
 粉末にするから、枯れていてもいいや。
 抗菌薬こうきんやくのヨモギと抗炎症薬こうえんしょうやくのアロエも、忘れずにっておく。

 ひと通り集めたところで、近くの岩壁いわかべに寄りかかってひと休み。
 何気なにげなく岩壁いわかべに手をいた時に、『走査そうさ』が発動はつどうした。

対象たいしょう珪藻土けいそうど
用途ようと(使い道):陶器とうき建材けんざいの原料、絶縁体ぜつえんたい(電気を通さない)、研磨剤けんまざい(刃物をぐ)、乾燥剤かんそうざい、ノミやダニの駆除くじょ虫下むしくだし(寄生虫きせいちゅうを出す)、食用可しょくようか

 え? 草じゃなくて、食べられる土?
 ためしに、珪藻土を軽くつめけずって口に入れてみた。
 当たり前だけど、ただの土だ。  
 
 ところが、口に入れてまもなく、口の中の水分を全部吸われた感覚がした。
 あわてて川まで走って、水をガブガブ飲んだ。
 これは、そのまま食べるもんじゃないな。
 でも、良いものを見つけたぞ。

 白花虫除菊と珪藻土を混ぜれば、きっと最強のダニノミ駆除薬くじょやくが出来るに違いない。
 さっそく、白花虫除菊と珪藻土をすりつぶして混ぜる。
 珪藻土が、白花虫除菊に残っていた水分を吸ってくれたおかげで、細かい粉になった。
 これで、ダニノミ駆除薬の完成だ。

 出来れば、ノミ取りくしも欲しいところだけど。
 櫛の代わりになる物はないかと、辺りを見回す。
 ふと、松の木が目に入った。
 細い松の葉をたばねれば、ブラシが出来そうな気がする。 

 思い立ったら、なんでもやってみよう。
 松の木によじ登り、緑色の松葉まつばる。
 数十本の松葉をそろえてたばね、つる科の植物でグルグルときつく巻いてみた。

 試しに作ったばかりのブラシで、自分の毛をブラッシングしてみる。
 う~ん……、とがった葉先はさきがチクチクして痛いな。
 尖った葉先を石にこすりつけて、先をけずってみたらいい感じになった。 

 ブラシにを付けたら、さらに使いやすいかも。
 あれこれ試して改良かいりょうを重ね、松葉のブラシが完成した。
 色々試して考えながら作るものづくりって、楽しいよね。

 いよいよ、実際に使ってみよう。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

 薬とブラシを持って、ダニとノミで苦しんでいるクロトラの元へ戻ってきた。

「お待たせしましたミャ。お待たせしましたお薬を作ってきたので、治療ちりょうさせてもらってよろしいですミャ?」
かゆいニャゥ~……。なんでも良いから、早くなんとかしてニャゥ……」

 クロトラはかゆみにえきれず、あちこちきむしっている。
 きすぎてあちこち毛が抜けて、き傷もたくさん出来ていた。
 可哀想かわいそうに……、かゆいのはつらいよね。

 まずは、抗炎症薬こうえんしょうやくのアロエを傷にる。
 炎症えんしょうおさえれば、かゆみもおさまるはずだ。
 続いて、抗菌薬こうきんやくのヨモギをひとくち飲ませる。
 とどめに、ダニノミ駆除薬くじょやくをクロトラの全身に振りかけた。

 粉まみれになったクロトラは、めちゃくちゃ驚いている。

「何するニャゥ~ッ?」
「クロトラさんのかゆみの原因は、ダニとノミですミャ。これは、ダニとノミを駆除くじょするお薬ですミャ。もう少しすれば、かゆみはおさまるはずですミャ」
「そ、そうニャゥ? ん? あ、本当ニャゥ。かゆくなくなってきたニャゥ」

 仕上げに、クロトラの体を丁寧ていねいにブラッシングする。
 クロトラは、ブラッシングが気持ち良いのかうっとりしている。
 ブラッシングすると、抜け毛と一緒にダニとノミがたくさん出てきた。

 ダニとノミを駆除くじょし終わったクロトラは、大喜びでぼくに感謝する。

「仔猫のお医者さん、ありがとニャゥ! かゆくなくなったニャゥッ!」
「痒みがなくなって、良かったですミャ。同じように、痒みで苦しんでいる猫たちがいたら、連れてきて下さいミャ。お薬とブラシの作り方も教えますので、お手伝いしてくれそうな猫がいたら呼んで下さいミャ」
「分かったニャゥ! みんなを呼んで来るニャゥッ!」

 クロトラはり切って、猫たちに声を掛けに行ってくれた。
 クロトラが声を掛けに行っている間に、珪藻土《けいそうど》をり出すことにした。

「仔猫のお医者さん! みんなを連れて来たニャゥッ!」

 しばらくすると、クロトラがお手伝いの猫たちと患者さんたちを連れて戻ってきた。
 お手伝いの猫たちに、ダニノミ駆除薬と松葉ブラシの作り方を教えた。

 ダニノミ駆除薬は、珪藻土と白花虫除菊を混ぜて叩いて粉にするだけ。
 ブラシは作るのが難しいので、手先てさき器用きような猫たちに教えた。
 力や体力がある猫たちは、薬作り。
 手先が器用な猫たちは、ブラシ作り。

 薬とブラシが出来たら、使い方を教えた。
 みんなで手分けして、ダニとノミで苦しむ猫たちに薬をふりかけて、ブラッシングしていく。

 ダニとノミを駆除し終えた猫たちに、今度はヨモギの見分みわけ方と薬の作り方を教えた。
 ヨモギは飲んでもっても使える、とっても優秀ゆうしゅう万能薬ばんのうやく

 アロエは葉っぱを折るだけだから、簡単かんたん便利べんりだけど。
 猫がアロエを食べるとポンポンペインペインおなかいたいいたいになるので、毛づくろいの時にめないように注意。

 白花虫除菊は、虫にしかかない毒だから猫がめても大丈夫。
 ちなみに、ブラシに使った松葉にも毒はない。
 松の葉には油がふくまれているので、ブラッシングすると毛がなめらかになる。

 松の葉も、薬草として優秀で、抗酸化こうさんか作用、高血圧、動脈硬化どうみゃくこうか脳卒中のうそっちゅう認知症にんちしょう不眠ふみん抜毛だつもう育毛いくもう、禁煙などに効果がある。
 松の樹にふくまれる松脂まつやには、止血しけつ保湿ほしつ、燃料、すべり止めとして使える。
 ――と、『走査そうさ』が教えてくれた。

 薬草は用法ようほう用量ようりょうを正しく守れば、どれも素晴らしい薬になる。
 薬も使い方を間違まちがえてしまうと、毒になってしまうから要注意ようちゅうい

 みんなで手分けして作業すれば、それほど時間をかけずに全員の処置が終わった。
 これでぼくがいなくなっても、病気やケガの処置が出来るようになったはずだ。
 これからは行く先々さきざきでも、猫の手も借りることにしよう。

 あとは、お医者さんになってくれる猫がいれば良いんだけど。
 無理強むりじいはしたくないから、なりたい猫がなってくれれば良い。
 みんなが処置出来るなら、お医者さんにこだわる必要はない。

 苦しんでいる猫が1匹でもいなくなって、幸せになってくれることだけがぼくの望みだから。
 猫が幸せなら、ぼくも幸せ。
 やるべきことはやったし、ゆっくり休んで疲れがえたら旅へ出よう。

 ―――――――――――――――――――――
白花虫除菊しろばなむしよけぎくとは?】
 5月下旬~6月上旬に、花を咲かせる白いきく
 ピレトリンは、虫にしか効かない神経毒しんけいどく(体が動かなくなる毒)。
 哺乳類ほにゅうるい鳥類ちょうるいには、ほとんど効かない。
 かつては、蚊取かとり線香せんこう、ノミダニ取り粉、農業用殺虫剤などの材料として利用されていた。
 現在は化学薬品があるので、観賞植物として育てられることが多い。


珪藻土けいそうどとは?】
 珪藻けいそうというが、化石かせきになったもの。
 たくさん水を吸うので、乾燥剤かんそうざいとして利用される。
 粉末ふんまつにして振りかけると、ノミやダニは脱水症状だっすいしょうじょうを起こして死ぬ。
 食べられるけど、たくさん食べるとおなかの中の水分を吸われてしまうので、便秘べんぴになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

スケルトンなボクは君にテイムされたい!

うなぎ358
ファンタジー
~もふもふじゃなくても可愛いと言ってくれた君をボクは守ると決めた~ 七十七階層あるダンジョンの最下層。ここには猫スケルトンのニャーと、ドラゴンスケルトンの爺ちゃんが二人だけで住んでいる。 ニャーは人間と地上に興味深々で、いつも爺ちゃんに外の世界の話をせがんだ。 そんなある日、いつかダンジョンの外に行ってみたいと言っていたニャーの願いを、爺ちゃんは叶えることにした。 ついに外の世界へ飛び出したニャーは盲目の少女サアヤと出会う。 毎週金曜日お昼ごろ更新。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

処理中です...